これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
〝お茶を飲む姿が似合うステキな大人〟に立候補した人に、チコちゃんがぶつけたのは、こんなギモンでした!


答え:もともとお茶は茶色だったから

詳しく教えてくれたのは、お茶の歴史と民俗学を研究している、静岡産業大学総合研究所の客員研究員・中村羊一郎さん。
いわく、「お茶がもともと茶色だったから」。その歴史をひもとくと……。

お茶が日本に伝わってきたのは、平安時代。ただし当時のお茶は、茶葉を蒸して固めたものを砕いて粉にし、それを煮出したもので、身分が高い人だけが飲むことができる高級品でした。

平安時代のお茶とは、蒸した茶葉を粉にして煮出し たもの。高級品であり、庶民には全くなじみのない 飲みものだった。

庶民がお茶を飲み始めるようになったのは鎌倉時代ごろ。ところが、このお茶は、摘んで干した茶葉を煮出しただけのもの。色は、赤と黒がまざったような色でした。

中村さんによると、 「これが布巾などにしみ込むと、布がいわゆる茶色に染まったことから〝茶色〟という言葉が生まれたのではないか」とのこと。

鎌倉時代に庶民に飲まれていたお茶。蒸す手間を省 き、干して乾燥させた茶葉を煮出して作っていた。 これで染まった布の色が「茶色」。

そして江戸時代になると、蒸した茶葉を手でもみながら乾燥させるという、新しい製法が生み出されます。これによってあの鮮やかな〝緑色のお茶〟が誕生!
やがて全国に広く普及し、徐々に「お茶といえば緑茶」が主流となっていきました。

江戸時代に生まれた“手もみ”製法によって、茶葉の緑色がそのまま抽出される「煎茶」が誕生。庶民にも愛され、広く普及する。
濃い緑色をした「抹茶」も、(平安時代のお茶と)同じころに日本に伝わってはいたが、やはり庶民には普及していなかった。しばらくの間、庶民にとって「お茶とは茶色いもの」だったのだ。

つまり、お茶の歴史の中で生まれた「茶色」という名称だけが、緑茶から連想される色に反して、そのまま残ったと考えられるそうです。

(NHKウイークリーステラ 2021年10月15日号より)