急に日本海が見たくなって、北日本を旅してきました。

羽越本線で日本海を北上、
冬の風景と海の幸を堪能

まず、JR上野駅から上越新幹線で新潟駅へ。国境の長いトンネルを抜けると、そこは小説『雪国』の世界が広がっています。2時間で到着し、即「のどぐろとにしんかずのこさけいくら弁当」を購入。特急いなほに乗ってえつ本線を北上します。村上駅を過ぎると海が近くなり、沖に浮かぶあわしまがきれいに見えます。日本海の眺めをおかずに、ここで取れる魚介たっぷりの駅弁を堪能して3時間半。まどろみながら秋田駅に到着しました。


五能線で雪の津軽へ、
人気のリゾートしらかみで

翌朝は秋田駅からリゾートしらかみに乗車。ひがししろからは海が荒れると波しぶきがかかるほど海際を北に進むのうを走ります。快速列車なので、特急より風景がゆったり見えますし、見どころのアナウンスも入ります。期待した荒々しい日本海は見られませんでしたが、青森県のあじさわまで、岩場や絶景が連続する海岸線を満喫しました。

鰺ケ沢駅を過ぎると、列車は広大な津軽平野をひた走ります。ここは私が学生時代に見た最上位の景色。地吹雪で車窓がホワイトアウトする中、近景に枯れたりんごの木々、その上に紫に煙る岩木山がぽっかり浮かぶ幻想的な風景が忘れられません。


弘南鉄道で〝ワニ″の歓迎と雪国の洗礼を受ける

イラスト/井竿真理子

そして4時間半で、内陸の城下町・ひろさきに到着。飛行機までの時間、こうなん鉄道に乗車することにしました。弘南鉄道は弘前駅―黒石駅を結ぶ弘南線、弘前駅から2キロほど離れた中央弘前駅―おおわにを結ぶ大鰐線の2路線あります。J R弘前駅から弘南線弘前駅の乗り換えは2分! 走りましたが間に合わず、中央弘前駅まで歩いて大鰐線に乗ることにしました。

歩き始めて気付いたのですが、ここは雪国。雪の歩道を歩くのはふだんの倍以上の時間がかかります。駅周辺にさしかかると、近くで「プワーン」と警笛が鳴り列車が発車……。弘前駅に引き返そうかとも考えましたが、おとなしく1時間待って次の大鰐駅行きに乗り込みました。終点の大鰐駅では巨大でピンク色のシュールなワニ・あじゃりん像がピースサインで出迎えてくれました。

急いでJ Rおう本線に乗って弘前駅に戻り、弘南線で黒石駅に向かいましたが、辺りは真っ暗で何も見えません。弘前での時間のロスが悔やまれます。

その後、雪がしんしんと降り続く中、バスで青森空港に着いたのですが、羽田行き最終便の出発が大幅に遅れたのです。なんとか帰宅したのは午前2時過ぎ。雪国では時間に余裕を持って行動することが大切だと身にしみた北日本の鉄道旅でした

宮村一夫(みやむら・かずお)

鉄道と駅弁をこよなく愛し、JR・私鉄ともに全線完乗。著書に『「乗り鉄」教授のとことん鉄道旅』(潮出版社)。

※この記事は、2022年3月16日放送「ラジオ深夜便」の「旅の達人~全国鉄道紀行」を再構成したものです。
聞き手/芳野潔アンカー

(月刊誌『ラジオ深夜便』2023年2月号より)

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