連続テレビ小説「虎に翼」は、第10週(6月3日~)より、主人公・佐田さだともが裁判官を目指すという新たな展開を迎えます。

寅子役の伊藤沙莉さんに、戦時中の寅子たちを描いた第8週、第9週を振り返ってもらい、つらい展開も続く中、伊藤さんは寅子をどんな思いで演じていたのか伺いました。


——第8週は、伊藤さんから見てどんな週でしたか?

寅子にとっては理想や夢が打ち砕かれて、試練と挫折の連続。演じていてとてもつらかったです。

やっと弁護士になれたのに辞めることになったり、やっと恋をして相手を大事に思えるようになったところで戦争へ行ってしまったり。いろいろなものを得ると同時に、失っていく週でした。

1週目の第5回(4月5日放送)で、お母さんのはる(石田ゆり子)が予言のように「でも、(弁護士に)なれなかったときは?」「なれたとしても、うまくいかずその道をあきらめることになったときは?」と寅子に問いかけていましたが、まさしくその通りになって。

寅子としては一番悔しい展開だったと思います。つらいことも多かったですが、優三さん(仲野太賀)との愛が深まり、すごく幸せなときもありました。その幸せな時間があまりに短いという切なさも、物語としては好きなんですよね。

——優三を演じる仲野太賀さんとの掛け合いはいかがでしたか。

ご本人にも何度伝えたか分かりませんが、本当に優三さん役が太賀さんでよかったと心から思いましたし、互いにそうした言葉を掛け合ううちに、より絆が深まりました。太賀さんはお芝居についていろんな提案をしてくれながら、私の考えを整理させてもくれて。

特に第8週で寅子として演技が自然とできたのは、優三さんが太賀さんだったというのがとても大きかったです。改めて振り返ると、演じていてすごくいい時間でした。

——第43回(5月29日放送)では、優三の死を隠していたことを直言なおこと(岡部たかし)がざんげする場面もありました。

この週はもう、感情がぐちゃぐちゃで。このシーンでは、寅子の気持ちを整理したくて演出の方に相談したんです。

なかでも「でも、お父さんだけだったよ……家族で女子部に行っていいって言ってくれたのは」というセリフを言うときは、寅子としてあふれてくる感情が、喜怒哀楽のどこに属しているのか分からなくなって。

感情の焦点をどこにも合わせられなくなってしまったんです。そこで「答えなんか出そうと思わなくていいよ、もうぐちゃぐちゃのままでいい」とアドバイスをいただいて。その通りに、あえて特定の感情に焦点を定めずに演じたからこそ、違和感のない自然な表現ができたと感じています。

——このほかに、印象深かったシーンを教えてください。

第44回(5月30日放送)の、第1回(4月1日放送)につながる河原のシーン! 優三さんの幻影に「トラちゃんができるのは、トラちゃんの好きに生きることです」と改めて励まされて、それと同時に新しい日本国憲法を手にするという、終わりと始まりがリンクするところが物語の造りとしてもおもしろいと思いました。続く10週からも、楽しんでいただけたらうれしいです!


連続テレビ小説「虎に翼」

毎週月曜~土曜 総合 午前8:00~8:15、午後0:45~1:00(再放送)
※土曜日は1週間を振り返ります。
毎週月曜~金曜 NHKBS/BSP4K 午前 7:30~7:45

作:吉田恵里香
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
語り:尾野真千子
キャスト:伊藤沙莉 / 石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作 / 土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴 / 松山ケンイチ、小林薫ほか
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる、舟橋哲男、徳田祥子
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか