7月31日、東京・渋谷のNHK放送センターで、BS時代劇「おいち不思議がたり」の試写会が行われ、出演者の葵わかなさん、玉木宏さん、制作統括の佐野元彦さんが出席した。

ドラマ「おいち不思議がたり」は、あさのあつこさんの同名小説シリーズが原作。江戸・深川の長屋で診療所を営むしょうあん(玉木宏)の一人娘・おいち(葵わかな)は、父を手伝いながら、医師になることを夢みている。

そんなおいちは、無念のうちに亡くなっていった者たちの「声」を聴き、「姿」が見える特別な力を持っていた。とある事件がきっかけで、おいちは岡っ引きの親分・仙五郎(高嶋政宏)とともに人間の闇に迫り、謎を解いていくことに……。

ミステリー要素を含む時代劇でありつつ、ヒロインが悩みながらも自らの力で道を切り開いていく青春物語でもある。制作統括の佐野元彦さんは、本作についてこう語る。

「NHKには昔ながらの時代劇を放送するとともに、少しでも時代劇の題材を広げたいという思いがあります。その中で見つけた原作を、ドラマ化させていただきました。ヒロインに不思議な能力がある時代劇って、今まで作られたことあるのかなと思うのですが、みなさんに楽しんでもらいたいです」(佐野さん

葵わかなさんを起用した理由について、佐野さんは、以前葵さんが出演する舞台を見たことがあり、その時からずっと心に残っていたと振り返る。

「原作を読んでいた時に、頭の中でおいちが葵さんに置き換わって、これは葵さんにお願いしよう!と思いました」(佐野さん

また、玉木さんについては、連続テレビ小説「あさが来た」、大河ドラマ「篤姫」など、過去に佐野さんが手掛けたドラマで起用していたという。

「玉木さんには、僕にとって大切なドラマでは必ず出ていただいていています。一番信頼している俳優さんに、今回お父さん役をやってもらおうと思ったんです」(佐野さん

葵さんと玉木さんは今回が初共演。当初、親子に見えるかが不安だったという2人。玉木さんは、撮影が進むにつれ“親子感”がしっくりくるようになったと話す。

「おいちがちゃんと安心していられる環境を、撮影の中で作れたのかなと思っています。劇中では、おいちの周囲でいろんなことが起こります。おいちは父である松庵に相談をしたり、悩みごとを打ち明けたりするので、心の支えになる存在であるようにと思いながら演じていました」(玉木さん

一方の葵さんは、

「江戸時代ならこの年齢差の親子は多分たくさんいたと思うんですけど、玉木さんはお若いし、かっこいいから、現代の人が見た時にどうなのかと不安に思っていました。でも、現場でお会いしたとき、『私たちって親子でいけますかね』と話をしたら、玉木さんが『全然大丈夫ですよ』と言ってくださって。そこからは何の疑問もなく、親子だと思って演じられました。
悩んだ時に寄り添ってくれたり、背中押してくれたりするのが松庵先生なので、そういうシーンを重ねていくうちに、自然と、雰囲気も空気感も含めて親子に近づいていったのではないかと思っています」(葵さん

おいちが不思議な力の持ち主ということで、「お二人にはおいちのように、なにか特別な力がありますか?」と記者に問われる場面も。玉木さんは何度かおばけを見たことがあると告白した。

「数回ぐらいしかないですけど、『あれ、透けてる人がいる』みたいな感じ。おいちみたいに何かを訴えかけられるわけでもなくて、ただいるだけ。一瞬びくっとしたんですけど、特に怖くもなかったっていう。だから、見えてしまう人がいるんだろうなとは思っています」(玉木さん

「この作品の原作や台本を読んでいる時に、見えることをどう具現化するかを考えていました。いろんな人に話を聞いて、この作品の撮影が終わる頃には私も見えるようになってるかもしれないってずっと思ってたんですけど、今まだ何も見えていませんね(笑)」(葵さん

この物語の舞台は江戸時代で、不思議な力が出てくるものの、現代にも通ずるものがあるという葵さん。

「現在にもそれぞれ悩みを持っている人がいると思うんですけど、真心とか、思いやりとか、大切にしなきゃいけないものがあって、おいちもそれを信じて進んでいます。普遍的に大事にしてきた部分というところでは、現代に通ずるものはあるのかなと感じています」(葵さん


BS時代劇「おいち不思議がたり」(全8回)

2024年9月1日(日)スタート
毎週日曜 NHK BS/BSP4K 午後6:45〜7:28

【物語のあらすじ】
町医者である父・松庵(玉木宏)のもとに生薬屋「鵜野屋」の若旦那・直助が尋ねてくる。おいち(葵わかな)はその背後に助けを求める女の姿を見る。おいちの伯母・おうた(財前直見)は、おいちと直助の縁談を進めようとするが鵜野屋を訪ねたおいちに女中・お絹が「おやめなさい。あの人に殺されますよ。」と囁く。直助の周囲では前妻・加世と、以前恋仲だった女中・梅が病で亡くなっていた。おいちは岡っ引きの仙五朗親分(髙嶋政宏)と探り、犯人に目星をつけるが、事件は意外な方向に!
江戸ではその後も、不思議な事件が多発する。その事件解決に活躍しながら、おいちは一歩一歩、医者への道を進んでいく!

原作:あさのあつこ「おいち不思議がたり」シリーズ
脚本:宮村優子
音楽:遠藤浩二
出演:葵わかな、玉木宏、髙嶋政宏、財前直見、工藤阿須加ほか
演出:岡田健ほか
制作統括:佐野元彦(NHKエンタープライズ)、磯智明(NHK)
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兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体にanan、BRUTUS、エクラ、婦人公論、週刊朝日(休刊)、アサヒカメラ(休刊、「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、mi-mollet、朝日新聞デジタル「好書好日」「じんぶん堂」など。