ドラマの主人公・まひろ(紫式部)の生涯のソウルメイトであり、のちに朝廷の最高権力者となる藤原道長。演じる柄本佑に、役への思いと作品への意気込み、そして吉高由里子ら共演者について話を聞いた。


●大石さん吉高さんの仲間に再び加えてもらえてうれしい

――大河ドラマ出演は今作で3作目。オファーを受けたお気持ちは?

数年前、大石静さん脚本のドラマ(「知らなくていいコト」日本テレビ系)で、吉高由里子さんとご一緒させていただいたんです。あのときのドラマ現場の雰囲気や吉高さんと一緒にお芝居することがとても楽しかったので、純粋にまた一緒にやりたいと思っていました。

でも、そのあとの吉高さん主演の大石さん作品には呼んでいただけなくて(笑)。ああ、僕は大石さんにはハマんなかったのかなあ、とひそかに落ち込んでいたんですが、大石さん吉高さんの仲間に再び加えていただけて本当にうれしかったです。

――台本を読んだご感想は?

面白いですね。ストーリーの進め方、要素の入れ方、それに大石さんならではの、ある種の軽さというかキャピキャピした感じ(笑)。紫式部というテーマが、大石さんの持っているポテンシャルとすごくうまく融合したんだと感じています。

道長については、僕もいろいろ調べたり本を読んだりしているんですが、時代考証とは別に、大石さんは道長という人物を本当にワクワクするように書いてくださっているので、自分はこれに乗っていけばいいんだなと思うんですよね。頭でっかちになることなく、感覚的に、ある種、現代の感覚を持って臨んでいこうと思っています。

だからこそ、大切になってくるのは所作しょさだなと思うんです。平安時代の貴族であるというところを、ちゃんと説得力をもって見せていきたいので。

――所作はかなり練習されましたか?

日々、練習しています。今、ああいう袖が長くて広い服を着ないじゃないですか。江戸時代や戦国のそれともまた違う。だから袖のさばきかた、歩き方、座り方、立ち方、全部練習しないと。全てが初めてなので……。

撮影中に衣装を着ている間は、そのままあちこち歩いてみたり、物を持ってみたりしながら慣れるようにしています。そうする間に、袖のさばき方なども自然に身についてくるだろうと思うので。しかし、当時の人たちはなんであんな服を着ていたのかなあ? ほんと大変なのに(笑)。

――撮影に入る前に京都に行かれたそうですが、印象に残った場所は?

まず、紫式部と道長のお墓参り。あとは平安神宮。御所の中にも入れていただいて、いろいろ案内していただきました。大河チームみんなで行けたのがよかったですね。けっこう長時間一緒にいて、いろいろ話すことができたので、チームワークが高まったと思います。

道長が書いた『御堂みどう関白かんぱく』(陽明文庫所蔵)も見せてもらいました。直筆が見られたのはよかったです。とても感じるところがありました。やっぱり字は強いですね。彼の字を見たことが、道長を演じる上ですごく役に立っている気がします。思ったよりも、字体がやわらかかった。鋭いというよりおおらかな感じがしましたね。

ドラマの中でも筆で書くシーンがあるんですが、実際に僕がやるのは、まだ字が下手な頃だけ(笑)。そのときに見た筆跡を、ちょっと意識しながら書いています。


●まひろの魅力は、吉高さんの魅力とほぼイコール

――道長を演じるうえで、監督や大石さんから何かリクエストはありましたか?

台本上の道長って、いわゆる権力者というイメージではなく、もっと人間味や奥行きがある人物なんです。たまたま頂上まで出世していくだけで悪いやつじゃない。ほかの人たちに比べると意外と地に足もついているし、庶民に寄り添う感覚も持っている。

でも、基本はのんびりやさんで、ぼーっとしているところのある“ザ・三男”っていう感じでやってくださいと言われた気がします。

道長の父・兼家かねいえ(段田安則)や、道隆みちたか(井浦新)、道兼みちかね(玉置玲央)の兄たちは権力に固執しますが、道長の場合は目指すものがちょっと違う。根っこにあるのは、実は、まひろ(吉高由里子)が望む世の中を俺がつくりあげてやる!みたいなものかなと。どんどん偉くなっていく道長の中でのモチベーションについて考えるんですけど、やっぱりそれが彼の根幹なんだろうなと思います。

――柄本さんにとって、まひろの魅力とは?

まひろの魅力は、ほぼイコール吉高さんの魅力ですね。いい感じに空気が読めないけど、わがままじゃない。天真爛漫で、大人の女性だけど少女性も失われていないというか。

吉高さんの演技は懐が深いんですよね。吉高さんに演技を引き出してもらっているところが大いにあるんです。僕は本番中でも思いついたらふと演技が止まってしまったり、リハーサルのときと演じ方を変えてしまうこともあるんですが、そういう時でも優しく受け止めてくれるんです。

それでいて、吉高さんはすごくコロコロと変わるんです。いたずらっぽい顔をしているときがあったかと思うと、凛としている時も。守ってあげたいと思う時もある。状況やシーンによって違うんです。大石さんの脚本を吉高さんは軽やかに歌っている、と感じますね。


●父や兄たちは本当の家族? 顔も似ているかも

――父・兼家と藤原3兄弟についてはどう思いますか?

僕の勝手な感想なんですけど、このキャスティング、相当親和性が高いですよね。段田さんと玉置さんとは2度目、井浦さんは初めての共演なんですが、なんか、本当の家族だといわれても、なくはないなというか(笑)。ちょっと顔も似ているような気がします。

長男・道隆は、偉大なお父さんみたいになりたいんですよね。でも、いざその立場になってもうまくいくとは限らない。次男の道兼は一家の影の部分を一身に背負っているような人。ある意味、道兼のような影があるから道隆は光の側にいられるという感じがします。

道長自身は引いていますよね。光の長男、影の次男を俯瞰で見ているわけです。家族だから愛情や思いはありますけど、三男だからこそ、兄には見えない世界が見えることもあるんだろうなって思ったりします。


●道長の同僚はイケメンぞろい!

――第3回(1月21日放送)からは、道長の同僚たちが登場しますね。

斉信ただのぶ役の金田哲さん、公任きんとう役の町田啓太さん、行成ゆきなり役の渡辺大知さんと僕で、「F4」(神尾葉子の漫画『花より男子』に出てくる、育ちのよいイケメン4人組の通称)って呼ばれているんです(笑)。藤原の4人組だから「F4」。でも、自分でいうのは気が引けるよ。

彼らとのシーンは、楽しくやらせていただいています。男同士なので、女性とのシーンとはまた違った雰囲気になりますし。みんな優しくて、そしてマイペースなのがいいみたいです。それぞれ、わーっと喋ったかと思うと、勝手にいなくなる感じ(笑)。

――「F4」の皆さんの役の印象は?

案外、本人と役のキャラクターがあっているのかなと思います。例えば、渡辺くんは真面目そうだし、金田さんはいい意味で八方美人な感じ(笑)。町田くんは人当たりがよくて社交的なんだけど、ちょっと悲しさがある。役にすごくフィットしていると思います。

――とても楽しみです。最後にこのドラマの注目ポイントを!

今回の大河は、全く違うラインが2本ある感じがしています。道長にとっては、まひろとのラインと政治のラインですね。この2つが歴史とどう関わってくるのか、演じている僕たちも楽しみですし、ご覧になる皆さんも楽しみつつ、大石さんの仕掛けに驚いていただけたらと思います。

大石さんは現代の感覚にフィットさせて書いているので、感情移入がしやすいんじゃないでしょうか。「え!? キャー!!」と楽しんで見ていただける作品になったらいいなと。吉高さんの魅力は十二分に発揮されているので、それはもう、観たらハマっちゃうこと間違いなしですけどね(笑)。