毎年冬から春にかけて我が家の庭先を彩ってくれる花、それがビオラです。見た目はパンジーによく似ていますが、花は小ぶりです。 紫や黄、赤やオレンジ、青や白など、色は鮮やか。色合いの違いに加えて、模様やグラデーションが入ったものなど、花の種類は実に豊富です。わいらしい花が咲きそろうと、 小さな音楽隊のようで心が和みます。

今シーズンも近所にある季節限定の花の販売所で苗を買いました。妻に教えてもらいながら、恥ずかしながら初めて自分の手で寄せ植えをしました。中心に濃い赤色を置き、その周りに、濃い紫色、紫のアクセントが入った黄色を植えてみました。土に肥料を混ぜて苗を植え込むだけの簡単な作業だったのですが、自分の手でやると愛着が増しますね。3色のビオラが肩を寄せ合う姿はほほ笑ましく 、玄関先に置いた寄せ植えに、毎朝「おはよう」と声をかけています。

ビオラは丈夫な花です。ある年の3月、大雪に見舞われたときは雪にすっかり埋もれてしまい、どうなることかと心配しました。しかし雪が解け始めると、「寒かった〜」といった風情で顔をのぞかせたのです。花も葉も元のまま。雪の間の黄色いビオラの花を見て、私はその生命力の強さに感動しました。

〈深夜便〉の毎月第3月曜日11時台「ふしぎな植物園」では、日本高山植物保護協会会長の岩科司さんに、植物にまつわる興味深いお話をしていただいています。お話を伺っていつも思うのは「植物は健気けなげでしたたか」ということ。厳しい環境でもあの手この手で生き延びて自分の子孫を残す。その健気さとしたたかさには頭が下がります。

ビオラも厳しい寒さに負けず花を咲かせるのは種を作り子孫を残すため。 ああそれなのに、人間の私は花が咲き終わるとすぐに摘んでしまうのです。そうしないと種に栄養が回ってしまい、花を次々と咲かせることができないから。罪悪感に少々胸が痛みますが、当のビオラはそんなことも何のその、今日もせっせと花を咲かせています。それがまた、何ともいとおしい!

(まつい・はるのぶ 第1・3月曜担当)

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