漫画家のちばてつやさんは今年で85歳。ボクシングを題材にした『あしたのジョー』(1968年)やゴルフをテーマにした『あした天気になあれ』(1980年)など、ヒット作を多数手がけてきました。最近はコミック誌の連載『ひねもすのたり日記』(『ビッグコミック』[小学館]で連載中)で、戦争体験などの思い出や、日々思うことを描いています。
聞き手/遠田恵子
この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2024年7月号(6/17発売)より抜粋して紹介しています。
連載で伝える苦しい戦争体験
──デビュー後は、『あしたのジョー』『のたり松太郎』『あした天気になあれ』などスポーツ漫画の大ヒット作を生み出しました。『あしたのジョー』は、人気キャラクターの力石徹(主人公・矢吹丈の最大のライバル)が最期を迎えたとき、ファンの要望で実際に葬儀が行われたとか。
ちば 初めは「冗談はやめてよ」って言ったんです。でも寺山修司さんや、ファンの皆がやりたいと言っていると。僕も呼ばれて参加したら、平日の昼間なのに大勢の人が集まっているんです。大人も子どもも献花を持っていたり、黒い腕章を付けたり喪服を着たりしてね。中には泣いている人もいました。
漫画のキャラクターだけど、読者にとっては身近に生きていた人なんだ、それほど真剣に読んでくれてたんだと気が付いてね。本当にうれしかったし、それまで以上に心を込めて描くようになりました。身の引き締まる思いでしたね。
──現在はご自身の半生や日常をテーマにした『ひねもすのたり日記』を連載中ですね。毎回楽しみに拝読しています。戦時中の記憶や、最近ではコロナ禍、能登半島地震、ウクライナ紛争など、内容は多岐にわたりますね。
ちば 読んでくれてるの? うれしいな。この連載は思いついたことをマイペースでのんびりと作品にしています。戦争のことなど昔のこともふっと思い出しては描いています。自分にとってはすごくつらい体験だけど、残していきたいと思うんです。
──お若いころはストレスも大きかったとか。
ちば 仕事に追われ過ぎて「これ以上続けてたら死んじゃうな」と思ったこともありました。そのころ野球漫画の話がきて、野球を知らない僕に担当の編集者がキャッチボールを教えてくれたんです。実は僕はスポーツ音痴のインドア派。運動は好きじゃなかったんだけど、やっているうちに体中から湯気が立つほど温まった。新陳代謝が上がり、頭がすっきりして仕事がはかどったんです。「スランプだと思っていたら運動不足だったんだ」と気付きました。
それから弟たちを誘って野球チームを作ってね。漫画家の手塚治虫さん、松本零士さん、赤塚不二夫さん、皆に電話して試合をしてもらいました。それから60年以上続けています。
※この記事は2024年3月21日放送「ひねもすのたりと生きていく」を再構成したものです。
ちばてつやさんのお話の続きは月刊誌『ラジオ深夜便』7月号をご覧ください。8歳の時に一目で漫画のとりこになったこと、戦争で知った命のはかなさなどについて語っています。
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