4月と5月の「ミッドナイトトーク」のテーマは「おしゃれ」でした。ゲストの夏木マリさん、岡崎朋美さん、それぞれのお話を聞いていると、ファッションの好みなどから始まったトークから、人生をどのように歩いてこられたのかが伝わってくる、すてきなトークとなりました。

自分はおしゃれで人生を振り返ってみたらどうなんだろう? おしゃれを意識したのは小学1年生。幼稚園で毎日のように一緒だったA子ちゃんと小学校では別クラスに。登校する意欲がなくなってしまい毎朝ぐずっていました。母は、アルファベットがプリントされたシャツを出してきて「これを着て学校へ行ったらA子ちゃんに会えるよ。しげちゃんカッコいい! って言ってくれるよ」と言うのです。

呪文に弱い私はそれを信じて登校すると、さっそく廊下でA子ちゃんに出会い「しげちゃん、すてきなシャツね」と話しかけてくれるではありませんか。母は正しかった! それ以来、朝起きるとその日着る服を自分で選ぶようになり、欠席もなく小学校を無事卒業することができたのです。動機はさておき、おしゃれは私の人生を前向きにしてくれました。

中学校に進むと、岐阜町にもIVYアイビーファッションの波がやってきました。東京では、銀座をみゆき族がかっしていた時代。ボタンダウンのシャツやスニーカーが流行り始めました。でも校則では許されず、厳しく服装チェックされました。

ボタンダウン・シャツがダメなのは襟にボタンが付いていて派手だから、というのが先生の説明。一計を案じ、じゃあボタンじゃなくて糸で襟を留めるのなら規則にふれないだろうと、ボタダウンならぬ糸ダウンを発明。これが全校に流行してしまいました。

さらにそれをヒントに、白い運動靴に油性ペンでラインを描き込み、いわゆるスニーカー風に改造したりする者まで登場。他校からも見学者が訪れるほど、おしゃれで盛り上がりました。そんなこと同窓生の思い出に残っているかな。

(ごとう・しげよし 第1・3・5土曜担当)

※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2024年7月号に掲載されたものです。
最新のエッセーは月刊誌『ラジオ深夜便』9月号でご覧いただけます。

購入・定期購読はこちら
9月号のおすすめ記事👇
▼林家木久扇 落語と歩んだ64年
▼ひと月5万円のハッピーライフ
▼介護が楽になる心の持ち方
▼人と鳥の幸せを目指して ほか