昭和40年代に入ると東京の民放ラジオでは深夜放送が盛んになりました。対象は受験生を中心にした高校生、大学生などの若者たち。「オールナイトニッポン」のパーソナリティーだった齋藤安弘さんによれば、最盛期、週に1万通ものお便りが届いたといいます。私も齋藤さんの局ではないけれど当時始めたブルーグラスの曲をリクエストして、高2の1年間に2回も読まれました。今思えば大変な確率で当選したわけですね。
一生懸命ハガキを書いているとバンド仲間がハガキの隅にリクエストを書き足す。そちらが放送で取り上げられてしまい、パーソナリティーの田中信夫*1さんや北浜晴子*2さんに「“ひさしを貸して母屋を取られる”ですネ」と言われたこと、今でも鮮明に覚えています。でも一生懸命に書いたハガキが電波に乗ってラジオから流れる、なんとロマンチックなことか! そこで「深夜便」でも頂いたお便りは、お名前だけでもなるべく多くの方をご紹介しています。
今年は年賀状じまいの連絡が増えてきました。それは私も考えないではありませんが、いざ賀状を手に取ると添えられたひと言からその方の様子が懐かしく浮かびます。下手な字でも思いは伝わるのではと思い、私もメールで済まさず手紙を書くことも多々あります。
さて昨年暮れの「季刊深夜便」で初めて、電波に乗せて思いを認める「拝啓 お元気ですか」を担当しました。村上里和アンカーとともに紹介するお便りは、亡くなった夫や妻に語りかけるもの。若き日の一期一会の相手を偲ぶ気持ち。あるいは亡き母が大切にしていたぬいぐるみが語る形で、介護が終わった娘さんの今の気持ちを伝えるものなど、つらさや悲しさを乗り越えた様々な思いがほのぼのと伝わり、こちらの目も潤もうというものです。
お便りは自筆も多く、手紙を読むほどに書き手の人生や人柄などが文字の向こうにかいま見えます。「季刊深夜便」や「みんなの子育て☆深夜便」など、メールと並行してよろしければ自筆のお便りもお待ちしています。
*1 声優・俳優。「コンバット!」のサンダース軍曹役などの吹き替え担当。
*2 声優。「奥さまは魔女」のサマンサ役の吹き替えなど担当。
(とくだ・あきら 第1・3・5日曜 担当)
※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2025年3月号に掲載されたものです。
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