放送初回、衝撃的な事件によってこの世を去ったちやは。演じる国仲に、台本や役柄の印象、まひろほか家族への思いなどを聞いた。


――主人公・まひろの母・ちやはを演じられましたが、役の印象は?

紫式部のお母さんについては、ほとんど史料が残ってないんですよね。制作統括の内田ゆきチーフ・プロデューサーからも「役作りは国仲さんにお任せします」と言われてしまって。ですので、大石静さんが書かれた台本から受け取ったイメージを第一に考えるようにしました。ちやははすごく特徴のある母親ではありませんが、持ち前の明るさで、悩んだ顔も見せずに一生懸命に家族を支えているという強い印象を受けました。

――台本を読んで、どのような感想を持ちましたか?

舞台が平安時代なので、「これまでの時代劇ではない、ちょっと別の時代の作品」という意識があって。言葉や所作など難しいかもしれないなと思い込んでいたんです。それでも、台本を読んでみると、「あれ? なんだか、すんなり入ってくる」というのが第一印象でした。難しい言葉はなく、イメージが湧きやすくて「すごくおもしろい。もっと先を読みたい!」という思いに駆られましたね。

最初の「本読み」のとき、大石さんも「平安時代ということは難しく考えなくていいです。今の時代とそんなに変わらないですから」とおっしゃっていて、「ああ、そうなんだ」とに落ちたというか。時代が違っても、母親の子どもに対する愛情や家族に対する思いは変わらないのだろうなと思いました。

――ちやはをお芝居で表現するために、心がけたことはありますか?

最初、母親役だから年齢を重ねていることを意識しながら、セリフを丁寧にゆっくりと読んでいたんです。でも、そうすると台本のイメージよりも上の年齢に聞こえるようで……。なので、できるだけ明るい元気なお母さんをイメージして演じることにしました。

役作りについては委ねていただきましたので、特別に「こうしよう」とは考えず、まひろや太郎と楽しく時間を過ごすことで、その雰囲気が伝わればいいな、と思っていました。まひろ役の落井実結子ちゃんとは、ずっとおしゃべりしていましたね。「どんなお菓子が好き?」とか、「アイス、食べたいね」とか(笑)。

それからセットに入ったときは、慣れるまでは家の中をぐるぐると歩き回っていました。体にセットを馴染なじませるように……。

体で慣れておかないと、“連れてこられた人”のようになってしまうんです。この家を守ってきたのはお母さん、ちやはが全部を仕切っているはずだと感じたので、ここがこんなふうな作りになっていて、あそこに何があって、と部屋の構造をきちんと把握するようにしました。セットは結構広くて、ここが夫の為時ためときさんの書斎とか、「ここに寝るんですか!?」とか(笑)、ぐるぐる回っていましたね。

――セットの印象は?

本当にすばらしかったです! 「いつから、どれだけの手間をかけて作られたんだろう?」と驚くほど。貧しい家という設定なので豪華ではないのですが、傷んでいる家の細部、土が盛られた庭、庭には川も流れていて……と、本当に「すごいですね!」という言葉しか出てきませんでした。

だから撮影が終わってからも、みんなに「“大河”ってすごい」と言い回っています(笑)。ヘアメイクや衣裳もそう。ただ、私自身は華やかな衣裳は着られませんでしたが……。「平安時代だから、きらびやかな衣裳なのかな?」という期待もあったので、それは少し心残りです(笑)。

――夫である為時は世渡りがあまり上手じゃなく、ずっと官職に就けずにいます。家のことはちやはに任せきりなのに、しょうのところにも足を運んでいる。ちやははどう感じていたのでしょう?

その時代は、それが普通というか日常だったわけですよね。ただ、それを普通だと思う感覚は私にはよくわかりません。まひろの「なぜ父上は、家を空けて平気なの?」という問いかけに、「もう少し大人になればわかるわ」と答える場面。このセリフをどんな顔をして言えばいいのか、かなり悩みました。

監督さんなどに相談したら、「暗い表情だと深刻な問題があるの?と思わせてしまうので、『何でもないよ』というくらいの明るい感じで言ってください」と言われたのですが、やはりお芝居としては難しかったですね。そこまで深く考えていなかったのかもしれない。かといって寂しくなかったかというと違う。ふとした表情などでうまく表現できればと思って、あのシーンは何テイクか撮り直しました。

――ちやはは、娘の目の前で衝撃的な最期を迎えました。そのシーンではどんなことを考えましたか?

突然命を落としてしまう場面なので、「こういうふうに演じよう」とは全く考えていなくて、逆に、それまでの母子のシーンがすごく大事だなと思いました。まひろに何かを伝えるときの一つ一つのセリフ。ちやはが亡くなった後に、それらのセリフが生きてくるのかなと。だから絶命するシーンより、日常のまひろとのシーンを大事にしようとずっと考えていましたね。

ちやは自身には心残りがいっぱいあるでしょうが、それでも娘がられなくてよかったと、きっと思っているはず。そしてまひろは――母の死が深い心の傷にはなっていても――すごく強い女性になれる。小さなことには動じずに、悲しみを強さに変えて生きていってほしいと思っているはずです。

――子どもたちにかけておきたかった言葉もあったと思うのですが。

そうですね。たくさんあるけれど……、やはり「しっかり自分を持って生きていってほしい」でしょうか。ちゃんと信念を持って。男の子の太郎はこれからも自由に、ちょっぴり危なっかしくても(笑)、元気に生きていくんだろうなとは思います。

まひろに対しては同じ女性として、もっといろんなことを教えてあげたかっただろうなと思いますね。それでも、娘の意見というか、気持ちを尊重する母親だと思うので、「ああしなさい」「こうしなさい」ではなく、「思ったことをやってみなさい」という感じだったかもしれません。

まひろは母親似なんでしょうかね? 私に似ていてほしいかな。一緒に過ごした時間は長くはなかったけれど、ちょっとは私との思い出が影響していてくれればいいなと思っています。

――これから視聴者としてこのドラマをご覧になると思いますが、どこを楽しみにしていますか?

ちやはを手にかけた藤原ふじわらの道兼みちかねの一族と、まひろをはじめ家族がどんなやり取りをして、どんなつながり方をしていくんだろう?と考えると、ちょっとモヤモヤしてしまうところもあるのですが(笑)、これから物語がどんどん展開していくのを私も早く見たいですね。

顔合わせのとき、吉高由里子さんと「よろしくお願いします」とご挨拶して、「あぁ、吉高さんだ!」って心を躍らせたのに、それ以来、一度もお会いできなかったんですよ。共演シーンがなくて、すごく寂しかった(笑)。第2回からは吉高さんが登場して、成長したまひろをどのように演じてくださるのか、今からとても楽しみ。私が台本を読んだ時のおもしろさを考えると、視聴者の皆さんも絶対「次も、次も」と見たくなるはずですから。