現在放送中のドラマ10「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」。去年、BSプレミアムで放送されると話題を集め、地上波での放送につながった。原作は、作家・岸田奈美さんの同名エッセー。ドラマは同作を元に、家族や関係者への取材によるエピソードや、独自の視点での脚色を加えて制作された。

劇中、主人公の岸本七実(河合優実)の母・岸本ひとみを演じたのが坂井真紀さんだ。ひとみは急な病で夫を亡くし、独りで七実とダウン症の息子・草太(吉田葵)を育てていたものの、自身も病に倒れ、車椅子が必要な生活になってしまう。地上波放送にあたり、坂井さんに、作品への思いや共演者との撮影エピソードなどを聞いた。


――地上波での放送が好評ですが、BSでの放送時からさらに多くの人からの反響があることについて、お気持ちをお聞かせください。

自分にとっても宝物のような作品ですし、地上波で放送をしていただけて、新たに目にしてくださる方が増え、うれしい感想もたくさん耳にして、嬉しいことばかりです。

——坂井さんが演じられた岸本ひとみは、息子がダウン症、夫が若くして亡くなり、自分も大病を患って半身不随になるという役どころです。どのような気持ちでひとみに入り込んでいきましたか? また、ひとみについて感じること、演じたことで得られたものなどがあればお聞かせください。

台本を繰り返し繰り返し読み、書かれていないこともたくさん想像して、(岸田)奈美さんと(ひとみのモデルである)ひろ実さんが書かれたものや、映像で動いている姿も見させていただきました。

これは作品に入る時にいつもやっていることですが、今回は、岸田家の皆さんが実在されていますので、岸田家の皆さんへの感謝の気持ちや尊敬の気持ちを常に心におくことを忘れないように心がけました。「岸田家ならどうする?」と考えることが、岸本家を作っていくうえでの大きなヒントにもなりました。

ひとみという役を演じてジェットコースターのような人生を擬似体験させていただき、家族のいとおしさ(面倒臭さも含めて)、揺るぎない「家族」というものの「大切」さが心に刻まれたように感じます。

――ひとみを演じるにあたって、岸田ひろ実さんともお話をされたそうですが、心に残ったことがあればお聞かせください。

岸田家の皆さんが撮影スタジオに遊びに来られて、ご挨拶だけさせていただきました。とにかく、笑顔のてきな方で、ひろ実さんの笑顔で、こちらの気持ちもぱっと明るくなって、ひとみという役を演じるための大きなエネルギーをいただいたように感じました。

――娘の七実を演じた河合優実さんは、本作のあと、「不適切にもほどがある!」(TBS系)で大注目の俳優になりました。河合さんへの印象や魅力をお聞かせください。

撮影に入る前から優実ちゃんが出演されている作品をよく目にしていて、「なんて素敵な女優さんなんだろう」と思っていました。「不適切にもほどがある!」のずっとずっと前から大注目していましたから(笑)。

静の中に、無限大の炎を持っていて、じわっと、そして強烈に心に突き刺さる存在感を放っていらっしゃると思います。

――共演した、夫・耕助役の錦戸亮さん、長男・草太役の吉田葵さん、七実の祖母・芳子役の美保純さんの印象や魅力についてお聞かせください。

錦戸くんは、以前ドラマでご一緒させていただきましたが、とにかく優しくて、現場のことを360度全方位を静かに見守って、的確な判断ができる方。私よりも実年齢は随分と下ですが、一家の大黒柱として頼れる存在です。私たちのパパです!

葵くんは、いつでもポジティブで、頑張り屋さん。葵くんが素直に言葉にしてくれる「嬉しい!」「美味おいしい!」「楽しい!」という言葉と気持ちは、私たちの大きな力になりました。

美保さんは、猛烈にチャーミングでかっこいい方。いつでも自由に軽やかに存在されていて、美保さんパワーで私も自然体にならせていただけちゃうんです。

――ドラマはいよいよ後半に突入します。楽しみにしている方々へのメッセージをお願いします!

まず、七実の成長をどうかあたたかく見守ってください。そして、草太の決断、母娘の在り方、岸本家の大丈夫じゃなさが、見てくださる方々への力になりますように。岸本家をどうぞよろしくお願いいたします。

【プロフィール】
さかい・まき

1970年、東京都生まれ。'92年、ドラマ「90日間トテナム・パブ」で女優デビュー。'96年に『ユーリ』で映画初出演以降、多くの映画・TVドラマ・舞台に出演。2008年、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』で第18回日本映画批評家大賞助演女優賞、第23回高崎映画祭特別賞を受賞。


ドラマ10「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(全10回)

毎週火曜 総合 午後10:00~10:45ほか

【ドラマのあらすじ】
岸本七実(河合優実)は高校生。学校では、きらきらした一軍女子たちの輪に入れずに、今日も同じ三軍同士、天ヶ瀬環(福地桃子)と授業でペアを組まされていた。
いささか自意識をこじらせながら暮らしていたある日、母のひとみ(坂井真紀)から連絡が入る。ダウン症のある弟・草太(吉田葵)が万引きをしたかもしれないというのだ。七実の、ありえないことが次々と起こるてんやわんやな日々が続いていく……。
大好きだった父・耕助(錦戸亮)の死、あまりにマイペースな祖母・芳子(美保純)との生活など、さまざまな出来事と向き合い、必死で笑い飛ばし、時々涙しながら、七実は「作家」としてブレイク……する予定?

原作:岸田奈美
脚本・演出:大九明子
脚本:市之瀬浩子、鈴木史子
音楽:髙野正樹
出演:河合優実、坂井真紀、吉田葵、福地桃子、奥野瑛太/林遣都、古舘寛治、山田真歩/錦戸亮、美保純ほか

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