やったー! 今週は、とうとう嵩(北村匠海)が美術の学校に合格しました。
一方、女子師範学校に進学したのぶ(今田美桜)は、「日本婦人」を説く教師や変わっていく親友に違和感を感じている様子……。パン食い競争の日に立っていた“フラグ”——岩男(濱尾ノリタカ)と蘭子(河合優実)のその後——も描かれました。
そして、いつものことですが、寛伯父さん(竹野内豊)の言葉が深い! こんな人が身近にいたら幸せだろうなと今週も何度も思わせてくれました。

ステラnet編集部員が、ちらっと感想も交えつつ書いています。
もちろんネタバレですので、ご承知おきください。


「絵を描いて生きていきたい!」

のぶは女子師範学校の寮に入ることになり、意気揚々と家を出ていく。陰からそっと見送る嵩は浪人生だ。
嵩「さよなら、がんばって」
屋村草吉(阿部サダヲ)「お前もな! 二度と線路で寝るなよ」

担任は黒井雪子(瀧内公美)。国語と体操が担当だ。
「みなさんには、日本婦人のかがみたるべき女性教師になっていただきます」
「御国のために」尽くす覚悟がないものは去れ、という。さすが戦前の教育。怖すぎ(笑)
瀧内公美の腹から出る、張りのある声が効果的。(※瀧内公美インタビュー

寮生活も前途多難そう。4人部屋で1年生はのぶと幼なじみの小川うさ子(志田彩良)、そして先輩が二人。
6時起床から9時半の就寝まで、生活時間も厳しく決められているのだが、なにより怖いのは先輩後輩の格差。挨拶はもちろん、夜中に先輩がトイレに起きると、一緒に起きて手洗い用の水が入った洗面器を持って外の廊下で待つ……プチ軍隊チックな規律の数々。(……遠い目)昭和50年代、中学の部活動をちょっと思い出した。さすがに“手洗いの水”はなかったけど。

嵩は、まだ迷っていた。
マンガを描いているところに、弟の千尋(中沢元紀)が入ってくる。
当時新聞をにぎわせていた共亜事件(「虎に翼」にも登場していた“帝人事件”がモデルとされている事件ですね。新聞をよく見ると、あの人たちの名前も⁈)の話をしながら、自分は正しいことが正しいと認められる世の中にするために法の道に進みたいと決意を話す。
そして嵩に問う「(兄貴は)違う何かを探しゆうがよ?」

嵩が叫ぶ「こんな自分が嫌になるんだよ。なんで生きてるのかわからないんだよ、俺は」
千尋「いいぞ、兄貴。どんどん吐き出せ」(←メンター千尋!)
嵩「このまま何もしないで死んでいくのかと思うと、怖くて夜も眠れないんだよ。伯父さんが言ってただろう、何のために生まれて、なにをして生きるのかって」
「俺は……本当は絵を描きたいんだ。絵を描いて、生きていきたい!」

伯父の寛は絵で食べていくのは現実的ではない、と言うものの、本の挿絵や広告など、図案(今でいうデザインですね)なら、可能性があるかも、と助言する。
寛「“かもしれん”に、人生を賭ける覚悟ができちゅうか?」「はい」
「よし。 嵩は美術系の学校に進め。自分が決めた道やきにゃ、おまんが責任を持て」


「鏡川のボウフラよりも弱い!」

一方、のぶとうさ子はたらいで洗濯。先輩たちの分も放り込まれる。
弱音を吐くうさ子。
「もういやや。うちに帰りたい。帰りたいちゃ」

そこに黒井先生登場。
「2人とも、もうホームシックですか!」
そしてうさ子に言い放った。
「めそめそするなっ!あなたは弱すぎる、 鏡川のボウフラよりも弱い。 御国のために強くなりなさい」
まさかの“ボウフラ”発言。その例えに呆然ぼうぜんとするうさ子(とはいえボウフラって見たことある人、どれくらいいるかな?)。「私は負けんきね」とのぶ。

一方の朝田家には岩男がパンを頻繁に買いに来るようになっていた。
蘭子はそっけない(今でいう、塩対応)。
羽多子(江口のりこ)は蘭子が家に縛られているのではと心配している。
蘭子「うちはどこっちゃ行きとうない。このうちがええが。……朝はふいごの音で目を覚まいて、ノミのカンカンいう音、焼きたてのパンのにおい、 コツコツ石を削る音、そういうこの家が好きながよ……うちの志はこの家でみんなの役に立てること、それやったらいかん?」

入学以来、初めて里帰りしたのぶに家族は大歓迎。
釜次(吉田鋼太郎)「誰にいちばん会いたかった? おじいちゃんじゃろ?」

ヤムさんからことづかっていたあんぱんを住み込み職人の原豪(細田佳央太)から渡され、泣きだすのぶ。
「うち、家から離れて初めて分かった。 うち、この家に生まれてよかった。この家族でよかった」(※今田美桜 振り返りインタビュー

そこへ嵩が訪ねてくる。
美術学校を受験することを伝えると、しばし沈黙のあと
のぶ「わかっちょったよ。嵩が最初に絵を描いてくれた時からうち分かっちょった。 嵩は絵を描くために生まれてきた人やき」
嵩「のぶちゃん。ありがとう。なんか、なんか力が湧いてきたよ。勇気100倍だ」


「千代子に惚れて、一緒になれて、これ以上の人生はないと思うちゅう」

水曜日は岩男の第一声から始まった。羽織はかまで正装している。
「蘭子さんを嫁にください」(そら、来た!)
家業を継ぐ目処めどがついたこと、なんなら蘭子には勤め先の郵便局まで運転手付きの自動車で通ってもらっても……などと言い出す。岩男は大金持ちだ。
迷惑顔の蘭子の様子は意に介さず、返事はまた改めて、と言い置いて帰った。
驚く羽多子やメイコ(原菜乃華)を残し、仕事をする豪にちらっと視線を走らせ、蘭子は勤めに出て行った。

一方、のぶたちは、なぎなたの授業。
黒井はのぶを初心者にしては筋がいいと褒める一方、うさ子に「仕合」と称して詰め寄る。
「これからの日本婦人は温順貞淑なだけではいけません。……立ちなさい、ボウフラ!」

のぶは、うさ子をかばおうと黒井に立ち向かうが、歯が立たない。
「朝田のぶ、あなたは実に弱い。ボウフラを守ることさえできない」

夜、柳井家で。飲めないウイスキーに口をつける千代子(戸田菜穂)と寛の会話。
千代子「柳井医院は、ほんまに、あなたの代で終わってしもうてええがでしょうか……跡取りを産めんかった私のせいです」
寛が答える。
「君はこの家と結婚したがか? わしと結婚したがやないがか? わしよりこの家に縛られたいがか。ん? わしは、千代子にれて、一緒になれて、これ以上の人生はないと思うちゅう」
「ヒロシさん、そんなに見つめんといてください」
そっと千代子の肩を抱く寛。やっぱりステキな寛伯父さま。
※戸田菜穂インタビュー


「自分を一番大切にせんといかんで」

一方朝田家では……
蘭子「豪ちゃん? うちの縁談どう思う? 」
豪「お金持ちやしええ話やと思います」
「そう? そうでね」悲しそうな顔で去る蘭子。切ない。
そして母・羽多子に向かって岩男からの縁談を承諾する、と言い出した。
何かを察した羽多子は止めようとする。
「そんな大事なこと慌てて決めたらいかん。ちっとまっちょき」
そして古い手紙がたくさん入った箱を取り出した。亡くなった結太郎(加瀬亮)が出張先から送ってきた手紙だった。
「たまるか~。こんなにようけ」
「中読んだらもっと驚くで……お父ちゃん、いっつも手紙で伝えてくれた。 お母ちゃんのこと、どれば~いっつもいっつも思うちゅうか。蘭子にもそういう大切な人がおるがやない?……自分を一番大切にせんといかんで」
読んでいいかと聞く蘭子に、本当に好きな人と結婚するなら、と答えると、
蘭子「ほいたらいいわ。うちもう、決めたがよ」部屋を出ていく。
手紙に向かってつぶやく羽多子「結太郎さん、どういたらええですろうか」

岩男と蘭子の縁談を聞いたのぶが慌てて帰省してくる。
蘭子は承諾の返事をするため喫茶店で岩男と向かい合っていた。
そこに駆け込んでくるのぶ!
「蘭子、早まったらいかん! 岩男、別にあんたに恨みはないけんど、蘭子はまだ、お嫁にいかんき」
そこにメイコが駆け込んできて……
「蘭子お姉ちゃん、言うよったやんか。岩男さんがパン食い競争でズルした時、“食パンの角に頭ぶつけて死んでしまえ”って」
ああ、あの時のセリフがここで!
口の悪さを謝って、姉妹は嵐のように去って行ったのだった。

顛末てんまつびるのぶに蘭子が言う。
「好きな人がおって……その人はうちのことら、なんちゃあ思うちゃせんって分かったがやき。そしたら誰に嫁いだって同じやん、 お金持ちならもうけもんやし」
のぶが蘭子を抱きかかえる。
つらいよね、悲しいよね……こんなとき、一緒に悲しむ以外に何ができるんだろう。


「人生は喜ばせごっこ」

年が明け、いよいよ嵩の受験の日。 「では行ってきます」という嵩に、寛はこの上ない優しい目をして言うのだった
「嵩はもっと力を抜け。頑張ってこい」
愛情を込めた寛伯父さんの表情……いいなぁ、羨ましい。

千代子や千尋が励ますのをよそに、屋村がからかうように言う。
「当たって砕けてこい」
嵩「砕けちゃダメなんです」
屋村「また線路で寝ることにならなきゃいいけどな」
嵩「受験生の心、不安にさせるのやめてください」
そして「忘れもんだ」と合格あんぱんを投げてよこす。「3度目はないといいな!」
最後まで辛口のヤムさん。「行ってきます」

最初に受験した京都の高等工芸学校は不合格、東京高等芸術学校にいちの望みをかける。なんと合格するのは僅か20名という狭き門。

そして合格発表の日。嵩は自分の結果を(怖くて)見に行けない。ぐずぐずしていると、そこに現れたのは寛伯父さん! 学会の帰りだという。なんと! 本当に涙が出るほど素敵すてきな伯父さんだ。
うなだれている嵩を見て、すっかり落ちたと勘違いした寛は
「絶望の隣は希望や、銀座でうまいもんでも食うて帰ろう」
嵩「おじさん、あの、まだ合格発表、見てないです」
寛「はぁ? わしゃ、てっきり。なにしゅうがな。いくぞ」

結果は……合格!
夢の中みたい、という嵩。「よう頑張った」と嵩を抱きしめる寛。
※竹野内豊インタビュー

ここに……遠くから様子を見つめる登美子(松嶋菜々子)の姿が!
鮮やかな着物に毛皮のストールをつけているところを見ると、かなり裕福な暮らしをしているらしい。手紙のようなものに目を落としている。
もしかしたら、寛がこの日のことを伝えたのかも? と想像した。
嵩は気づいていないけれども。(※松嶋菜々子 振り返りインタビュー

女子師範学校では、ボウフラと言われていたうさ子がなぎなたの腕を上げていた。
黒井先生のようになりたい、と教育勅語を暗唱していたうさ子。
「学をおさめ、ぎょうを習ひ、もって智能を啓発し……」
その顔つきも、以前とは違っている。
なんと、うさ子はのぶより圧倒的に強くなっていたのだ。
黒井は高らかに言う。
「これからのおなごは、小川うさ子、彼女のようにたくましく、かつ、日本女子の美徳であるしとやかさ、節度、両方を兼ね備えるべきです」
※小川うさ子インタビュー

そしてのぶに向かって
「朝田のぶ、あなたは……愛する祖国のために全身全霊で尽くす心がないから、負けたのです」

合格した嵩は、寛と銀座にあんぱんを買いに行く。
父と家族であんぱんを食べた幸せな記憶……。
「清(二宮和也)が生きちょったら、おまんの合格をさぞかし喜んだろうにゃ。嵩、何のために生まれて、何のために生きるか、わしゃ思うがよ。それは人を喜ばせることや。おまんのあんなうれしそうな顔を見て、わしもこじゃんとうれしかったじゃ。人生は喜ばせごっこや。さあ、パンを買うぞ」

パン屋で……思わぬ映像が写し出される。パンが並ぶ店内の様子から、カメラは壁に飾ってある1枚の集合写真にズームインしていく。その写真の中に屋村の姿が! 嵩たちは気づかない? これまでほとんど描かれてこなかった彼の過去は、これから明らかになるのだろうか。

御免与町に帰ってくる嵩と寛。手にはお土産のあんぱんを持って。
迎えに来ていたのはのぶと、屋村。
銀座のあんぱんをのぶに、そしてヤムさんは「祝」印の付いたあんぱんを嵩に。
「あんぱんとあんぱんの物々交換になっちゃったじゃねぇかよ!」
見ている私たちも、ほっと「喜ばされた」一週間の終わり。


嵩が合格して本当に良かった。そして柳井家の寛と千代子、朝田家の結太郎と羽多子、それぞれしっかりとした絆で結ばれたステキな夫婦であることがわかるシーンが印象的でした。寛伯父さんの言葉には今週も「いいなぁ」と何度もつぶやきました。
さて、来週のタイトルは「くるしむのか、愛するのか」
いよいよ戦争の影がのぶたちのところにも近づいてくるようです。人々の人生を翻弄した戦争は、どんな形で登場人物たちに迫ってくるのでしょうか。もう、不安しかないですが……また来週、ほいたらね、です。