これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
子どものいたずらを叱るときや怒ったとき、相手に向かって、つい口にしている言葉「コラ!」。でも、一体何語なのでしょうか? 確かに考えたこと、ありませんよね……。


答え:鹿児島弁の「ねえ」

詳しく教えてくれたのは、日本語の歴史や方言を研究する国立国語研究所の木部のぶ特任教授。

人が怒るときに口にしている「コラ」という言葉は、もともと九州の鹿児島県、特に薩摩半島あたりで、江戸時代から使われていた方言だと言います。しかし、使い方は現代と異なり、「ねえ」や「ちょっと」など、 呼びかけるときに使われる言葉でした。

実際、番組の調査でも、今でも鹿児島県民は、気軽な呼びかけの言葉として「コラ」を使っていることがわかりました。

鹿児島県の民謡「鹿児島おはら節」の歌詞(上)にも、「コラ」が登場している。
▼上の歌詞、実はこう言っています!
ここでの「コラコラ」は、「ねえねえ」や「ちょ っとちょっと」という呼びかけの意味。つまり、女性に声をかけ、ナンパしているシーンだという。

では、なぜそれが、怒るときの言葉になったのか?その有力な説が、明治初期に作られた「ら卒」という組織のメンバーの多くが鹿児島出身者だったためと言われています。

ら卒は、今の警察の基になった治安維持組織。当時、約3000人いたら卒のうち、実に2000人ほどが鹿児島出身者でした(鹿児島出身の西郷隆盛と、のちに初代警視総監になった同じく鹿児島出身の川路利良が、それぞれ1000人を連れてきたため)。

彼らがパトロールの際に市民に呼びかけとして使っていたのが「コラ」。
どうやら、それが、ら卒の存在感や強いイントネーションを持つ鹿児島弁の印象と相まって、「コラ」とは、人を怒るときに使う言葉だと、意味が変わって広まっていったと考えられるのです。

(NHKウイークリーステラ 2021年11月12日号より)