メタボリックシンドローム*1に着目した健康指導で病気の芽を摘み取り、成果を上げた実績を持つ野口緑さんに、これまでの取り組みや健診結果の読み解き方について伺いました。
*1 内臓脂肪が過剰となり、高血圧、空腹時の高血糖、中性脂肪の蓄積の異常などとなった状態。
聞き手/中村宏この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2025年2月号(1/17発売)より抜粋して紹介しています。
──野口さんは、メタボに着目した健康管理と指導で予防に成果を上げられたそうですね。
野口 兵庫県の尼崎市役所で職員の健康管理をしていたとき、高齢ではないのに突然倒れたり亡くなったりする職員がいることに驚きました。不思議に思い、倒れた方の健康診断データを入庁時から見直してみたんです。
すると、突然倒れる人には血圧・血糖・中性脂肪・悪玉(LDL)コレステロールの数値が高いという共通点がありました。病院に行くほどではない、僅かな異常が5年10年と続いたあと、倒れる。この命は予防で救うことができたのではないかと考え、保健師として対策を考え始めました。
小さな異常が重なったときが危険
──過去の健康状態をさかのぼると、どこかに曲がり角がある。
野口 そうなんです。例えば50代半ばで脳梗塞になった男性は、40歳から血圧が上がりだし、130㎜Hgを少し超える状態が続いていました。でも「俺もそんな年かな」と放っておいたといいます。
すると翌年以降、中性脂肪の数値が少し上がり、次はLDLコレステロール値が僅かに高まり……と、小さな異常が重なっていきました。それでも「年齢的なものだろう」と放置した結果、突然倒れてしまったのです。
ここで注目すべきは、これらの数値の悪化は、いずれも血管を傷める要素だということ。高血圧・高血糖・LDLコレステロール値が高い・肥満、どれも血管障害を進める“リスクファクター(危険因子)”なんです。このリスクファクターが重なったときが危険な曲がり角。基準値より少し高めのものが二つ以上になると注意が必要だと分かりました。
生活習慣の見直しで死亡数が激減
──結果はどうでしたか。
野口 保健指導を始めた翌年から、現職職員の心筋梗塞による死亡がなくなりました。毎年1、2人、多い年では5人も心筋梗塞や脳梗塞で倒れる方、亡くなる方がいましたが、私が担当している間は一人もいませんでした。
──すばらしいですね。2005(平成17)年からは、尼崎市の一般市民を対象にした個人指導も始めたとか。
野口 国民健康保険に加入する市民の健診結果から、リスクファクターが重なっている集団を絞り込みました。そして該当する方と面談し、生活指導をしました。
※この記事は2024年10月12日放送「健康診断のデータをムダにしないために」を再構成したものです。
「健康診断は生活習慣の通信簿」と語る野口さん。現在の「メタボ健診」スタートのきっかけとなった尼崎市での取り組みや、健診結果の読み解き方など詳しくは月刊誌『ラジオ深夜便』2月号をご覧ください。
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