ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、喜多きたがわ歌麿うたまろ役の染谷将太さん、てい役の橋本愛さんから!

関連記事:「べらぼう」第26回の振り返り! 渡辺謙「意次がひれ伏すさまを間近で見せられて、意知も思い知らされただろう」


染谷将太さんの第26回振り返り

——26回では歌麿は蔦重つたじゅう(横浜流星)に「生まれ変わるなら女がいい」と告げましたが、歌麿の蔦重への思いの変遷を、どのように捉えていますか?

蔦重への気持ちはたぶん子どものころから変わらないと思います。ただ、「一緒にいたい、一緒に何か物を作りたい」という気持ちの、“根っこの部分”が何なのかに気付いてなくて、今になって蔦重への気持ちを改めて感じ直しているのではないでしょうか。

“恋愛感情”という言葉に当てはめることができない何か、というふうに捉えて演じています。蔦重が人生のすべてになっていたところもあるので、その関係性が変わることに対してはすごく不安になるけど、自分には得られない幸せを蔦重が得られたことは喜ばしいことではある。そんな、すごく複雑な状況だと思います。

——ていの存在についてはどう思っているんでしょうか?

歌麿としては、当たり前のようにいた義兄にいさんが今までの義兄さんじゃなくなり、家族を奪われた感覚にもなっているので、ていさんのことは気にくわないです(笑)。でも、蔦重だけでなく、ていさんも、歌麿が絵師として次のステップに行くためのきっかけ、影響を与えてくれる存在だと思います。

蔦重と向き合うことは、自分と向き合うこと。改めて自分の過去とも向き合うことだと思っています。人として、絵師として、歌麿は「自分の存在意義は何なのか」ということを探しだそうとしている。今は、そんな時期なんじゃないかな、と思っています。


橋本愛さんの第26回振り返り

——今回は、歌麿が蔦重に寄せる微妙な感情も見えてきましたが、あの描かれ方についてはどんなふうに感じましたか?

ていは、歌麿さんが蔦重さんに寄せる気持ちに気づいていません。ですが、そもそも夫婦関係なしで「商いだけの関係なら」ということで婚姻を結んでいるので、他に好きな人がいてもいいという前提があります。無意識下では辛い気持ちになるかもしれませんけど、表面上は蔦重さんに恋人がいても受け入れる姿勢です。

だから、歌麿さんと蔦重さんがもし恋仲であるようなら「私のことは本当に気にしないでください」という気持ちになっていて。「ふたりがそういう関係なら、私は絶対に邪魔する気はないので、幸せになってください」という、曇りのない、純粋な気持ちでした。

——蔦重の母・つよ(高岡早紀)と、ていとの嫁しゅうとめ関係については、どのように受け止めていますか?

つよさんは蔦重さんの生い立ちのすべての起源にある人です。彼女が捨てたから蔦重さんは吉原で育ってきたわけで、彼もそこに対していろんな気持ちを抱いていただろうと思います。そんな母親に急に会いに来られてもすぐには受け入れられず、困惑してしまう気持ちは想像できるので、私自身は蔦重さんの気持ちに寄り添いたくなります。けれど、ていは初対面で、一瞬にしてお母さん側につくんですよね。

「どういうことだろう?」と考えたとき、これは私の想像で、あくまで可能性のひとつなのですが、ていは幼いころにお母さんを亡くして、ずっと父子家庭で育ってきたのかな、と。だから生きているだけでいい、どんな過去があれ、お母さんが生きているということが、ていにとっては宝物のように思えるんじゃないかな、と思いました。

蔦重さんがつよさんをどんなに受け入れ難くても、ていは不器用ながらに、どうにかふたりの仲を取り持とうとしているのかな、と想像しています。

——ていが自分の無力さを感じて身を引こうと家を出たあとに、蔦重に再度告白されるという、感動的なシーンもありました。

あのシーンも婚礼のシーンと同様、ほとんど結婚生活の撮影ができないままの撮影となってしまいました(笑)。でも、ていに思いを語る蔦重さんの目に、またしてもうそはなかった。ていは蔦重の過去を知らないけれど、宝物のような存在や人生が、これまでにあったんだなという想像が働きました。ていも、それをどうしようもなく知りたいと思ってしまった。ていのこれまでの裏切られてきた経験を超えて、この人を信じてみたい、信じられると思いました。