6月21日(土)スタートの土曜ドラマ「ひとりでしにたい」(全6回)は、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞したカレー沢薫による同名漫画が原作。「笑って読める終活ギャグマンガ」と称された漫画作品を、大河ドラマ「青天をけ」、連続テレビ小説「あさが来た」の大森美香が脚本化した、前代未聞の社会派「終活」コメディだ。

ひょんなことから終活について考え始める30代後半独身の主人公・山口鳴海を演じるのは、綾瀬はるか。「死にどう向き合うべきか」という問いに体当たりで挑む鳴海を、綾瀬がユーモアたっぷりに演じる。

5月28日に開催された取材会には、主演の綾瀬と、制作統括の高城朝子プロデューサーが登壇。誰もが避けられない「終活」「老後」というテーマをこれまでにない形で描いた本作への思いを語った。


死について考えることで、よりよく生きようという気持ちが湧いてきました

本作は、シリアスなイメージを持たれがちな「終活」をコメディドラマとして描くという異色かつ意欲作。30代後半独身の山口鳴海(綾瀬はるか)が、伯母の孤独死をきっかけに、「終活」について考え始めるという物語だ。鳴海は、世間の常識に傷つき、他の誰かと比べて落ち込みながらも、よりよく死ぬためによりよく生きる方法を懸命に模索していく。綾瀬は、原作の漫画を読んだ時、共感できる部分が多いと感じたという。

綾瀬 原作の漫画を読んだのですが、共感できることがとても多かったんです。30代後半の女性が抱く不安や、自分の考えと世間の見方とのギャップへの悩みなど、漫画を読みながら、「私もこんな気持ちになった時があったな」と思うことが多くて。何より、鳴海の表情がすごく魅力的なんです! 推し活でキラキラした表情をしたかと思えば、突然鬼のような形相になったりと、その奮闘ぶりに強くひかれました。大森美香さんが書かれた脚本も読ませていただいて、「これなら演じてみたい」と思ったんです。

高城プロデューサーは、綾瀬を主演に起用したいちばんの理由として、「常にハッピーなオーラが出ている」ということを挙げた。

高城 これまでのドラマで描かれる独身女性は、自虐的に描かれることが多かったように思います。でも本作の鳴海は、ひとりでいることを心から楽しんで、自らひとりでいることを選んでいる人物。誰から見ても「あの人、楽しそうだな」と思ってもらえる人に演じてほしいと思ったんです。
そういう意味でいうと、綾瀬さんは常にハッピーなオーラが出ている人。「綾瀬さんが演じてくださったなら、絶対にかわいそうには見えないぞ!」と確信して、お願いしました。

第1話で、「若いころ“自由”と思っていたものは、歳をとると“孤独”と“不安”に変わってしまうんだ」という鳴海のセリフが出てくる。鳴海と同世代の綾瀬にはどう響いたのだろうか。

綾瀬 私がちゃんと死を意識したのは、鳴海と同じ35歳あたりからだったと思います。ちょうどその頃、身近な人が亡くなったのがきっかけでした。それまで「人生は無限大」かのようにぼんやり構えていたのですが、「そうか、人って本当に死んじゃうんだ」と初めて認識したタイミングだったように思います。
鳴海のセリフは、いまだに私の中でモヤモヤしている感情を、ちゃんと言葉にして具現化してくれた言葉ですね。「やっぱりそうだよね」と深く共感しました。

鳴海には推しのアイドルがいるが、綾瀬は、推しがいない人生を歩んできたという。

綾瀬 私、これまで推しを持ったことがない人生だったんです。でも鳴海を演じていると、「推しがいる生活ってこんなに楽しいんだ」と教えられました。ちなみに、鳴海の同僚・松岡陽子役の岸本鮎佳さんはプロレス推しだそうで、彼女にはよく「私も推しを探してみようかな」と話しています。私が推し活をするなら……、食べ物を推したいですね! 朝ごはんがおいしいところを見つける“朝推し活”とか(笑)」


ドラマならではの斬新な場面も

本作は、原作のコミカルな雰囲気はそのままに、ドラマならではの斬新な場面も至る所に散りばめられている。その一つが、推しアイドルの動画に合わせて、鳴海が歌って踊るという場面だ。もちろん、綾瀬自身が振り付けを覚え、踊りを披露している。

綾瀬 これまでダンス経験はそんなにないんですけど、キャッチーで覚えやすい曲だったので、練習の時から楽しくできました。途中で、鳴海の分身も加わって3人で踊りはじめるのですが、実は、右側の鳴海が個人的に面白い動きをしているので、ぜひ注目してほしいです。「自由に動いていいです」と言われて演じたのですが、改めて映像で見てみると我ながらすごく楽しそうでした。ちゃんとしたダンスにはなってないんですけどね(笑)。

綾瀬は撮影にあたって、付せんをたくさん貼った原作漫画を持ち込んで臨んだという。

綾瀬 脚本が、原作にほぼ忠実に描かれていたので、「この時は、原作の鳴海はどういう表情だったかな」と確認しながら演じました。原作を現場に持っていって「この場面の鳴海の顔、原作ではこうだったんです」と相談したりしましたね。とはいえ、漫画では成立する表情を、ドラマでうまくいくかどうかは分かりません。どの程度取り入れればいいのだろうと、試行錯誤しながら演じました。

高城 綾瀬さん、「私、もっと面白い顔できる!」とおっしゃるんですよ。そんなことを言う女優さん、初めてでしたね(笑)。


前向きにポジティブに、「終活」を捉える

本作は、よりよく死ぬために七転八倒する鳴海の姿を通じて、「死」にまつわるあれこれを笑いながら学ぶことができるドラマでもある。

綾瀬 死について考え、それを受け入れることで、よりよく生きていこうという気持ちが湧いてきました。まず自分の足で立って楽しもう、ひとりでちゃんと生きようと。鳴海を演じることで、鳴海のようにもっと人生を楽しもうと思えたように思います。
最期は「あ〜楽しかった。はははっ!」っていうのが最高ですよね。笑って迎えられたらいいなと思います。

高城プロデューサーは、このドラマが死や老後について知るきっかけとなり、怖さが軽減すればいいと考えている。

高城 死や老後などは誰しも、分からないことって怖いですよね? ですが理解が深まれば、何かしら準備ができるし、怖くもなくなると思うんです。全6回のドラマの中では、死ぬまでに起こり得る問題に、鳴海が明るく立ち向かっていく様が描かれます。「見れば死ぬのが怖くなくなる」とは言いませんが、分からなかったものがちょっと分かって、ちょっと明るい気持ちになれるはず。そんなドラマになっていると思います。


土曜ドラマ「ひとりでしにたい」(全6回)

6月21日(土)放送スタート

毎週土曜 総合 午後10:00〜10:45
毎週水曜 総合 午前0:35〜1:20 ※火曜深夜(再放送)

【あらすじ】
第1話
山口鳴海(綾瀬はるか)は仕事に、趣味の推し活にと、独身生活をおうしていた。しかし、憧れていたキャリアウーマンの伯母・光子(山口紗弥加)が思いもよらない孤独死をしたことをきっかけに、焦って婚活を始めるが年齢の壁によってあえなく撃沈。さらに年下の同僚・那須田優弥(佐野勇斗)から「結婚すれば安心って昭和の発想ですよね?」とバッサリ切り捨てられる。そこで鳴海は「婚活」から180度方針転換して「終活」について考え始めるが……。

第2話
「終活」について考え始めた鳴海(綾瀬はるか)は、「自分より、親の老後が先にやってくる」事に気がつく。もし親に介護が必要になったら自分が世話を? 仕事をしながら介護できるのか? 亡くなった場合の葬儀代は? それら全てを自分が背負わなければならなくなったとしたら……自分の終活どころではない! そこで鳴海は、まず父・和夫(國村隼)と母・雅子(松坂慶子)に「終活」を始めてもらおうと、ある作戦を思いつく。そのために同僚・那須田(佐野勇斗)を連れて実家を訪れるが……。

原作:カレー沢薫『ひとりでしにたい』
脚本:大森美香
音楽:パスカルズ
主題歌:椎名林檎「芒に月」
主演:綾瀬はるか、佐野勇斗、山口紗弥加、小関裕太、恒松祐里、満島真之介/麿赤兒、岸本鮎佳、藤間爽子、小南満佑子、コウメ太夫/國村隼、松坂慶子
制作統括:高城朝子(テレビマンユニオン)、尾崎裕和(NHK)
演出:石井永二(テレビマンユニオン)、小林直希(テレビマンユニオン)、熊坂出