髪の毛を吹き飛ばすギャグでおなじみの「海原うなばらはるか・かなた」(ともに77歳)。愚直に磨き続けたしゃべくり漫才で、名実ともに関西の笑いをけん引してきたベテランコンビです。大阪を拠点に舞台に立ち続けて今年で55年。関西の現役漫才コンビとしては最年長のお二人が、これまでの漫才人生について語ります。

聞き手 小野塚康之この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2025年6月号(5/16発売)より抜粋して紹介しています。


漫才ブームには乗れなかったけれど

──デビューしてしばらくすると、横山やすし・西川きよし、ツービートなど、東西の芸人が活躍した漫才ブームが到来します。

かなた 我々はまるで注目されていなくて、漫才コンクールやコンテストに落選しまくっていました。焦りよりも、いつか見返してやろうという思いのほうが強かったです。

はるか 先輩や後輩がテレビに出ると悔しかったけど、今やめたら悔しさだけで終わってしまう、なんとか頑張ろうと思いました。

──流れが変わったのは、はるかさんの髪の毛をかなたさんが一息で吹き飛ばすギャグ。この芸はどのように生まれたのでしょう。

かなた それまでは競馬のネタを得意としていたのですが、笑いは取れるものの、いまひとつ注目されませんでした。マネージャーに「君ら、そつのない漫才をしてんねんけど、何かが足らんねん」と言われていて。何かってなんやねんと、日々模索していましたね。

はるか そのころ、すでに髪の毛が抜け始めていたので、恥ずかしくて楽屋のお風呂場に鍵をかけてセットしていたんです。ある日、何組かのコンビと同じ楽屋になったときに、僕らにトークの順番が回ってきて。何かみんなにウケるようなことを言わなあかんとなって、思い切って隠していた髪の毛をオールバックにしたんです。それを見て相方が「戦国時代の落ち武者やな」と言ったら楽屋のみんなが大爆笑しましてね。

かなた そのあと、舞台で夫婦げんかのネタを披露したんです。壊れたドライヤーを巡る夫婦げんかの顚末てんまつを話すネタなのですが、ふと楽屋でのやり取りを思い出して。「あのな、ドライヤーで何すんの」「何すんのって、ドライヤーいうたら髪の毛乾かすんやないかい」「そんなんいるか?」言うて、アドリブで相方の髪の毛をふっと吹いたんです。

その瞬間に客席はドッカンと大爆笑! それを見て私も爆笑しました。たっぷり30秒以上は間があったと思います。それでも間延びしなかったのは、それだけ大きな笑いやったんでしょうね。全くのアドリブだったんで、当のはるか君はキョトンとしてましたけど。

※この記事は2025年2月8日放送「目指せ! しゃべくり漫才で生涯現役」を再構成したものです。


役者志望だったお2人が漫才師へ進んだきっかけ、漫才師を夢見る若者へのメッセージや今後についてなど、海原はるか・かなたさんのお話の続きは月刊誌『ラジオ深夜便』6月号をご覧ください。

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