これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
日本語の文字表記には、〝ひらがな〟と〝カタカナ〟と〝漢字〟の3種類があります。一方、多くの国で使われているアルファベットにも、〝大文字〟と〝小文字〟があります。Why?


答え:紙を節約するため

詳しく教えてくれたのは、慶應義塾大学の堀田隆一教授。
アルファベットは、もともと〝大文字〟の形で成立。のちに、元の大文字を崩して小型化されたものが〝小文字〟です。
そして、 小文字誕生の背景にあるのが、8世紀にフランク王国で起こった出版ブームだといいます。

文字を“紙に書く”時代になると、なにも直線である必要はない。そこで、各アルファベットは、今度は徐々に丸みを帯び、画数が少ない形へと変化。現在の小文字が生まれた。

フランク王国とは、現在のフランスやドイツのあるあたりにあった王国。
その君主で、西ヨーロッパの大部分を支配したカール大帝は、「これからの時代は学問が大事だ!」と宣言します。
これに応じるべく、人々が 教養を身につけたり、学問を深めたりするための〝書物〟が多 く作られることに。

ところが、そこには大きな壁が......。
当時、書物に使う紙といえば、動物の皮から作る「羊皮紙」しかありませんでした。しかし、羊皮紙は大変に貴重なものだったため、書物を量産することは、大変な難題だったのです。

印刷技術がない8世紀のヨーロッパでは、書物とは、紙(羊皮紙)に手書きで書き写すもの。しかし、羊皮紙は超高級品! そんな中での小文字の導入は、フランク王国の学問振興を進めるにあたって非常に画期的なアイデアだった。ちなみに、これを提案したのは、イギリスが生んだ天才神学者アルクインだったという。

そこで発案されたのが、文字を崩して小型化することによって、限られたスペースにたくさんの文字を詰め込むという工夫。そう、小文字の誕生です。しかも、小文字は大文字に比べて曲線が多く、画数も少なくて書きやすいため、効率がよいという利点も。こうして小文字は、出版ブームの中で重宝され、元の大文字と並んで使われるようになっていったというわけです。

(NHKウイークリーステラ 2021年7月30日号より)