このところ、空を見上げることが増えた気がしています。季節によって雲の形が変化したり、抜けるような青い空が美しい夕焼けになったり。夕焼けの色は日によって違って、それぞれに美しく、今日はどうかなと眺めて楽しんでいます。鳥たちの一糸乱れぬ集団飛行に感心したり、たまに仲間から外れた鳥がいたりするのも想像力をかきたてられます。自然界のものは毎日同じではないので、飽きることがありません。

特に夏。7月の七夕の日にはささに願いを込めた短冊を飾り、夜空に織姫、彦星、天の川を探すのも魅力的。星空も大好きです。

そして8月は花火! 打ち上げ花火は夏の風物詩で、昔は花火が打ち上がると「たまや〜、かぎや〜」と掛け声がかかったものですが、今は、大玉や中玉の花火が次々に打ち上げられる豪華なスターマインが人気で、「うわ〜」という歓声が花火会場にあふれます。

花火大会はどこも人気ですが、コロナ禍を経て4年ぶりの開催と聞き、人混みを覚悟して、諏訪湖の花火大会に行ってきました。

席を確保するため、明るいうちから待つこと数時間。最初の花火が上がると会場は大歓声。次々に夜空を彩る花火の豪華さは、これまで見たどの花火大会よりもすばらしかったです。花火師の方々も4年ぶりで、喜びと気合いが入ったのでしょうか。夜空いっぱいに広がる色とりどりで、形もさまざまな花火の花は、途切れることなく咲き続け、時を忘れて感動し、心が浄化される気がしました。

開催の日は8月15日。終戦後、鎮魂と人々を元気づけるために始まったそうで、祈りを託した花火大会だったのです。

私が空を見上げるのが好きなのも、切ないことが多い昨今の状況のなかで、祈りたい気持ちがあるのかもしれません。ウクライナの人々と、各地での災害で被災した方々、身近に増えている病気に苦しむ方々、多くの人の悲しみが少しでも少なくなりますように、そして、多くの人が下を向かず、顔を上にあげて、笑顔でいられますように……。

(すま・かつえ 第2・4火曜担当)

この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年10月号に掲載されたものです。

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