「ラジオ深夜便」アンカーのエッセーを「ステラnet」でも。今回は柴田祐規子アンカー。最新のエッセーは月刊誌『ラジオ深夜便』6月号で。

1月末、「日曜美術館」のロケで ざいてんまんぐうに行きました。夜8時すぎに着いた宿の玄関は広く、靴箱の向こう側には大浴場の暖簾のれんが見えます。むむむ。ここは修学旅行で泊まる旅館では? などと思っていたら、風呂上がりの一団がワイワイにぎやかに目の前を通り過ぎました。中学生でしょうか、パジャマ女子もいれば、Tシャツに短パン男子もいます。ホントに修学旅行生だ! と驚きつつ、なぜこの時期に? と不思議に思いました。

同じエレベーターに乗り合わせて気付きました。聞こえてくる会話からすると、どうやら韓国からやって来たよう。東京にも外国人観光客がずいぶん増えてきましたが、韓国からここは近い。学校からの旅行にはちょうどいい距離かもしれません。今でも部屋で枕投げをして、先生に叱られたりするのでしょうか。韓国の子どもにとっても太宰府天満宮は「学問の神様」なのでしょうか。いろいろ思いながら眠りにつきました。

翌日のロケは雲ひとつない晴天に。すがわらのみちざね公を慕って一夜のうちに都から飛んできたといわれる「とびうめ」のつぼみは、青空を背に今にも開きそうです。その飛梅だけでなく、境内にはたくさんの梅の木がありました。その数およそ6千本。地元では人生の節目に「献梅」をすると聞き、地域で愛されてきた天神様の姿がより身近に感じられました。梅の実がなると総出で収穫して梅干しにするのだとか。日々の食卓でも、天神様への感謝の気持ちを持つのでしょうね。

「太宰府天満宮に行くなら名物のお餅を食べてきたらいいよ。焼きたてでね」と太宰府に詳しい先輩に教わりました。ほう! 名物? なるほどあちこちに店があります。もち米などを使った皮であんを包み、型に入れて焼きあげたアツアツを目の前で包んでくれました。

自由に外出することもままならず、食べ物に困っていた道真公に、おばあさんが梅の枝に餅をさして、隙間からそっと差し入れたといういわれがある餅。とってもおいしかったです。ごちそうさまでした。

(しばた・ゆきこ 第4土曜担当)

※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年4月号に掲載されたものです。

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