ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、田沼意次役の渡辺謙さんから!

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渡辺謙さんの第26回振り返り

——第26回で、意次は徳川治貞はるさだ(高橋英樹)から「足軽上がりがかような世を作り出した責めをどう負うつもりか!」と叱責されます。末席からこれを見ていた意知(宮沢氷魚)は、衝撃を受けたようでした。

それまで意知は、江戸城内での意次を見たことがなかったんですよ。過去にも、武元たけちか(石坂浩二)から責め立てられて意次がひれ伏すことはありましたが、まだ部屋住みの意知は登城したことがなかったので、そんな父の姿を目撃したことはなかった。

親の勤める会社に行って、「オヤジはこんな扱いを受けているのか……」と思い知らされたみたいな話ですね(笑)。侍同士のヒエラルキーを間近で見せられた。それはやっぱり切ないものだと思うんです。意次としてもヘコヘコするつもりはないんですよ。でも、置かれているポジションや、周囲からの視線ゆえに、言葉を返せなかったりするわけです。

変な言い方ですけど、江戸城内ってそれしかないんですよ。ヒエラルキーとか格差とか、そんなことばかりなんです。城内のシーンだけでは意次の心情はなかなか伝わらないので、田沼家での会話などを丁寧に描く必要があるんだと思います。