NHK財団は、NHKと全国各地の教育研究会が共同で開催している「放送番組の効果的な活用について考える先生たちの研修会」で、企画・運営などの実務を担っています。

今回は、夏休み中の8月6日に北海道旭川市で行われた、メディア・リテラシーを育む授業づくりについて考える研修会をご紹介します。


8月6日に行われた「NHK for School実践研究ワークショップ」(主催:北海道地方放送教育研究協議会、NHK旭川放送局)。会場となった旭川市立千代田小学校には、市内だけではなく札幌、函館、わっかないなど北海道の各地から41人の先生方が集まりました。

講師は日本大学文理学部教授の中橋雄さんと、横浜市立新石川小学校主幹教諭の武井三也さんです。

日本大学文理学部教授・中橋雄さん

はじめに講師の中橋さんから「この研修を通して次の3つを説明できるようになりましょう」と目標が示されました。

1. 学校で身につけるべきメディア・リテラシーとはどのような能力か
2. メディア・リテラシーを発揮した学びを実現するために必要となる指導方法

3. NHK for School「アッ!とメディア」の特徴と活用方法

リンク:NHK for School「アッ!とメディア~@media~」 ※ステラnetを離れます

6年生になりきり!授業を受ける先生方。

先生方、小学校6年生になりきってポスターを作る

続いて、武井さんによる模擬授業です。参加した先生方が6年生になりきり、メディアを通じた情報発信について考える授業を受けました。

前半は「修学旅行に行く前」の設定。武井さんが「修学旅行で楽しみなことは?」「修学旅行の後の自分はどうなっているかな?」などと問いかけ、答えを引き出しながら場を温めていきます。

教室の空気が和らいだ頃合いを見て、武井さんは「修学旅行から帰ったら、みなさんにポスターを作ってもらいます。楽しかったことや自分の成長を伝えたいですね。どうすればいいか考えてみましょう」と模擬授業全体の課題を示しました。そしてNHK for Schoolの番組「アッ!とメディア」の「責任を持って発信できる?」の回をみんなで視聴しました。

参考:NHK for School「アッ!とメディア」責任を持って発信できる?~メディア・リテラシー~ ※ステラnetを離れます。

「ポスターを作るためには『誰に』『何のために』伝えるか意識することが大切」というポイントを確認しました。

授業を進める横浜市立新石川小学校主幹教諭・武井三也さん。

模擬授業の後半は「修学旅行に行った後」の設定です。前のパートで学んだことを生かして、児童役の先生たちが自分の端末でポスター作りに取り組みました。

武井さんから「相談しながら作ってOK!」「友達のいいところを取り入れてOK!」と聞いた先生たち。4人1組のグループで相談したり、他の先生が作っている様子を見せてもらったりしながら、なごやかな雰囲気でポスターを作っていきます。

最後に、武井先生が勤務先の小学校で行った授業の様子や児童の反応を報告して、模擬授業パートを終えました。


「メディア・リテラシーかるた」を眺めてひと息

「メディア・リテラシーかるた」を見ながら話し合う先生方。

ここで休憩。

会場では、中橋さんの監修でNHK財団が制作した「メディア・リテラシーかるた」をご紹介しました。先生たちは、かるたを実際に眺めながら、学校での使い方について話し合っていました。

※このかるたは、ご希望があれば無料でお分けしています。(ダウンロードして自分で印刷して作ることもできます)数に限りがありますので、1団体につき1セットまでのお渡しとさせていただきます。詳しくは下記ページをご覧ください。
【参考】
メディア・リテラシーかるた | ステラnet (steranet.jp)
NHK財団「メディア・リテラシーかるた」 ※ステラnetを離れます

休憩のあとは、中橋さんの進行による教材研究と授業づくりです。前半の模擬授業のポイントを振り返ったあと、中橋さんは著書『メディア・リテラシー論 ソーシャルメディア時代のメディア教育』を引用しながら、メディア・リテラシーとは、

1. メディアの意味と特性を理解した上で
2. 受け手として情報を読み解き
3. 送り手として情報を表現・発信するとともに
4. メディアのあり方を考え、行動していく

ことができる能力です、と解説しました。

続いて「アッ!とメディア」の制作に携わった宮﨑宗和ディレクターが登場。番組のねらいを説明しました。

「アッ!とメディア」制作担当・宮﨑宗和ディレクター

「アッ!とメディア」でどんな授業をやってみたい?

次の課題は「『アッ!とメディア』の中からひとつを選び、それを使ってどんな授業ができそうか考えましょう」。先生たちは、持参した端末で「アッ!とメディア」の各回をチェック。共同編集できるクラウドツールを使いながら、どんな授業をやってみたいか、グループで話し合ってまとめました。

NHK for Schoolの使い方のポイントを解説する中橋さん。
活発に意見を交わす先生方。

それぞれのグループの発表のあと、中橋さんは「子どもたちも教師も、ともにメディア・リテラシーを身に付けることが求められています」「教師は、子どもたちがNHK for Schoolを使いこなし、メディアについて学ぶことができる実践を行う必要があります」と、研修会全体をしめくくりました。

研修前半は模擬授業で「送り手として情報を発信・表現する」ことを体験、後半はNHK for Schoolの番組を使った授業について考えました。この日の研修は、きっと先生方の今後の授業づくりのヒントになると思います。


NHKとNHK財団は、このような先生向けの研修会を随時行っています。興味のある方はNHKのウェブサイト、先生向け研修会の案内ページ(下記リンク)をご覧ください。

NHK for School先生向け研修会のご案内 ※ステラnetを離れます

また、研修会などのお問い合わせはこちらでも受け付けています。

(文/NHK財団 展開・広報事業部 市谷 壮)