去年、BSプレミアムで放送されると話題を集め、ギャラクシー賞奨励賞、ワールドメディアフェスティバル2024 銀賞、第40回ATP賞 奨励賞を受賞するなど、高い評価を受けた「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」。7月9日(火)より、本作が総合テレビのドラマ10にて放送されることが決定した。

原作は、作家・岸田奈美さんの同名エッセーで、ドラマではエッセーを元に、家族や関係者への取材によるエピソードや、独自の視点での脚色を加えて制作。主人公の作家・岸本七実を演じたのは、「不適切にもほどがある!」(TBS系)をはじめとした話題作への出演があいついでいる河合優実さんだ。放送開始を前に、話を聞いた。

【ドラマのあらすじ】
岸本七実(河合優実)は高校生。学校では、きらきらした一軍女子たちの輪に入れずに、今日も同じ三軍同士、天ヶ瀬環(福地桃子)と授業でペアを組まされていた。
いささか自意識をこじらせながら暮らしていたある日、母のひとみ(坂井真紀)から連絡が入る。ダウン症のある弟・草太(吉田葵)が万引きをしたかもしれないというのだ。七実の、ありえないことが次々と起こるてんやわんやな日々が続いていく……。
大好きだった父・耕助(錦戸亮)の死、あまりにマイペースな祖母・芳子(美保純)との生活など、さまざまな出来事と向き合い、必死で笑い飛ばし、時々涙しながら、七実は「作家」としてブレイク……する予定?

——地上波放送が決まった時のお気持ちをお聞かせください。

昨年の放送後、反響を受け、異例の早さで地上波放送が決定したとの知らせを聞いていました。どこにもない面白いドラマができたぞ! と感じていたので、より広く皆さんに届けられることがものすごくうれしいです。

——本作が連続ドラマ初主演でしたが、今から振り返ってみて、主人公・岸本七実を演じた時、どんな思いで演じていましたか? また、撮影時に印象的だった出来事をお聞かせください。

岸本七実の人生には、私の人生に起きなかったことが、たくさん起こります。その時間を力の限り想像するところからこの役が始まりましたが、不思議なことに、気づけば七実と自分とがぴったり重なってしまうような体感に変わっていました。

岸本七実の人物像、「かぞかぞ」という物語、ドラマが与えてくれた数々の素晴らしい出会い、制作現場が帯びていた熱、そして3か月をかけて1人の人になるという連続ドラマならではの体験……色々な歯車があの時自分の中でガチっとみ合って、奇跡的なものづくりの経験になったのだと思います。

感謝したい人がたくさんいる中で印象的だったことをひとつあげるとするならば、ダウン症のある弟・草太を演じた、吉田葵くんとの出会いです。透明に輝く心を持った、素晴らしい青年です。彼と密度の高い時間を過ごすことができ、まっすぐに心を通わせ合えたことが、自分がこの作品に取り組む中でとても大きなエネルギーになったと思います。

——本作出演にあたって、原作の岸田奈美さんとお話しされたそうですが、参考になったことはありましたか?

岸田奈美さんは本当に温かく大きな心を持った方で、現場にも何度も足を運んでくださいました。

作品に取り組む中で、奈美さんとご家族の人生の物語をお借りして、ドラマとして再構築し、自分が演じさせてもらうことに、多かれ少なかれ悩みや迷いがありました。ある時奈美さんと現場でお話しさせてもらう中で、私の迷いのオーラが恥ずかしながら漏れ出てしまったその瞬間、奈美さんが「別物ですからね〜っ」と、おっしゃいました。

原作とドラマは別物、現実と創作は別物、奈美さんと私は別物。幾重にも感じ取れるひとことを、さらりとぽろりと軽やかに私に受け渡してくれました。すごく救われたし、覚悟をもらった気持ちにもなりました。心から感謝しています。

——本作で父親役として出演した錦戸亮さんとは、大きな話題となった「不適切にもほどがある!」では夫婦役を演じられましたが、どのような感じでしたか? 錦戸さんと共演されて楽しかったこと、感じられたこと、得られたことなどがあればお聞かせください。

まさか、こんなに短い期間でまたご一緒できるとも、親子の次に夫婦とも、思ってもみなかったです。同じく宮藤官九郎さんの脚本で、錦戸さん主演のドラマ「ごめんね青春!」(TBS系)を10年前にテレビの前で食い入るように見ていた中学生の私に伝えたら、すごくびっくりすると思います。

どちらの現場でも、実は共演シーンの数がすごく多かったわけではなかったのですが、「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」の現場では、思い悩む私に、「そんなに考えこみすぎず、ちゃんと休み休みやりなね」と、父のような兄のような笑顔と優しさをくれました。

そんな言葉を軽やかにかけてくれながらも、面と向かって言葉を交わすシーンでは、なんというか、錦戸さんの瞳と肉体から父の愛情があふれてきて、その大きな熱を私も受け止めました。鮮明に覚えています。思慮深く、心ある方だと思っています。

——地上波ではじめて本作をご覧になる視聴者のみなさんに、ぜひメッセージをお願いいたします。

他者とのつながりがどんどん希薄になる今、岸本家が強く強く手をつなぎあって大笑いしながら明日へ進んでいく姿に、私は力をもらいました。

愉快で、たいへんで、楽しくて、どうしようもなくて、うるさくて、むかついて、おもろくて、そんなこんなで生きている人々の物語です。たとえ生きている境遇が違っても、観てくださる皆さんにとって、このドラマが、人生讃歌になったら良いなと思います。
良いドラマです!
一緒に笑いながら、ご覧ください!

【プロフィール】
かわい・ゆうみ

2000年12月19日、東京生まれ。'21年、'22年の公開映画(特に『由宇子の天秤』と『サマーフィルムにのって』)で数々の映画賞の新人賞を受賞。連続ドラマ初主演は「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」。'24年「不適切にもほどがある!」(TBS系)で大きな話題を集め、「RoOT / ルート」(テレビ東京系)では地上波ドラマ初主演を務めた。'25年4月より放送予定の連続テレビ小説「あんぱん」で、主人公・のぶの妹である朝田蘭子を演じることが決定している。


ドラマ10「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(全10回)

7月9日(火)スタート
毎週火曜 総合 午後10:00~10:45 

原作:岸田奈美
脚本・演出:大九明子
脚本:市之瀬浩子、鈴木史子
音楽:髙野正樹
出演:河合優実、坂井真紀、吉田葵、福地桃子、奥野瑛太/林遣都、古舘寛治、山田真歩/錦戸亮、美保純ほか

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