「ブギウギ」ついに、最終回……!! スズ子、みんな、これからも元気でいてね!!!

朝ドラの最終回を見届けるたびに、胸がぎゅーっといっぱいになってしまう朝ドラ見るるです。みなさんの心臓は、大丈夫ですか!?

さて今回は、そんな見るるが、「ブギウギ」制作統括を務めた福岡利武チーフ・プロデューサーを直撃! 最終回を迎えて、改めて気になるあれやこれについて、質問攻めにしちゃいました♪ 今回も少し長いですけど、「ブギウギ」の余韻に浸りながら、ぜひ読んでくださいね。


見るるの気になる! その1
「いちばん大変だったのはどこですか?」

──まずは、半年間の放送、おつかれさまでした。今の思いはいかがですか?

ありがとうございます。本当につかれました。いやあ、やっとここまで来て……と言いつつ、現時点(お話を聞いたのは3月中旬でした★)でまだすべての放送が終わったわけではないので、実感はわいていませんが(笑)。でも、いろいろ大変だったので、今は無事に撮影・編集を終えられてホッとしていますね。

──いろいろ大変と言いますと? 何が一番大変だったんでしょうか?

なんといっても、お芝居あり、ステージありというドラマでしたから、その準備や進行管理が大変でした。もちろん、それが「ブギウギ」の最大の特徴ではあったわけですが。

おかげさまで、視聴者の皆さんから「スズ子の歌と踊りで朝から元気づけられた」というお声を多数いただくことができたので、みんなで頑張ったかいがあったと思っていますよ。

──そんなに大変なステージシーンに、ここまでこだわった理由は、何だったのでしょう?

それは、歌手が主人公だといっておきながら、歌のシーンが3か月に1回とかでは、物足りないでしょう? しかも当時の歌手というのは、基本的には人前で、観客を入れたステージで歌を披露するものでした。それを、ドラマで再現したかったんです。

それに笠置シヅ子さんの歌をみていったときに、ドラマの中でやりたい曲がたくさん出てきてしまった。それらをドラマのプロットとともに並べていたら……結果、こういうことになったわけです。本当に、すてきな曲ばかりですからね!

──そうですね! 見るるにとっては、このドラマで初めて聴いた曲ばかりだったんですけど、「ラッパと娘」と「ジャングル・ブギー」は、何度もネットの動画で見て、すっかり覚えてしまいました。

僕もです(笑)。ステージシーンを切り出した動画を、何度も繰り返し見ています。これが不思議と何度見ても飽きないんですよ。すばらしいステージシーンになったと思います。ドラマが終わった後でもこうして楽しめるものがあるというのは、稀有なドラマですよね。ぜひ、皆さんにももう一度、と言わず、何度でも見返して「ブギウギ」の世界観を味わってほしいです。

 


見るるの気になる! その2
「実在したヒロインのドラマをどこまで描く?」

──ところで、朝ドラでは、作品によってはヒロインの晩年や他界までを描くものもありますよね。今回は、どこまでをドラマで描くんだろう?って思っていたんです。そしたら、スズ子が歌手を引退するところまで、という幕引きだったわけですけど……これは、どうやって決められたんですか?

ひとつには、モデルである笠置シヅ子さんへのリスペクトです。実際に、笠置さんも40代で歌をスパッとやめていらっしゃる。彼女にとって、それは大きな決断だったのだろうと思います。

今回、ドラマの後半はオリジナルで描いた部分も多かったのですが、スズ子もまた、ずっと歌を大切にしてきたヒロインでした。ですから、その歌をやめるというのが、このドラマのひとつの終着点かなと、自然に決まりましたね。

──モデルのいるドラマの場合、史実と脚色のさじ加減が、きっと難しいのだと思います。今回の場合はどうでしたか?

それは脚本の足立紳さんがドラマとして描きたいこと、その思いをキャッチしながら、という感じですね。僕は、特に現代とは異なる時代を舞台にしたドラマを作る場合、史実をそのまま再現するのではなく、このドラマを見る、今の時代を生きる人たちに向けた作劇にしたいと思うんです。

それと同じで、もちろんモデルの方には最大限のリスペクトをしますが、大切なのはドラマとして何を表現したいか。「ブギウギ」の場合は、足立さんが描きたいとおっしゃったスズ子の“義理人情”の心と、“家族”というテーマが軸でした。だから、いろいろなエピソードを、その軸に沿わせながら構築していったというわけです。

──「義理人情が大切」って、最終回でもスズ子が言ってましたね! 家族というテーマも、わかる気がします。愛子はともかく、ター坊や大野さん、小田島さん、はじめくん。血のつながりはなくても、いまスズ子の周りにいるみんなが、スズ子の家族なんだなと思えました。

まさにそれです。足立さんと、笠置シヅ子さんの資料を、自伝を含めいろいろ調べていく中で、彼女は確かに多くの家族を失ったけれど、同時に、たとえ血がつながっていなくても、いろいろな人と家族になれるような、そんな懐の深い人なのではないかと思うようになっていきました。だから、いろいろな人が家族になっていく人間関係を、このドラマではたくさん描きたかったんです。

──なるほど〜。確かに、「はな湯」の常連さんたちとか、梅丸少女歌劇団のみんなとか、「福来スズ子とその劇団」のメンバーとか、マネージャーの山下さんや坂口さんも、思えば、そういう感じでしたね! わ〜、懐かしい!!


見るるの気になる! その3
「戦時中が長く描かれたわけは……?」

──ちゃんと計算したわけではないですけど……今回、戦中を描いた朝ドラの中でも、その期間がずいぶんと長かったように思うんですけど。それはどうしてですか?

実は、当初の予定よりも、少し長くはなったんです。というのも、やっぱり、スズ子と愛助との出会い、そして2人の間で愛が育まれていく様子を、大切に描きたかったから。

戦争中、自由に歌が歌えなくなってつらいというのを描くだけなら、さっと時代を飛ばしてしまうこともできますけど、今回はそうはいかない。好きな歌が歌えない、世の中は厳しい、一方で、好きな人との愛は深まっていく幸せという矛盾、温度差。そんな中で、描きたいことが膨らんでいったということです。

──なんというか、これまでに見たことがない戦時中を見たという感じがしたんです。戦争中でも、人々の生活はもちろん、「想い」だって止まっているわけではないことを、目の当たりにした気がしました。そりゃ、世間はどうあれ、好きになったら想いは止められない!ですもんね。

まあ、そうですね(笑)。朝ドラで戦争を描くときは、どうしてもそのつらさが主眼に描かれますが、今回は、その期間がスズ子にとってはかけがえのない「愛の時間」だったわけですから、それが、ちょっとこれまでの朝ドラとは違って映ったのかもしれません。でも、あの愛の時間があったからこそ、戦後、日本を明るくする「東京ブギウギ」のような歌が生まれたのだと思います。


見るるの気になる! その4
「ずばり、福岡さんのお気に入りのシーンは?」

──この質問、たぶん困ると思うんですけど……でも、やっぱり気になるから聞いちゃうんですけど、福岡さんが「ブギウギ」の中でいちばん好きなシーンはどこですか?

それは、本当に困る質問です。どのシーンも、どの出演者も、すべて素晴らしかったですからね……。うーん(しばし悩む)。

個人的にはですね、第3週、梅丸少女歌劇団で、厳しい秋山から「才能ないならやめろ」と言われて落ち込む後輩を、スズ子が励ましているシーン……。
 

後輩「福来先輩は、なんで才能ないのに続けられるんですか?」

スズ子「そうそう才能ないのに……コラァ!! 先輩やぞ!」
 

──え、要は、ノリツッコミじゃないですか!?

そうそう(笑)。スズ子って、いつも、そういうところがあるでしょう? けっこう深刻な相談でもあると思うんですけど、そういうユーモアがある。そこが好きですね。ほかにも、それこそ戦争中に、夜中に空襲があって、愛助が焦って逃げなくちゃとスズ子を呼ぶのに、スズ子はトイレに入っていてなかなか出てこないというシーン……。

──あ、ありましたね!! あれは印象に残ってます! 命に関わる深刻なシーンのはずなのに、あ、こういうことあるかも、と思って笑っちゃいました(笑)。

あと、終盤のほうでも、取調室にカツ丼が運ばれてきて、誘拐犯に差し出したのかと思ったら、内藤剛志さん演じる刑事が食べ始めちゃうとか……。そういうクスッと笑えるシーンが好きです。ほかにもたくさんありましたね!

「ブギウギ」って、そういうユーモアに満ちたドラマだったと思うんですよね。すごく、スズ子が持っている明るさともマッチしていて、好きでしたね。しかも、そのユーモアの大切さを、俳優の皆さんたちもしっかり受け取って、熱演してくださった。それがチャーミングでよかったですよね。

──な、なんとも意外なセレクトでした……。あ、いえいえ、もちろん、いいんですけど!

ははは(笑)。ですからね、ドラマって、そういうふうにいろいろな楽しみ方をしていただくのが、僕はいいなと思っているんです。もちろん、作り手の側には伝えたいことがあってドラマを作っているわけですが、それをどういうふうに見ていただくのかは、視聴者の皆さんの自由なので。

楽しんで見ていただいて、何かしらが伝わっていれば、それがどんなささいなものでも、例えばさっきのスズ子のノリツッコミの切れ味のよさとかでも、うれしいんです。

足立さんが持っている世界観、このユーモアが、僕はすごく好きなんです。「ブギウギ」でも、それを大切にしたかったんですよ。

実はね、これに関連して面白かったことがあって。ドラマの脚本制作が始まる前、足立さんは、「これはカラッとしたドラマにしたい」っておっしゃったんです。義理と人情、家族の情愛を軸にして描きはするんだけど、決してジメジメした、ウェットな作品にはしたくないんですって。

一方、羽鳥善一のモデルである服部良一さんのお孫さんで、ドラマの音楽をつけていただいた作曲家の服部隆之*さんのところに、音楽のお願いをしにいったとき、服部さんは、「この朝ドラ『ブギウギ』では、ジメッとした曲は書きたくない。カラッとした音楽で包みたい!」とおっしゃったんです。

全くの偶然だったんですけど、これを聞いた時、歯車がガチっとハマった感じがしましたね。このドラマのツボはカラッした感じにすることだな!って思ったんですよ。

──わー!! そんなお話をうかがうと、また最初から音楽も聞き直したくなっちゃいます。というか、服部隆之さん、最終回にこっそり(?)出演されていたんですよね! そういうクリエイター同士の幸せな出会いって、私たちにとってもすごくありがたいし、感動しちゃいます……(じーん)。

*「隆」の字は、「生」の上に横棒が入る旧字体


見るるの気になる! その5
「趣里さんの最大の魅力は?」

──最後の質問です! 朝ドラのヒロインを無事、最後まで立派につとめあげた趣里さんについて。福岡さんから見て、その最大の魅力はどこですか?

また難しい質問を……。逆に、見るるさんはどこだと思いますか?

──そりゃあ、やっぱり、その成長ぶりです! なあんて、見るるが言うのもおこがましいんですけど。どんどん歌が上手くなっていったこともそうだし、最初はすごくれんな少女そのものだったのが、最後は、貫禄あるベテラン歌手であると同時に、しっかり口うるさい大阪のおばちゃんにもなっちゃって! 俳優さんってすごいなあ、とつくづく思いました。

そうですね、作品とともに大きくなっていったことは本当にすばらしいと思います。ステージでもお芝居でも、高いレベルまで、()(みつ)に、しかもこの作品に全身全霊でぶつかってくれたことが、本当にうれしかったです。

──でも、実は、趣里さんがスズ子をやると発表になったとき、少し意外だったんです。趣里さんのことは以前から知っていたけど、それまでの役では、ちょっと影があるというか、おとなしい役が多かったので。大きな口を開けて笑っている笠置シヅ子さんの写真を見るにつけ、なんかイメージと違う!?って。

朝ドラのオーディションでは、全く違う印象です。もちろん、それまでの役は知っていましたけど、最初から、明るい方だなと思いました。小さな体に明るいエネルギーが満ち満ちた人だと。

だから、そこは全然心配していなかったし、大きなポテンシャルを持っている人だと信じていました。そんななかで、最大の魅力ということで言えば……やっぱり、笑顔でしょうね。とっても素敵な笑顔ですから。

「ブギウギ」はいろいろな人の笑顔がたくさんあるドラマにしたいと思っていました。そして、実際いろいろな人の笑顔を、お茶の間に届けられたと思います。でも、中でもスズ子の笑顔が、最後まで輝いていたと思いませんか? だから、それが、趣里さんの最大の魅力だと思います。

──そうですね。スズ子の笑顔をたくさん見て、たくさん笑顔をもらった半年間でした。福岡さん、改めておつかれさまでした。そして、ありがとうございました!

"朝ドラ"を見るのが日課の覆面ライター、朝ドラ見る子の妹にして、ただいまライター修行中! 20代、いわゆるZ世代。若干(かなり!)オタク気質なところあり。
両親(60&70代・シニア夫婦)と姉(30代・本職ライター)と一緒に、朝ドラを見た感想を話し合うのが好き。