聞き手/嶋村由紀夫
この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2024年4月号(3/18発売)より抜粋して紹介しています。
宮田 ドイツの鉄の文化を勉強したくてハンブルク美術工芸博物館に行ったのですが、そこで日本の金属文化のすばらしさと改めて出会うことになったんです。
博物館には日本の金属作品がたくさん所蔵されていたのですが、保存状態がよくありませんでした。
金の象眼が施された立派な日本刀のつばが真っ赤にさび付いたままになっている。「科学的論理がしっかりしていないと、修復ができない」というのが彼らなりの真面目な理由です。
一方で、日本の技術はもっと経験的なもの。例えば大根おろしや米ぬか、菜種油や梅酢などで磨くときれいになることを知っているんです。
そこで日本のやり方を実践してみたら、真っ赤な鉄さびが落ちてビロードのような深みが出てきました。
象眼の金もやまぶき色によみがえる。彼らは非常に驚いて、日本流のやり方を教えることになりました。日本のすごさをドイツで感じたことは、人生が変わる節目になりました。
モチーフは佐渡のイルカ
――帰国後、イルカをモチーフにした「シュプリンゲン」シリーズを制作されるように。
宮田 昔、東京藝大を受験するために佐渡から渡った海で、一度だけイルカの大群に出会ったことがあります。新たな旅立ちを教えてくれたイルカを、20年近くたってふっと思い出したんですね。シュプリンゲンはドイツ語で「飛躍する、跳躍する」という意味。帰国後の「新しい出発」という思いを表現しました。
実は私のイルカには、目を入れていません。「目でものを言う」と言うくらい、目は表情がいちばん出る場所。その目をあえて入れないのは、親しみを感じるような“かわいいイルカ”にしたいとは思っていないからです。イルカはあくまで一つのきっかけ。見た人々がそれぞれの思いで、大きな世界観を感じてくれたらうれしいです。
「今が青春。貪欲に作品を作りたい」宮田亮平さんのお話の続きは月刊誌『ラジオ深夜便』4月号をご覧ください。
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