食の専門家が、日々の食卓のヒントを紹介する「ごはんの知恵袋」。今回は生でよし、煮てよし、焼いてよし! イタリア人が愛してやまないトマトのお話です。

イタリアの食材というと、頭に浮かぶのはオリーブオイルやバジル、それににんにくやとうがらし、そして何といってもトマト。トマトは毎日食べると病気知らずといわれるくらい。僕はすごい食材だと思っています。

おいしいトマトの見分け方

トマトはナポリが最高ですね。ナポリにあるベスビオ火山、あの山の周辺でできるベスビオトマト、これにオリーブオイルとにんにくとたかのつめで、シンプルだけどこれ以上ないトマトソースができます。僕がこのソースを初めて食べたのは30年くらい前。トマトソースのパスタを食べて感激しました。

日本でも最近、おいしいフルーツトマトがあちこちで作られていますね。ちなみにおいしいトマトの見分け方、知っていますか? 上から見て、白い筋が放射線状にスーッと入っているものがおいしい。甘くて味が濃いんです。

火を通しておいしいもの、生で食べておいしいもの、いろいろありますが、生で食べるなら、例えばカプレーゼ。南イタリア名産のモッツァレラチーズと、トマトを1センチくらいの厚さに切って重ね、軽く塩、こしょうし、アンチョビ、バジルをのせてオリーブオイルをかけます。これはワインにもビールにも合いますよ。


手軽なトマト缶で

今の時期、トマトと旬の野菜で作るのがカポナータ。これはトマトのホール缶を使います。トマトを潰して、パプリカやたまねぎ、なすなどを入れて、バジルやオレガノと煮込みます。これはシチリアの料理なので、砂糖が少し入ります。

イタリア料理はデザート以外には砂糖使いませんが、シチリアはイスラムの影響を受けているので、使うんですね。仕上げにバルサミコ酢を加えると、まさにイタリアン。そのまま前菜として食べてもいいし、肉や野菜の付け合わせにしてもおいしい。僕は冷ましたものをトーストしたパンにのせて食べるのが好きです。たっぷり作ってストックしておくと便利ですよ。

イラスト/ふるやますみ

基本のトマトソースもホール缶のトマトで作れます。たまねぎ3個、にんにく3片、オリーブオイル50ミリリットルくらいを鍋に入れ、たまねぎが焦げないよう1時間くらいごく弱火で炒めます。そこにトマトのホール缶を5缶ほど入れます。バジルを加え、塩、こしょうし、30〜40分煮込みます。最後に粗い目のこし器でこせば出来上がり。小分けにして冷凍しておけば、パスタやオムレツにも使えます。いろいろなトマトで毎日の食卓がにぎやかになりますね。
(2019年6月21日放送)

撮影/大山克己
片岡 護 (かたおか・まもる)

イタリアンレストラン・オーナーシェフ。2015年、「現代の名工」(厚生労働省)受賞。

(月刊誌『ラジオ深夜便』2020年8月号より)

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