ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、田沼意次役の渡辺謙さん、鶴屋喜右衛門役の風間俊介さんから!
渡辺謙さんの第19回振り返り
——第19回では、意次と10代将軍・家治(眞島秀和)が交わす言葉が印象的でした。
「10代家治は凡庸なる将軍であった。しかし一つだけ素晴らしいことをした。それは田沼主殿頭を守ったことだ。田沼がおらねば今日の繁栄はなかったのだから」と、かなり熱い言葉をかけてくれました。
田沼意次という人間を信頼して、その背中を押しているんだということを、長いセリフで切々と訴えてくれた。眞島くんの人柄もあって、単なる凡庸な将軍ではないということが視聴者の皆さんにも伝わったと思います。

もちろん将軍は自在に操れるものではないし、自分のやりたい政策を自由に実行させてくれるわけでもない。でも、頂点にある人からここまで信頼されれば胸を打たれますよね。台本には「泣く」とは書かれていなかったのですが、演出家と相談して感涙にむせぶ演技にしました。
この回以降、江戸城内では、それぞれの立場、それぞれの考え方、あるいは怨恨といったものが、より色濃く反映されていくので、ご注目ください。

風間俊介さんの第19回振り返り
——鶴屋と恋川春町(岡山天音)は、互いにやりにくさを感じていたように見えましたが、どんな気持ちで演じていましたか?
春町は、喜三二(尾美としのり)と一緒にいるときは生き生きとしているけど、基本的にはすごく人見知りでバリアを張っている人、というような演じ方を天音くんがしていらっしゃって、それがすごく印象的でした。
質は違いますが、鶴屋もある種のバリア——踏み入れさせない“圧”みたいなものがある人なので、このふたりが揃ったときに吹く絶妙な隙間風を、演じながら「面白いなぁ」と感じてゾクゾクしました。
春町が勇気を出して訴えたことも、鶴屋はフワッといなしていましたよね。でも、春町が鱗形屋(片岡愛之助)に聞いても、表現は違えども鶴屋が語ったことと同じ意見が返ってきて、「やっぱり鶴屋が正しいんだ」と思ってしまうところも、“妙”になっていると思います。
——「先生の作風は古い」と言われて、春町もショックだったようですが……。
鶴屋もズバッと切り込みますよね……(笑)。彼の横で楽しそうにしている人をあまり見たことがありませんが、現代でも鶴屋のような人はきっといると思います。でも、同時に鶴屋は出版の才覚のある優れた人間としても描かれているので、その「食えない」感じが面白いです。
