「青のオーケストラ」 
4月9日(日)から、毎週日曜 Eテレ 午後5:00~5:25
再放送 4月13日(木)から、毎週木曜 Eテレ 午後7:20~7:45

※放送予定は変更になる場合があります。
【番組HP】https://www.nhk.jp/p/ts/3LMR2P87LQ/


いよいよ開幕した、「青のオーケストラ」。
控えめに言って「最高」じゃないですか!

前回の「極私的レビュー #0」で、私は「良作誕生の予感」とか書いていたけれど、ここで訂正させていただきます。

傑作誕生、の誤りでした。

もう、スライディング土下座せねば……。
(ネット上の反応でも、心を鷲掴みにされた方が多いという印象を受けました)

第1話「青野ハジメ」では、ヴァイオリンを弾くことをやめて、無気力な日々を過ごしていた中学3年生のあおはじめ(声:千葉翔也)が、同じ学年のヴァイオリン初心者・あきりつ(声:加隈亜衣)と出会います。しかしながら、お互いに対する印象は最悪で……、という流れでした。

えっ、裏番組の学園ロボットアニメを見てた!? いかんですね。そういう方は、ぜひ木曜日の再放送をチェックしてください。NHKプラスの見逃し配信もありますよ♪
https://plus.nhk.jp/watch/st/e1_2023040933505?cid=jp-3LMR2P87LQ

阿久井真さんによる原作漫画は、小学館漫画賞(少年向け部門)を受賞しているほど評価が高く、多くのファンにも愛されている作品だから、原作をリスペクトして、そのままアニメにしてもらえれば、問題なく良作になるという予想はできたのですが。
そのリスペクトっぷりが、半端なかったです。

©阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

一言で言うと「とても丁寧に描かれた、上質なアニメ」。冒頭部分では、青野くんが抱えている葛藤が、丹念に掘り下げられていて。それこそ、原作漫画のコマとコマの間にある空気感や人物の動き、感情までも表現しようとしているかのような印象でした。先ほど原作を「そのままアニメに」と書いて、確かに物語の流れはすごく原作に忠実なんだけれども、原作では青野くんと律っちゃんが出会った後に描かれていた、青野くんが「父・りゅう(声:置鮎龍太郎)への負の感情」を回想する場面が、出会いの前に全く違和感なく挿入されているなど、視聴者にストーリーをわかりやすく伝える工夫が駆使されていて。これぞ、プロのお仕事ですね。

音楽がテーマの物語だけに、事前情報にあった通り、その演奏家たちの豪華さたるや。もちろん25分のアニメの中で流れるわけだから楽曲はダイジェストにならざるをえないんだけど、作品の放送後には劇中の音楽部分だけを抽出した、このような動画も公開されたり。

♪メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」より第3楽章 演奏:東亮汰(ヴァイオリン)、髙木竜馬(ピアノ)

♪パガニーニ「24のカプリース」 演奏:ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)

至れり尽くせりでございます。

そして、私が個人的に感じたのは、音楽に負けないくらい「画作り」にも気合いが入っているなぁ、ということ。保健室の窓が少し開けられて、風に揺らぐカーテンの動きとか、差し込む光による陰影とか、人物が会話しているときに敢えて静物だけを見せるとか、まるで実写映画やドラマのような映像表現を重ねていく細やかさ。登場する人物それぞれの心情を、ときに力強く、ときに繊細に描いている原作ゆえに、そんな描写がとても大切にされているように感じました。

©阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

「ながら」ではなく、しっかりと作品と向き合うからこそ伝わってくる「奥の深さ」が、何よりも魅力的でしたね。鑑賞後の満ち足りた感じが半端ないです。

それにしても。青野くんと律っちゃんが出会わなかったら、当然「青のオーケストラ」という物語にはならないわけなんだけど、その「if」があったとしたら、彼らは、どんな人生を過ごしていたのだろう?と、思わず考えてしまいました。青野くんは、たとえ音楽の道に戻ったとしても、オーケストラにかかわるのは「ソリストとして」であろうし、律っちゃんも高校でヴァイオリンを続けたとしても、彼に感化されて飛躍的に成長することはなかっただろうし。
うーん。やはり2人の出会いは「運命」だったのかもしれない。

さて、次回4月16日に放送される第2話のサブタイトルは「秋音律子」。
最悪な形で出会った、青野一と秋音律子。武田先生(声:金子隼人)に頼まれた、律子へのヴァイオリンの指導は断ったものの、不意に耳に飛び込んでくる律子のつたない、しかしまっすぐな音が、青野の心をざわつかせる。そして、律子がクラスメートとの間である騒動を起こしたことから、青野は律子のヴァイオリンにかける思いを知って……。

おそらく主題となるのは、律っちゃんが抱えている「事情」。それが青野くんの葛藤に重なることで、この物語の序盤における「屈指の名シーン」につながっていくわけですね。

次回、絶対にお見逃しなく!!!


追記
今回のサブタイトルの由来は、去年10月のNHK音楽祭「青オケ」ミニ・コンサートのときに、東亮汰さんがクライスラーの「プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ」を弾いていたから。青野くんと律っちゃんが出会うまでの丁寧な心理描写は、アレグロ【速く】じゃなくてアダージョ【ゆっくりと】だと思うけれど、出会ってからはアレグロですね。

カツオ(一本釣り)漁師、長距離航路貨客船の料理人見習い、スキー・インストラクター、脚本家アシスタントとして働いた経験を持つ、元雑誌編集者。番組情報誌『NHKウイークリー ステラ』に長年かかわり、編集・インタビュー・撮影を担当した。趣味は、ライトノベルや漫画を読むこと、アニメ鑑賞。中学・高校時代は吹奏楽部のアルトサックス吹きで、スマホの中にはアニソンがいっぱい。

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