土曜ドラマ「17才の帝国」
毎週土曜 総合 午後10:00ほか
5/7放送の第1回は、「NHKプラス」で1週間見逃し配信中!
(あらすじ)
舞台は202X年。日本は深い閉塞へいそく感に包まれ、世界からは斜陽国のらく印を押されている。出口のない状況を打破するため、総理・鷲田(柄本明)はあるプロジェクトを立ち上げた。「Utopi-AI」、通称UA(ウーア)構想。全国からリーダーをAIで選抜し、退廃した都市の統治を担わせる実験プロジェクトである。AIが首相に選んだのは、若く未熟ながらも理想の社会を求める、17才の少年・らん(神尾楓珠ふうじゅ)。他のメンバーも全員20才前後の若者だった。真木は、仲間とともにAIを駆使し改革を進め、衰退しかけていた地方都市を、実験都市ウーアとして生まれ変わらせていく――。

いよいよ始まった。
何がって、土曜ドラマ「17才の帝国」である。
私が期待していたのには訳がある。

スタッフがすごい!
制作統括・訓覇くるべ圭、演出の西村武五郎と桑野智宏は、連続テレビ小説「あまちゃん」や大河ドラマ「いだてん~東京オリムピックばなし」など、NHKの名作ドラマを数々作ってきた名うてのクリエーターたち。

プロデューサーの佐野亜裕美は、「カルテット」(TBS系)や「大豆田とわ子と三人の元夫」(フジテレビ系)などを手がけたヒットメーカー。

そして、作(オリジナル脚本)は「ガールズ&パンツァー」「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」「平家物語」などで知られる、アニメ界の至宝! 吉田玲子!
まさに、NHKと民放、そしてアニメ界の名シェフたちが一堂に会して土曜のばんさんを用意したというのだ。
不味まずいはずがないではないか!

予想どおり、放送前からSNSでも、

「吉田玲子× 訓覇圭× 佐野亜裕美、ドラマファンなら必見」
「ワクワクが止まらない!」
「これは見なくては! 生で見るけど録画予約済み」

などなど、思いがあふれ出すようなコメントが並んでいた。

もちろんキャストも、
目力に定評のある注目イケメン俳優・神尾楓珠が主演を務めるほか、
山田杏奈、星野源、河合優実、望月歩、染谷将太、松本まりか、杉本哲太、西田尚美、岩松了、田中泯、柄本明など、若手から個性派、ベテラン名優までそうそうたる顔ぶれが集結。

とにもかくにも見るしかない。と視聴して想像以上の面白さに驚いたのだが、そこは是非ご自分の目で確かめてほしい。
放送後1週間は、NHKプラスで見逃し配信しているのが、NHKの頼もしいところだ。

海に面した実験都市ウーアの首相に選ばれた高校生(17才)の真木と若き閣僚たちが最初の閣議で打ち出したのが、市議会の廃止だった。
その代わり、閣議の模様は生配信され、ウーアをつかさどるAIソロンが全市民の意見を吸い上げ、数値化することで政策が即断即決で実行されていく。全市民が“議員”となる、いわゆる直接民主制都市の実現だ。

しがらみだらけの大人の政治体制をバッタバッタと切り捨てる様はある意味カタルシスだが、それを「若造たちに何ができる!」と冷たく見ているのが、日本の首相・鷲田本人をはじめ、岩松了と田中泯演じる市議会議員たち。癖の強い大人たちがこのままで引き下がるわけがない。

またプロジェクトマネージャーとして若き閣僚たちのアドバイザーも務める、
内閣官房副長官・平(星野源)も、次期総理を狙っているだけに腹に一物ありそう。
一方、真木自身も単なるピュアな理想主義者ではなさそうで……。

第1回の終わりごろ、真木が海上に巨大な立体映像として現れ(シン・ウルトラマンかよ!)、市民に向けて首相就任演説をするシーンがあった。
彼は言う。

「間違っていることを間違っていると言わない大人にはなりたくない。
 欲望にまみれた大人になりたくない。
 自分と自分の周りしか守らない大人にはなりたくない……。
 ここで生きたいと思える社会を創りたい。
 僕とソロンが目指すのは、癒着やしがらみを排した透明な政治。
 人々の声を聞き、受け止める謙虚な政治。
 助けを求める人々に手を差し伸べ、救う政治。以上です」

近未来版ピーターパンっぽくも映るけれど、
彼の言葉がなぜか心に刺さるのは、現在の日本の政治・社会の深い閉塞感ゆえなんだろうなあ。
これから物語では、政治の理想論と現実論がぶつかり合っていくだろうけど、そこは是非、登場人物たちのリアリティーのあるセリフや行動を期待したい。
まあ、名シェフたちのことだから心配はないと思うが。

第2回は、5/14(土)総合 午後10:00から!
続報を待て!

(蛇足)
AIソロンの3つの巨大な柱(アンテナ?)は、あまりに非現実的な風景だったので3DCGだとばかり思っていたが、実際に存在するものだとわかって驚がく!
長崎県佐世保市の針尾送信所という、大正11年に旧日本海軍によって建設された送信所施設で、国の重要文化財なのだとか。
ここは、ファンの聖地巡礼地になるかも。ちょっと行ってみたい。