え? のぶ(今田美桜)はこの人と結婚しちゃう! 嵩(北村匠海)は大丈夫なの? という場面で金曜日が終わりました。
しかし何と言っても今週は、豪(細田佳央太)の戦死がつらすぎました。蘭子(河合優実)の慟哭どうこく、釜次(吉田鋼太郎)の咆哮ほうこう……涙が止まりませんでした。一方で、のぶの“愛国のかがみ”にも少しずつ変化が……?
今週の「出会い」と「別れ」、セリフとともに振り返っていきましょう。

もちろんネタバレですので、ご承知おきください。


「あと、279日」

御免与尋常小学校の教師となって1年半がった。
つづり方の時間、作文を子どもたちが読み上げる。
その内容は“兵隊さんに感謝し、自分も早くお国のためにご奉公したい”。
「立派な心掛けです」と褒めるのぶ。
「愛国の鑑」という評価はますます上がっているようだ。

戦争はいよいよ生活に及んできていた。
嵩と健太郎(高橋文哉)は銀座を歩いても以前のように楽しくない様子。
卒業制作に取り組む嵩だが、座間先生(山寺宏一)からは「おまえ、タッチ変えたのか? お前の良さが全部消えてる」と言われる。
「あんなにわかりやすくて楽しい絵を描いてた柳井が、どうしたんだ?……どうした? 人生がスランプなのか?」
部屋でもため息の嵩。まだ、のぶに手紙も書けていないらしい。

学校から帰ってきたのぶを迎えたのは国防婦人会の女性たち。のぶに縁談を持ってきたのだった。
婦人たちは「結婚十訓」を説き「産めよ、育てよ、国のため!」と言う。

釜次とくら(浅田美代子)、メイコ(原菜乃華)は見合い写真を見ながら大品評会!
まだ結婚は考えられない、と言うのぶ。
夜、姉妹の寝室で、メイコは
「うち、てっきり、お姉ちゃんには心に決めた人がおると思うちょった」
まさか、というのぶ。
一方蘭子は豪が兵役を明けて戻ってくる日を指折り数えて待っていた。
蘭子「あと、279日」
豪の半纏はんてんを触りながら……半纏の陰には除隊までの日数を数えるカレンダーがある。
そして釜次(吉田鋼太郎)も、豪の帰りを待っているのだった。

そんなある日、ひとりの女性が朝田家にやってきて、のぶは、どこかに嫁いだか?と聞く。


「離れてみてやっとわかったんだ。失いそうになってやっとその大切さに気付くことってあるんだな」

女性の名は若松節子(神野三鈴)。船の機関長をしていた夫が、のぶの父、結太郎(加瀬亮)と親交があった。
出張で乗った船の上で、結太郎は娘たちのこと、長女が「ハチキンおのぶ」という面白い子だ、と話していたという。夫は生前の結太郎に「是非、娘さんの一人を嫁に」と言っていた、というのである。
のぶが帰ってくると、釜次、くら、羽多子が待っていた。
またお見合いだ、と腰が引けるのぶに顛末てんまつを話して聞かせ、写真を見せる。
父の話が聞けるかも、と言われてちょっと乗り気になったのぶ。

初めてのお見合いの衣装は、オレンジの鮮やかな振袖だ。
付き添う羽多子(江口のりこ)に、屋村草吉(阿部サダヲ)が
「馬子にも衣装ですね」といつものヤムさん節。
通りかかった千尋(中沢元紀)は、それを知って動揺する。
※中沢元紀 振り返りインタビュー

見合いの席はそれぞれの母親が同席して4人で。
船の機関士をしている若松次郎(中島歩)はピシッと船員の制服を決めたナイスガイ。
結太郎にも船で会ったことがあると言い、
「おしゃれな紳士で、ソフト帽がお似合いだったのを良く覚えています」
「あの帽子や!」と声をそろえるのぶと羽多子。
「父のその帽子、今もうちにあるがです。私と妹らは父やと思うて、いつも帽子に話しかけよります」

二人で庭を歩くのぶと次郎。
「ごめんなさい。私は結婚する気がまだないがです。それやのに、父の話を聞きとうて、のこのこ来てしまいました」
次郎も、30になるが船の上にいることが多く、結婚の必要性を感じていないが、母親が見合いだけでもしろというので来た、という。
「でも、あの朝田結太郎さんの娘さんには会ってみたいと思いました」
父の話を聞かせて欲しい、というのぶに、次郎は静かに船の上での話をするのだった。

次郎は大きな船の機関士をしていて、神戸から大陸に物資を輸送している、食糧や、武器弾薬、時には戦地の負傷兵や戦死者の遺骨も運ぶ、という。
次郎「負傷者の中には慰問袋を大事そうに抱えている人もいます」
のぶ「学校で子どもらぁと作りゆう慰問袋、役に立っちゅうがですね?」
「もちろんです」という返事に喜ぶのぶ。

次郎の趣味は写真で、船の仕事の傍ら打ち込んでいることがあるという。
次郎は「終わらない戦争はありません。のぶさんは、この戦争が終わったら何をしたいですか?」と問う。
考えたこともない、と答えるのぶ。

帰りの電車で「いいお見合いの経験やったわ」というのぶに、羽多子は嵩とのことを尋ねるが……
「あれから音沙汰ない」

嵩はのぶに手紙を書こうとして書けない、という状態が続いていた。
「離れてみてやっとわかったんだ。失いそうになってやっとその大切さに気付くことってあるんだな」


「みんな、みんな噓っぱちや。うちは、けして立派らぁて思わんき」

ある日。
朝田家に、肩からかばんをかけた男が入ってくる。
「原豪さんの留守宅はこちらですね」
それは豪の戦死のしらせだった。
小さく「ご苦労さんでございました」という釜次。
言葉なく遠くからその様子を見守る羽多子、くら、メイコ。
男が去ると、釜次は、
「豪よー!」えるように号泣してうずくまる。
その大声に出てきた蘭子は、うずくまる釜次の肩越しに手に持った紙を見て……。

帰ってきたのぶは全員がうなだれる朝田家を不審げに見回す。
羽多子「豪ちゃんが戦死したがよ」
蘭子は石屋の仕事場で呆然ぼうぜんとしている。
だん屋と和尚は口々に「立派に戦死したがや」という。
「のぶちゃんは愛国の鑑じゃきの」と促され、のぶは、
「豪ちゃんは……お国のために……立派にご奉公したがです」と涙で言う。
※河合優実・今田美桜・原菜乃華・浅田美代子 振り返りインタビュー

その夜、姉妹の寝室では寝付けないのぶとメイコ。蘭子はいない。
豪の半纏の前には、茶碗に盛られたごはんと線香が供えられていた。それに語り掛ける蘭子。
遠くからそれを見るのぶに屋村が、
「あいつは、お国のために死ねてほんとに喜んでんのかね。立派だった、と言ってやらないといけないのかね、愛国の先生」と言って去る。

場面は豪の葬式。
国防婦人会の女性たちが口々にたたえる。
「本望を遂げられた」「ご立派でございます」

のぶが担任する子どもたちが弔問に訪れた。
戦死した兵隊さんに手を合わせたくて来た、という。
焼香のあとで
「先生、わしらぁもいつか兵隊さんになって、お国のために立派にご奉公したいがです」
ついてきた、年端もゆかぬ弟までが
「わしも立派にご奉公したいき」
それを聞いて、たまらず立ち上がる蘭子。
思い出していたのは、豪に鼻緒をげ替えてもらった日のことだった。せみしぐれが降っていた……。

必死で感情を抑えるかのように指をんでいた蘭子。のぶに言う。
蘭子「どこが? 立派ながで。みんなが立派だというたびに、何べんも何べんも聞くたびに、うちは悔しゅうてたまらん」
のぶ「豪ちゃんは、蘭子やうちの家族や、この国の人らのために、命を懸けて戦こうたがや。じゃき、立派やと、ゆうちゃりなさい」
蘭子「どういて?……豪ちゃんんて来んのに?」
のぶ「豪ちゃんの戦死を誰よりも蘭子が誇りに思うちゃらんと」

憎しみとあきれを込めた目でのぶを見つめる蘭子。
「お姉ちゃん本気でそう思うちゅうがかえ? 男の子は兵隊になって戦争に行きなさい、命を惜しまず戦いなさい、豪ちゃんみたいに名誉の戦死をしなさい。戦死したらみんなで立派やと言いましょうって?」
のぶ「そうながよ」
叫ぶ蘭子「そんなのうそっぱちや! みんな嘘っぱちや!」
泣き叫ぶ。「うちは、うちは豪ちゃんのお嫁さんになるがやき、絶対に戻んてきてよってゆうたがよ。豪ちゃんも戻んてきますってゆうたがやき。絶対に戻んてきますって。戻んてこん、戻んてこん。どこが立派だがで? みんな、みんな噓っぱちや。うちは立派らぁて、けして立派らぁて思わんき」
あとを追ってきた羽多子と目が合う。抱きしめる羽多子。
「泣きなさい。思いっきり泣いたらえい」
「あいた~い、豪ちゃんにあいたい」

朝から泣いた……。豪が出征して行った2週間前から、このシーンが来る予感はしていたが……河合優実の演技はやっぱり圧巻だった水曜日。


「ゆっくり考えればいいです。のぶさんは足が速いき、すぐ追いつきます」

木曜日、釜次が豪の墓石を彫ろうとするが……。
「豪、すまん、わしには彫れん……」
※吉田鋼太郎 振り返りインタビュー

のぶの教室では子どもたちが口々に立派な兵隊さんになりたい、従軍看護婦になりたい、と言い、教育勅語を暗唱する。
のぶは蘭子の言葉を思い出していた。

嵩のもとに千尋から手紙が来る。
そこには、豪の戦死の報せと、のぶのところに縁談がたくさん来ていることが書かれていた。“兄貴の気持ちを伝えるなら早い方がいい”と。

朝田家に、のぶの見合い相手、次郎がやってきた。
見合いの日、のぶを撮ったポートレートを渡して、
「今日はのぶさんに、正式に結婚を申し込みにまいりました」
あの日は結婚する気がないと言ったが……?
「私の生涯の伴侶になっていただけませんか。また航海に出るのでその気持ちだけ伝えに来ました」

のぶは放心したように視点が定まらない。
「お気持ちはありがたいがですけんど、今は、やはり決心がつきません」
「のぶさんの気持ちが変わるまで、ぼくは待ちます」と言って帰っていく次郎。
“のぶはいま、そんな気にならないだろう”と羽多子。くらは、“次郎さんは結太郎が連れてきた人だ”、とはりにかかった帽子を見上げながら静かに言う。
蘭子はこの夜も、豪の半纏を見上げていた。

翌朝、蘭子はのぶに自分に気兼ねせずに結婚すればいい、という。
「うちのせいで行き遅れたら迷惑や」と言って勤めに出て行った。蘭子なりの、のぶへの気遣いだ。

嵩の卒業制作、ポスターの下絵には、人であふれかえる銀座の街が描かれていた。大きい顔はフランケンシュタイン?
座間先生「時代に逆行しているねぇ。いいじゃない、スランプ抜けたか? これで進めてみろ」
嵩「健ちゃん、ぼくはね、決めたよ。この卒業制作を仕上げたらのぶちゃんに会いに行く。こんどこそ、ちゃんと気持ちを伝える」
だいぶ先にならないか? と聞き返す健太郎に「でも、決めたんだ」とにっこりうなずく嵩。
手遅れにならなきゃいいけど? とちょっと心配になった木曜日。

柳井家に嵩から届いた手紙には、卒業制作を最高傑作にするつもりだということ、そして製薬会社に就職が決まったことが書かれていた。

一方、のぶのもとには次郎からの手紙が届く。
暮れに高知に戻ったら会ってほしい、とあった。
夕食の時、その話題になり、釜次と羽多子からは、ちゃんと返事をするように促される。

洋食レストランでのぶと次郎は向かい合っていた。
のぶが「結婚して家庭に入ることはまだ考えれんので」というと、次郎は、教師の仕事は続けてください、という。
次郎に、正直なところが好きだと言われ、のぶは今の気持ちを話し始める。
「気が付いたら、兵隊さんになって、お国にご奉公する子どもらを育てよりました。周りからは“愛国の鑑”やと呼ばれちょります。でも、妹は、そんなの噓っぱちやと……それからは、子どもらに愛国を説くのも、本当は辛いがです。
教師としても、朝田家の長女としても宙ぶらりんで、こんな私が結婚しても、次郎さんを幸せにする自信がないがです。これが正直な気持ちです」

次郎「そんなに重い荷物をいくつも担いでいたら、船だったら沈んでしまいます。荷物を下ろす用意をしませんか。その時が来たら思いっきり走れるように。終わらん戦争はありません。その時、世の中はすっかり変わってしまうかもしれん。それを見越して、今のうちから夢を持つがです」
次郎の夢は……
「ぼくは、戦争が終わったらこのカメラで世界中の人たちを撮って周りたいと思うちょります」
のぶさんは? と問われ、まだ何も思いつかないと答えると
「ゆっくり考えればいいです。のぶさんは足が速いき、すぐ追いつきます」
父・結太郎と同じ言葉(第一週)! お父さん大好きっ子(ファザコンとも言う)ののぶにとっては完全ノックアウトの展開だ!
「そこに、少しでも僕との暮らしが入るすき間があったら、結婚してください。すき間がなかったら、そのときは諦めます」
なんと素敵すてきな人!

帰ろうと歩き始めて突然、息せき切って走って戻るのぶ。汽笛の音が聞こえる。
「次郎さん! 」
息を弾ませて「とても大事なことを言い忘れました。こんな私でよかったら、不束者ふつつかものですけんど、よろしうお願いいたします」微笑みあう二人。
おっとやっぱり! のぶは結婚を承諾!!!
断りに行ったはずなのに承諾してきたのぶに、家族は大喜び。
蘭子「行き遅れんでよかったねぇ」
パン生地をこねていた屋村は空に向かって
「あいつ死なないといいけどな、大丈夫かな」
※中島歩インタビュー
※浅田美代子インタビュー


オドロキの展開で、結婚を承諾したのぶ。まだ嵩は知りません。来週は、のぶの祝言の場面もあるようでした。
第9週は「絶望の隣は希望」。やなせたかしさんの言葉であると同時に、寛伯父さん(竹野内豊)がドラマの中で何度か口にしていましたね。私たちはどんな“絶望”を見ることになるのでしょうか。隣に希望はあるのでしょうか?
ではまた来週、ほいたらね。