2026年度前期連続テレビ小説「風、薫る」。6月3日、東京・渋谷のNHK放送センターで記者会見が行われ、見上愛とともにW主演を務めるもう一人のヒロインは上坂樹里に決定したことが発表された。
上坂は、2005年生まれの神奈川県出身。「ヒロイン誕生!ドラマチックなオンナたち」(2022年放送)で北林谷栄の人生を熱演し注目を集めたほか、特集ドラマ「生理のおじさんとその娘」(2023年放送)で主人公の娘・花を好演したことでも記憶に新しい。そんな上坂が、オーディション応募者数2410人の中からヒロインの座を射止めた。
舞台は、文明開化が急速に進み、西洋式の看護学が日本に伝わった明治。それぞれが生きづらさを抱える一ノ瀬りん(見上愛)と大家直美(上坂樹里)の2人が、当時まだあまり知られていなかった“看護”の世界に飛び込み、“最強のバディ”になって傷ついた人々を守ろうと奔走する冒険物語だ。
この時代に看護学を学び「トレインドナース(正規に訓練された看護師)」と呼ばれた、看護師のパイオニア的存在・大関和さんと鈴木雅さんをモチーフにする。奮闘する主人公・一ノ瀬りんと大家直美の姿に多くの人たちが勇気をもらえるはずだ。
W主演・上坂樹里「もうひとりの主人公を演じられるのは夢のよう」

会見では、見上がにこやかな笑顔で見守るなか、上坂は目に涙を浮かべながら登場。報道陣を前に、感極まりながらも、いまの心境を聞かれた上坂は、
「まさか、もうひとりの主人公を演じられるとは思っていなくて、いまこの場に立たせてもらえていることが夢のようです」と喜びを噛み締める。
オーディションの結果を聞いたときの気持ちを聞かれると、
「うれしいという気持ちが追いつかないくらい頭が真っ白になりました。『うそじゃないですか?』と何度も聞いてしまうくらい、信じられなくて……。結果を聞いた日から今日まで、ふとした瞬間にも思い出しては、『えっ』と自分の声が漏れ出るほどでした。いまだに夢を見ているかのようです」
そう語る上坂の横で、見上があたたかな眼差しを向ける。
「朝ドラのヒロインになることが夢と言い続けてきた」という上坂。
「今回、3回目の朝ドラオーディションで選ばれ、夢を叶えられたことは幸せです」とほほ笑む。
上坂は、明治を生きる人物や看護師役を演じるのは今回が初。
「すべてが初めてのことばかりなので、私が演じる大家直美とともに私自身も一緒に成長していけるように撮影に臨みたいです。そして、観てくださっている方に温かくて優しい風を毎朝お届けできるように精いっぱいがんばります!」と力を込めながら、意気込みを語った。
隣で聞いていた見上は、上坂に「一緒に楽しみましょうね!」と笑顔で声をかけ、上坂の緊張をほぐす場面も。早速、“バディ”ぶりを見せていた。
見上愛「上坂さんの第一印象は、“透明感”に驚きました」

主人公・一ノ瀬りんを演じる見上は、上坂の印象について聞かれ、
「初めてお会いしたときに、後ろの壁が透けて見えるんじゃないかなと思うくらいの透明感をお持ちの方で驚きました。そのときも緊張されていたのですが、佇まいに強い芯が見えて、きっと素敵に直美を演じられるんだろうなと感じましたし、私も一緒に引っ張ってもらいたいと思いました」と振り返る。
上坂とタッグを組むことについては、
「この作品は、主人公の一ノ瀬りんと大家直美の2人がお互いに手を取り合って成長していく物語。ときには成長できなかったりする瞬間があったとしても、手を離さずに2人一緒に歩んでいくストーリーになると思うので、上坂さんと支え合いながら約1年間の撮影を頑張りたいです」と意気込む。
「きっと一ノ瀬りんと大家直美もすぐにバディになれたわけではないと思うので、いまこうやってお互いに緊張している関係や、どうやったら仲良くなれるのかなと考えている時間もすごく大事だと思っています。今後、いろいろなお稽古に上坂さんと2人で挑戦していくので、無理せず自然なかたちで、撮影を通して役とともにお互いの“バディ感”を高めていけたらなと思っています」と決意を新たにしていた。
上坂「見上さんは太陽のような方」

記者から、ヒロイン決定をどのように知ることになったのかを聞かれた上坂は、
「2週間ほど前に、事務所の先輩である髙石あかりさんとマネージャーさんからサプライズで伝えられました。髙石さんからメッセージボードを渡されて、そこに『風、薫る 大家直美 上坂樹里』と書かれていて、そこで初めて知りました」と事務所内でのサプライズ発表があったことを明かす。
家族には伝えたか? という質問には、
「家族にはまだ伝えていない」と答えつつ、「実は、会見前に詳細は書かずに『会見に行ってきます』というメッセージと写真1枚のみを添えて、家族に送りました。いま記事を見たら、きっと驚いていると思います」と話し、会場を沸かせた。
また、2人に対して、撮影で楽しみにしていることを聞かれると、
少し悩みつつも、上坂は「まずはクラインクインに向けて、お稽古が始まるので精一杯向き合っていきたい」と回答。
一方、見上は、演じる一ノ瀬りんが栃木県那須地域の町で生まれた女性であることから、「那須地域など物語のゆかりの場所での撮影も待っていると思うので、実際の土地で感じながら撮影することもすごく楽しみです」と、撮影が待ち遠しい様子を見せた。
今回、上坂が演じる大家直美のキャラクターは、ずる賢さを持つしたたかな女性。
そんな人物を演じることについて、上坂は、
「私とは正反対の人物だと思います。ずる賢いところも含めて人間味があふれていて、そのなかにも強さや優しさがあります。これからいただく脚本を読んで、もっと直美という人物を知っていきたいです」と役への思いを吐露。
正反対のキャラクターを演じることについて、記者から「大丈夫なのか?」と不安が示されたが、すぐさま見上が「大丈夫だからここにいらっしゃるんです!」と、上坂に寄り添った。
見上の印象を聞かれた上坂は、
「太陽のような方だと思っています。初めてお会いしたときに、見上さんが優しく声をかけてくださって、これから一緒に私も頑張ろうと思いました。見上さんの胸を借りながら役を精いっぱい演じたいです」と、見上との共演をうれしそうに答えた。
今後お互いに何て呼び合うのか? という議題があがった際には、
上坂は「“愛さん”はどうですか?」と見上に提案。
見上は「さん付けは距離感を感じるので(笑)、ちゃん付けか呼び捨てでお願いします」とリクエストしつつも、「ゆっくりやっていきましょう」と、上坂にやさしく呼びかけた。
記者から、見上は上坂を何て呼ぶ? と聞かれ、
「まだ迷っていて……“じゅりちゃん”。もしくは“じゅったん”と呼ばれていることもあると聞いたので、どっちがよいかを後で相談します」と、はにかんだ。
制作統括・松園武大「見上愛さんとのバディを想像したときに、胸の高鳴りを感じたのが決め手」
制作統括の松園武大は、今回もう一人のヒロインに上坂を選出した理由について、次のように語った。
「まずはオーディションにご応募いただいた2410人のすべての方にこの場を借りてお礼を申し上げます。『風、薫る』に真剣な思いを届けてくださり、魅力あふれる素敵な方々ばかりでした。そのなかで、上坂樹里さんは随所にとんでもない輝きを放つ方でした。いろんな局面で、上坂さんのお芝居に釘付けになる瞬間がありました。凛とした佇まいと、その奥底にあるたくましさ。どんな苦境に立たされても、生き抜くことをあきらめない大家直美という人物像と重なって見えました。直美は生まれてすぐに親に捨てられ、ふるさとや心から家族と呼べる人がいないという設定。恵まれたとは言えない環境のなかで直美は生き抜くことをあきらめません。そのためには、多少のズルや嘘も厭わないそんな人物。上坂さんが演じる直美が自然と脳裏に浮かび、見上愛さん演じる一ノ瀬りんとのバディを想像したときに、ものすごく胸の高鳴りを感じました。このお2人なら、必ず、風を起こせると確信し、今回大家直美という役を上坂さんにお願いしました」
撮影予定は今年の9月ごろからという。見上愛×上坂樹里のW主演で贈る朝ドラ「風、薫る」の放送は来春放送スタート。
2人の主人公がどんな風を巻き起こすのか……乞うご期待!
脚本・吉澤智子さんのメッセージ

母親に捨てられ家族がおらず、生きていく為には多少の嘘やズルも厭わない。
もう一人の主人公・大家直美はそんなに清くもあんまり正しくもない、ある意味ヒロインらしくないリアルな女性。
そんな直美を見つけたいと臨んだ本番さながらの演技オーディション。
「あぁ、こんな直美がいい。いやいや、こっちの直美もありかもしれない」
思いを巡らせ迷いに迷い、少しでも頭を働かせようとコーヒーばかり飲んでいた私は、彼女が現れるなりモニターに釘付けになりました。
「そうか、この子が直美なのか」
凛とした美しい佇まいの一方で、哀しいシーンにも感じられる根底にある明るい逞しさ。
身寄りのない女性が生きることが、現代とは比較にならない程困難だった明治という時代、ここにいる直美なら生き抜いていける。
台本を超え上坂樹里さんの持つ存在感そのものに、そう信じさせられてしまったのです。
オーディションが終わる頃、見上さん演じるりんと2人でニヤリと不敵に笑いあう姿が浮かんできました。
それが何のシーンなのかは私にもまださっぱりわかりません。
だた、とても気持ちのいい風が吹いていました。
よしざわ・ともこ
神奈川県生まれ。明治学院大学社会学部卒業後、CATVアナウンサー兼記者や新聞社などで勤務。2008年に脚本家デビュー。コメディーからホームドラマ、医療ドラマ、時代劇など幅広いジャンルを手掛ける。コミカルかつ繊細な人物描写には定評があり、特に女性のリアルな本音を感じさせる台詞が共感を得ている。
これまでの主な執筆作
ドラマ「広重ぶるう」「幸運なひと」「まんぞくまんぞく」「ダルマさんが笑った。」「Dr.DMAT」「あなたのことはそれほど」「初めて恋をした日に読む話」「病室で念仏を唱えないでください」ほか多数
既発表 主人公・一ノ瀬りん役/見上愛 ※連続テレビ小説初出演

栃木県那須地域の山すその町で、元家老の家に長女として生まれる。物心ついた頃には一家は帰農していて、細やかではあるが不自由のない暮らしに幸せを感じていた。しかしある日、コレラが町でまん延し、りんの人生の歯車が狂い始める―。
「己の良心に恥じないか」が判断基準。育ちは良いが天真らんまんで視野が狭くなりがち。いざという時に潔く思い切った行動力がある。生活のためにナースになるが、やがてナースの地位向上、病人が病を抱えながら、ありのまま生きられる世の中を見るのが夢らしきものになっていく。
みかみ・あい
2000年生まれ。東京都出身。2019年俳優デビュー。2021年、よるドラ「きれいのくに」(NHK)で容姿にコンプレックスを持つ高校生役を演じ、注目を浴びる。同年、映画『衝動』で初主演を果たし、2022年ドラマイズム「liar」(MBS)でテレビドラマ初主演。2024年は、大河ドラマ「光る君へ」(NHK)で藤原道長の娘・藤原彰子を演じ、大きな反響を得たほか、主演を務めた映画『不死身ラヴァーズ』も公開された。近年の主な出演作に、Netflixシリーズ「恋愛バトルロワイヤル」、ドラマ「マイダイアリー」(ABCテレビ)、「119エマージェンシーコール」(フジテレビ)、ほか多数。
主人公・大家直美役/上坂樹里 ※連続テレビ小説初出演

生後まもなく母親によって捨てられ、物心がついた頃にはキリスト教の牧師に育てられていた。その後、教会を転々としてきたので「家族」と呼べる存在はいない。幼い頃から何も悪いことをしていないのに貧しく恵まれない人に多く接して来たため、神も人も心から信じきれないところがある。
直美にとって信じられるのは自分の力と運。恥などいくらかいてもかまわない。プライドなど役に立たない暮らしだったため、目的のためには多少のうそやズルをもいとわない柔軟さとしたたかさがある。
こうさか・じゅり
2005年生まれ。神奈川県出身。2021年「ミスセブンティーン2021」でSeventeen専属モデルとなり、俳優デビューを果たす。2022年「ヒロイン誕生!ドラマチックなオンナたち」(NHK)で北林谷栄の壮絶な人生を演じ、注目を浴びる。2023年、「生理のおじさんとその娘」でオーディションからヒロインに抜てきされ、大きな反響を得たほか、2025年日曜劇場「御上先生」(TBSテレビ)でレギュラー生徒・東雲温役を演じ、最も注目を集める若手俳優のひとり。
明治18(1885)年、日本で初めて看護婦の養成所が誕生したのを皮切りに、次々と養成所が生まれた。そのうちの1つに、物語の主人公・一ノ瀬りん(見上愛)と大家直美(上坂樹里)は運命に誘われるように入所する。不運が重なり若くしてシングルマザーになった、りん。生まれてすぐ親に捨てられ、教会で保護されて育った直美。養成所に集った同級生たちは、それぞれに複雑な事情を抱えていた。手探りではじまった看護教育を受けながら、彼女たちは「看護とは何か?」「患者と向き合うとはどういうことか?」ということに向き合っていく。
りんと直美は、鹿鳴館の華といわれた大山捨松や明六社にも所属した商人・清水卯三郎らと出会い、明治の新しい風を感じながら、強き者と弱き者が混在する“社会”を知り、刻々と変わり続けていく社会の中で“自分らしく幸せに生きること”を模索していく。
養成所卒業後、2人は同じ大学病院でトレインドナースとしてデビュー。まだ理解を得られていない看護の仕事を確立するために奮闘の日々を送っていたが、りんは程なくして職場を追われることに。一方、アメリカ留学を夢見る直美は渡航直前に思わぬできごとに巻き込まれ……。
やがて、コレラや赤痢などさまざまな疫病が全国的に猛威をふるい始める。一度は離れ離れになった2人だったが、再び手を取り、疫病という大敵に立ち向かっていく。
2026年度前期 連続テレビ小説「風、薫る」
2026年春 放送スタート
毎週月曜~土曜 総合 午前8:00~8:15ほか
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介、葛西勇也
演出:佐々木善春、橋本万葉、新田真三、松本仁志ほか