室町時代に花開いた能は、天下人・太閤秀吉が愛したことで大阪の地に深く根づきました。大阪城下にある山本能楽堂の正月の一こまを、山本佳誌枝さんが紹介します。
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正月、能楽堂は三間四方の舞台に特別な飾りをしつらえ、神をお迎えします。そして、新年の始まりは能舞台で行う謡い初め。一同、かみしもを着けて一声を発すると、辺りは厳かな空気に包まれます。

この時期によく演じるのは、その舞が神事に近いといわれる『翁』。また、古 来、めでたい席で演じられてきた『高砂』や勇壮な舞で知られる『石橋』、春が感じられる『羽衣』など。朗々と響く謡とともにすがすがしい、新たな一年の幕が開くのです。


「能にして能にあらず」といわれる『翁』は、まるで神聖な儀式のよう。

観世流発祥の地・糸井神社(奈良県)での謡い初め。張り詰めた空気の中、新年をことほぐ。

撮影/面高真琴(翁飾り、羽衣)、七咲友梨(石橋)、瀬野雅樹(客席)

山本 佳誌枝 (やまもと・よしえ)
公益財団法人山本能楽堂事務局長、「日本列島くらしのたより」の元リポーター。「開かれた能楽堂」を目指してさまざまな情報を発信。
(月刊誌『ラジオ深夜便』2023年1月号より)
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