第113作目となる、来秋放送開始の朝ドラ「ばけばけ」。

10月29日、NHK大阪放送局で記者会見が行われ、ヒロイン・松野トキ役が髙石あかりさんに決定したと発表された。

トキのモデルは、『怪談』などの著書で知られる明治時代の外国人作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻、小泉セツさん。「怪談」を愛し、急速に西洋化が進む明治の日本の中で埋もれてきた名もなき人々の心の物語に光をあて、代弁者として語り紡いだ夫婦の物語だ。

「ばけばけ」のヒロインオーディションに応募したのは2892人。髙石さんは、「舞いあがれ!」「あんぱん」に続く3回目のオーディションで、大役を射止めた。


本物の小泉セツと錯覚するくらいの存在感に圧倒された

髙石さんは会見に、ハナミズキと勿忘草わすれなぐさをあしらった白い着物で登場。挨拶の前に感極まり涙した髙石さんは、

「小さい頃から朝ドラヒロインになるのが夢で、今ようやく実感がわいてきて、みなさんの温かい表情に胸がいっぱいになりました」(髙石

と涙の訳を話した。また、衣装について、

「ハナミズキは感謝と返礼の意味があり、みなさんに支えられて今があることへの感謝。勿忘草は何者でもない自分をみなさんに覚えてもらえる人になるように」と、着物の柄に込めた思いを語り、ヒロイン決定の瞬間は「目の前が真っ白になって、感情が追い付かず、1人になったときにボロボロ泣いていた」と振り返った。

髙石あかりさん(左)と、脚本家のふじきみつ彦さん(右)。

髙石さんを選んだ理由について、本作を担当する脚本家のふじきみつ彦さんは、

「オーディションでラフカディオ・ハーン役の人と芝居をしてもらったのですが、まるで自分は明治時代の松江にいて、2人の様子をのぞき見しているのではないかという感覚に陥りました。本当にこの夫婦がこんな会話をしていたのではないかと錯覚するくらいに、髙石さんは小泉セツ(松野トキ)なのだと思わせてくれました」(ふじき

と、選考秘話を披露。制作統括の橋爪國臣さんも、

「和服にかつらという衣装の髙石さんがエレベーターから下りてきたときに、まさに小泉セツそのまんまだと感動しました。オーディションの中で『この人を一番長く見ていたい』と思わせてくれたのが髙石さんでした」(橋爪

とコメントした。


小学校の先生に「あなたの朝ドラヒロインが見たい」と言われて

小さい頃から朝ドラヒロインになるのが夢だったという髙石さん。そう思うようになったきっかけを聞かれると、小学校の思い出を語った。

「小学校4年生の時、大好きな先生に『あなたが朝ドラのヒロインになった姿を見たいな』と言われたことがあって、私もそれをずっと夢みてきました。だから早く、直接先生に伝えたいですね」(髙石

松野トキをどう演じたいかという質問には、

「小泉セツさんの『思い出の記』という、セツさんの言葉が綴られた本を読ませていただいています。セツさんの人柄や日常、かわいらしさが描かれていて、大好きになりました。わたしもしっかり、皆様から愛していただけるように頑張りたい」(髙石

と意欲を見せた。

「ばけばけ」というタイトルは「化ける」が物語のテーマであることからつけられたという。急速に近代化が進む明治の日本は、人々の暮らしや価値観がどんどん「化けて」いく。トキはどのように化けていくのかについて、ふじきさんは「小泉セツさんのイメージをあえて持っていない」と話す。

「髙石さんのまんま、演じてほしいと思っています。髙石さんが演じる松野トキ、小泉セツを見てみたい、と思って髙石さんを選んだので。物語が進むにつれていろんな人物に出会い、そこで成長という意味での『化け』が見られたらうれしいです」(ふじき

また、松江の没落士族の娘に生まれて「うらめしい」半生を送ってきたヒロイン・松野トキの見どころを聞かれると、

「松野トキのモデルである小泉セツさんに抱く私のイメージは、人に対する思いやり。私はそこにとても魅力を感じました。夫であるハーンさんとの日常を描いていくこの作品の中で、些細な幸せや人に対する優しさを見ていただきたいと思います」(ふじき

と意気込みを語った。

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)役もすでにオーディションで決定しているという。クランクインは来春、島根・松江ロケでスタートする予定だ。

髙石さんより手書きのメッセージ。
【プロフィール】
たかいし・あかり
2002年12月19日、宮崎県出身。'19年より俳優活動を本格化。'21年に映画『ベイビーわるきゅーれ』で主演を務め話題となり、'23年には出演作品での演技が評価され、第15回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を獲得。主な出演作に、映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズ、『わたしの幸せな結婚』『新米記者トロッ子私がやらねば誰がやる!』『きみの色』、ドラマ「生き残った6人によると」「墜落JKと廃人教師」シリーズ、「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」など。NHKでは夜ドラ「わたしの一番最悪なともだち」に出演。今後、映画『スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナルハッキングゲーム』(11月1日)、映画『私にふさわしいホテル』(12月27日)、映画『遺書、公開』('25年1月31日)などの公開が控えている。

2025年度後期 連続テレビ小説「ばけばけ」

2025年秋 放送スタート
毎週月曜~土曜 総合 午前8:00~8:15ほか

【物語のあらすじ】
明治時代の松江。まつトキは、怪談話が好きな、ちょっと変わった女の子です。
松野家は上級士族の家系ですが、武士の時代が終わり、父が事業に乗り出すものの失敗。とても貧しい暮らしをすることになってしまいます。
世の中が目まぐるしく変わっていく中で、トキは時代に取り残されてしまった人々に囲まれて育ち、この生きにくい世の中をうらめしく思って過ごします。
極貧の生活が続き、どうしようもなくなったトキのもとに、ある仕事の話が舞い込んできます。
松江に新しくやってきた外国人英語教師の家の住み込み女中の仕事です。外国人が珍しい時代、世間からの偏見を受けることも覚悟の上で、トキは女中になることを決意します。その外国人教師はギリシャ出身のアイルランド人。
小さい頃に両親から見放されて育ち、親戚をたらい回しにされたあげく、アメリカに追いやられ、居場所を探し続けて日本に流れ着いたのでした。
トキは、初めは言葉が通じない苦労や文化の違いにも悩まされます。ところが、お互いの境遇が似ている事に気が付き、だんだんと心が通じるようになっていきます。しかも、2人とも怪談話が好きだったのです!
へんてこな人々に囲まれ、へんてこな2人が、夜な夜な怪談話を語り合うへんてこな暮らしが始まります――。

※実在の人物である小泉セツ(1868~1932)をモデルとしますが、大胆に再構成し、 登場人物名や団体名などは一部改称してフィクションとして描きます。原作はありません。

作:ふじきみつ彦
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史