ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、蘭子役の河合優実さん、のぶ役の今田美桜さん、メイコ役の原菜乃華さん、くら役の浅田美代子さんから、第38回の振り返りをご紹介!
河合優実さん振り返り
──豪(細田佳央太)が戦死したことを知らされて、羽多子(江口のりこ)の胸で泣き崩れるシーンがありました。
蘭子は、常に我慢したり、耐え忍んでいたりという空気を持っている人です。そんな人が、はっきりと自分の中に現れた悲しみと怒りを、蘭子がどうやって表に出していくのか。周囲の人たちにどう感情を発露するのか。それを考えながら演じました。それと、そもそも戦争で人を亡くすということがどういうことなのか、戦場に行った人の帰りを待つということがどういうことなのか、できるだけまっすぐ向き合いました。

──戦争をここまでリアルに感じる役は初めてということでしたが……。
リアルタイムで戦争の時代を生きる役、この時代を描いた作品に参加すること自体、初めてなんです。これは経験しようのないことで、自分の想像力を信じるしかありません。例えば演じながら初めて考えたのは、この当時の高知には、どこまでの情報が届いていたんだろう?ということです。
今は世界で起きている戦争についてさまざまな情報が入ってきますが、そうやって俯瞰することはできなかったはずですし、得体の知れない戦争というものがただ日々の生活にじわじわ浸食してきたのかなと思いました。今、残念なことに戦地の映像が私たちの元に届きますが、そこに映る全ての兵士に家族がいるんだなと。そんなことも、以前より生々しく感じるようになりました。
──豪の戦死を境に、軍国教育を進めるのぶとは、戦争の受け止め方、考え方の違いが明確になってきますが、それはどう考えていますか?
のぶさんの立場からすると、蘭子が口にすることは、全く聞き捨てならないものだったと思います。本当に戦争に勝って終わらなくちゃいけないと信じさせられていた人の葛藤を表現することも、今すごく大切なことだと思います。でも、現代の私たちは絶対に戦争に反対しなくてはならないと思います。だから、蘭子を通してこのセリフを言えてよかったなと言う気持ちです。
今田美桜さん振り返り

――蘭子のような立場の人が隣にいるから、よりつらい毎日ですよね。
それこそ豪ちゃんは、小さいときからずっと一緒に育った、のぶにとっても大事な人だし、ましてや蘭子にとっては、より大切な人だったというのを思うと……。本当に苦しかったです。「(戦死した豪に)立派やと言うちゃりなさい」というシーンも、自分自身に対して「私は間違ってない」と言い聞かせている、自分を信じたいという気持ちの揺れがあったと思います。

——また、のぶは自分が「愛国の鑑」と称えられる立場になって、子どもたちにも軍国教育を行わなければならなくなっています。そのあたりを演じる難しさは?
豪ちゃんが亡くなって「『愛国の鑑』と言われることが正しいのだろうか?」と考えながらも、子どもたちには愛国精神を説かなければいけない。先生としての自分、今まで学んできた自分、家族を思う自分がせめぎ合って、ものすごく苦しくて……。「愛国の鑑」と言われるたびに、自信を持つべきなのに自信を持ちきれないという葛藤に、すごく苛まれました。
原菜乃華さん振り返り

──愛国の鑑となったのぶ、大切な人を失った蘭子。その間に立つメイコにとって、戦争とはどんなものなのでしょうか?
メイコ自身は、戦争で人が亡くなるシーンやその惨状を目の当たりにはしていません。豪ちゃんのことも、きっと帰ってくるだろうと、メイコは思っていたはずで。まさかもう会えなくなるなんて思っていなくて、信じられない。毎日普通に生活している中で、どんどん大切な人が自分の前からいなくなる、明日も続くと思っていた幸せな日常が急に途絶えてしまうという状況に愕然としているんだと思います。
浅田美代子さん振り返り
――朝田家に豪の戦死の知らせが届きました。
辛かったですね、豪ちゃんが死んだのは……。10代から丁稚奉公みたいなことで住み込んでいたし、結太郎(加瀬亮)が亡くなってからは、釜じいとくらにとっては息子みたいなものでしたから。この時代、やっぱり戦争というものがね……。釜じいがかわいそうで、背中を見ているだけで辛かったですね。

――そういう意味では、息子を2人亡くされた感じですか?
でも、同じ女性として、蘭子が豪ちゃんを失った気持ちもわかるから、自分だけで悲しめないというか……。蘭子のことも考えちゃうんですよね。辛いだろうな、って。そのあたりの微妙な感情も伝わったらいいなと思っています。