これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
〝いい仕事〟をするため、ステキな大人に欠かせないのが「打ち合わせ」。今後の進め方や内容の構成などを事前にメンバー同士で話し合うことを言いますが、でも、なぜ「打つ」? 一体、何を打つというのでしょうか?


答え:雅楽の楽器を〝打って〟〝合わせて〟いるから

詳しく教えてくれたのは、民間では最も古い雅楽会である小野雅楽会の小野たか会長。

実は、「打ち合わせ」は、雅楽に由来する言葉だといいます。雅楽は、今から1200年以上前に成立した日本古来の音楽。貴族を中心に愛され、儀式やお祝いの席で演奏されてきました。

雅楽で使われる楽器は、大きく分けて3種類。主なメロディーを奏でる管楽器。
全体のリズムをとるげん楽器。そして、演奏のスピードを調整したり、合図を送ったりする打楽器(しょう、太鼓、かっなど)。特に「鞨鼓」は、独特でつかみづらい雅楽のリズムを管理するのに大切な役割を果たしています。

◆雅楽は、日本に古くからあった音楽と、 中国や朝鮮半島などのアジア諸国から 伝わってきた音楽が融合してできた日本最古の音楽文化。2009年にはユネス コ無形文化遺産に登録された。
◆打楽器の中でも、全体のリズムを管理し、オー ケストラでいう“指揮者”のような役割を果たしているのが、鼓の一種である「鞨鼓」。

例えば、雅楽には、演奏に合わせて舞を披露する演目があり、踊る人に合わせたリズムでの演奏が必要になります。
そこで、すべての楽器が集まる前に、打楽器だけで集まって、鞨鼓の打つリズムに合わせて楽器を打ち鳴らしながら、演奏の速さなどを決めておくのです。
つまり、 鞨鼓を〝打って〟リズムを〝合わせる〟。まさに「打ち合わせ」を行うというわけです。

これが転じて、現在では、何かを成功させるために前もって集まって意見を合わせておくことを、「打ち合わせ」というようになったのです。

(NHKウイークリーステラ 2021年9月3日号より)