10月5日(土)放送スタートの土曜ドラマ「3000万」。

主人公は、日々の生活、子育て、チャンスのない社会、将来への不安など、現役世代の等身大の悩みを抱える佐々木祐子(安達祐実)。夫の義光(青木崇高)や、祐子の日常に深く関わるカスタマーセンターの同僚、そして混乱を招くクセ者たちを交え、いつしか思わぬ泥沼にハマっていく佐々木一家の姿を描く、クライムサスペンスだ。

9月13日、東京・渋谷のNHK放送センターで「3000万」の記者会見が行われ、 安達祐実さん、青木崇高さん、演出の保坂慶太さん、そして脚本を担当した「WDRプロジェクト」より4名の脚本家(弥重早希子さん、名嘉友美さん、山口智之さん、松井周さん)が出席した。

前列左から、保坂さん、安達さん、青木さん。後列左から山口さん、名嘉さん、弥重さん、松井さん。記者会見で出演者よりも脚本家の数の方が多いのは珍しい。

本作は、2022年にNHKで新たに立ち上げられた“脚本開発チーム“WDR (Writers' Development Room)プロジェクト”から生まれたドラマの第1弾。海外ではシリーズドラマを制作する際、複数の脚本家が「ライターズルーム」という場に集い、共同執筆することが一般的だ。

今回はその手法に倣い、2000人以上の応募の中から脚本家10名を選出し、連続ドラマの第1話を19作品仕上げた。その中から最初に制作されたのが、本作品。4名の脚本家が再集結し、「3000万」全8話を書き上げた。

主演の安達祐実さんは、

「いつもは役作りをする際に、演じる役の心の流れがはっきりと太い道として見えていることが多いのですが、今回の脚本は予想外の感情が起こってくるので、かえってそれが人間らしくも見えるし、いつも目にする脚本とは違うな、と感じました」(安達)

と、脚本の斬新さに関心を寄せた。夫・義光を演じた青木崇高さんも、

「日本のドラマらしくないと、脚本から読み取れました。挑戦的で挑発的な作品になるだろうと。野心的な皆さんと一緒に作品をつくれるのは本当に幸せです。全力を注いで作品に参加させていただきました」(青木)

と、本作参加への想いを語った。

演出・脚本家チームには「どのように脚本を作り上げていったか、見どころはどこか」という質問が。

まずは「WDRプロジェクト」の発起人であり、チーフ演出の保坂さんから脚本の作り方について説明があった。

「回ごとにメインライターを決め、セリフから展開から細かい設定まですべて、そのメインライターが担当。残りの3人がおのおののアイデアを提供するという手法でつくりました。そもそもこのプロジェクトを始めた理由は、面白い、と思って取り組める脚本をつくりたいということ。そのためにはこの手法がふさわしいと考えました」(保坂)

また、4人の脚本家もそれぞれの想い、見どころを挙げた。

「続きが見たくなる脚本を、4人で頭をひねりながらつくりました。自分で書いておいて『バカな夫婦だな』と思いますし、そこは脚本でも目指したところではありますが、魅力的なキャラクターがたくさん登場し、没頭して見ていただけると思います」(弥重

「佐々木夫婦、警察チーム、犯罪チーム、みんなそれぞれが自分にとって最善の選択をして、全力で間違うということをきちんと描いた作品。佐々木夫妻に共感できなかったり、犯罪チームに共感できたり。出来事だけが次々に放り込まれるのではなく、しっかり展開をしていくのでそこを楽しんでいただけたら」(名嘉

「ドラマって結構“収まりどころのいいところに収まる”ということが多いのですが、今回はできれば収まらずに『もう一捻ひとひねりしてみよう』と考えた脚本になっています。その結果、みなさんの予想を裏切っておもしろくなっているはず。そこに注目してください」(山口

「悪に手を染めるとは、どこまでが悪いことなのか。ここまではグレーで、この先は悪いことかな、と日常の中でも判断できなくなるときや、ちょっとしたトラップがあったりします。そこに手を出してしまったり、ギリギリセーフだったり。落とし穴がたくさん集まっていて、楽しんでいただけると思います」(松井

今回、初めて夫婦役を演じたという2人(安達、青木)は「結局、男と女は違うというのが唯一、一致した意見だった」と話した。

「ドラマの中で、夫婦で言い争ったり、ぶつかり合ったりする場面がたびたび出てくるんですけど、そういうシーンを撮ったあとはお互い悶々もんもんとしていました。私は論点をずらされるのがすごく嫌いなのですが、ドラマの中でも『そういうことを言ってるんじゃないんだよ』と思うようなことを義光(青木)が言ってくるんです。青木さんの演技がうまいので、絶妙にイライラさせられました(笑)」(安達

「佐々木家は祐子がリーダーシップをとっていますが、夫婦って『ああ、こういうのあるよね』という絶妙なやり取りがリアルで、キャラクターの認識は早かったです。割とチューニングも必要なく、楽しく演じられました」(青木

2人は、「本作は自信作」と話す。

「物語が『こっちに向かって行くんだろうな』と思ったら、90度角度を変えてくるような展開があって、ワンシーンも気を抜かないでつくった作品です。絶対に飽きさせない自信があります。人生って、その場で決断しなければいけないことが次々と起こって、その時々で最善を尽くしているのだと思いますが、生きるってそういうことの繰り返しだな、と思いながら撮影しました。そんなことも共感していただけたらうれしいです」(安達

「最初の顔合わせの時に、このドラマはきっと伝説のドラマになる、と宣言したんですよ。人間らしさがドラマで表も裏もしっかり描かれている。本当に伝説のドラマになったと思います。8話の最終回まで、しっかり見ていただければと思います」(青木

会見終了後には、翌日に誕生日を迎える安達さんのバースデーケーキがサプライズで会場に運び込まれた。安達さんは、「43歳になります。これからもこういう素敵な作品に出会えるという希望をもちながら楽しく生きていければ」と、会見を締めくくった。

これまでのドラマとは違うストーリー展開、一瞬も気を抜けない「没入感」を体験できる土曜ドラマ「3000万」。放送開始を楽しみに待ちたい。


土曜ドラマ「3000万」(全8回)

2024年10月5日(土)スタート
毎週土曜 総合 午後10:00~10:50/BSP4K 午前9:25~10:15
翌週水曜 総合 午前0:35~1:25 ※火曜深夜

【物語のあらすじ】
コールセンターの派遣社員として働く佐々木祐子(安達祐実)は、家のローン、子育てなど悩みは尽きない。高圧的な上司にも耐え、先が見えないながらも日々の暮らしを成り立たせようと必死に生きている。
一方、夫・義光(青木崇高)は、大した稼ぎもないのに「なんとかなる」と楽観的な態度を繰り返し、祐子は苛立ちを隠せないでいる。唯一の生きる喜びは、息子・純一(味元耀大)の存在。習いごとのピアノに熱中する姿が愛おしく、誇らしい。でも日々の生活はギリギリ。ほんの少しでも楽な生活を送りたいと願っている。
そんななか、佐々木家をある不幸が襲う。
この時、ちょっとした出来心で選択を誤ったことで、その後の生活は一変することに。祐子たちの目の前に次々に現れるクセ者たちが、平穏な日常を狂わしていく。
行くも地獄、帰るも地獄……悪魔のささやきに耳を貸したとき、人はどうなってしまうのか。欲望、願望、希望……人々が潜在的に抱える望みや欲をき出しにして、物語は混沌へと突き進んでいく。

脚本:弥重早希子、名嘉友美、山口智之、松井周 from WDRプロジェクト
出演:安達祐実
青木崇高、加治将樹、工藤遥、野添義弘、持田将史、萩原護、愛希れいか、味元耀大、森田想ほか
演出:保坂慶太、小林直毅
制作統括:渡辺哲也
プロデューサー:上田明子、中山英臣、大久保篤

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