ロウソクの光とLED、どっちが高効率?太陽が地球にいちばん近い1月が寒くなるわけは?日常にふと感じる疑問に答えるのが物理学の本当の使い方。そのだいを伝える本。

“中学3年生程度の学力の男”という意味で、自分のことを「中三階級」と称しています。岩波ジュニア新書もよく読みますが、今回の本はけっこう難しいですね。

著者は、オランダのライデン大学の名誉教授で、物理学を使っていろんな身近なことを解説しています。物理学に興味を持ってもらいたい!という思いが伝わってくる本です。

「アウトドアの法則」「光の法則」「家の中の法則」などの章があり、「アウトドア〜」には「ドライヤーのようなフェーン現象」という話が。

寒い山から吹きおりる風なのに、なぜ暖かくなるのか。この現象をわかりやすく説明していて、湿気をたっぷり含んだ風が山にあがると湿気が雨になり、気体が液体に変わるときに熱が出る。それが山をおりると、さらに暖かくなり、気温を上昇させる、ということだそう。冷蔵庫やエアコンのヒートポンプのようなことが自然界で起こっているのですね。

「役に立つ法則」の章には、「赤ちゃんに寒さは禁物」という話があります。

単純に身長が半分になると、表面積は4分の1、体重は8分の1に。つまり体重あたりの表面積は、大人より赤ちゃんのほうがずっと大きい。体の熱量は体重で決まり、冷却効果は表面積で決まるので、表面積の比率が大きい赤ちゃんは冷えやすい、というわけです。

計算式がいっぱいのページもありますが、改めて物理学を学び直したくなりました。

(NHKウイークリーステラ 2021年9月24日号より)

北海道出身。書評家・フリーライターとして活躍。近著に『私は本屋が好きでした』(太郎次郎社エディタス)。