5月29日、NHK大阪放送局で2026年度後期連続テレビ小説の制作・主演発表会見が行われた。115作目となる連続テレビ小説のタイトルは「ブラッサム」。明治、大正、昭和を駆け抜け、自由を求め続けた作家・宇野千代をモデルに、彼女の生きざまを大胆に再構成。フィクションとして描くオリジナルの物語だ。
ヒロインを演じるのは、石橋静河。今回ヒロインオーディションは開かれず、ドラマ10「燕は戻ってこない」での熱演も記憶に新しい石橋が、直接オファーされての起用となった。
山口県の岩国に生まれ、23歳で懸賞小説に応募し、当選。作家としてデビューする。上京し、作家として活躍しながら、1936年には、ファッション雑誌「スタイル」を創刊。エッセイやコラムなど人気を博すも、戦争の激化とともに廃刊を余儀なくされる。終戦後、「スタイル」を復活させ、さらに着物のデザインや販売も始める。1957年に代表作である「おはん」が野間文芸賞を受賞。85歳で自伝的小説「生きて行く私」を刊行し、100万部を超えるベストセラーとなる。
主人公・葉野珠(石橋静河)は、「小説を書きたい!」という幼き日の夢をあきらめず、故郷を飛び出して上京。魅力的な人々との出会いによって夢を手繰り寄せるものの、時代は激動の大正・昭和へ。震災・戦争、結婚・離婚、そして倒産・借金とさまざまな困難が押し寄せるなか、珠は書くことをやめず、やがて一流作家としての地位を確立していく。どんな苦難の中にいても幸せのかけらを見つけ出すパワフルでチャーミングな珠の人生は、現代を生きる人々の背中を力強く押してくれるだろう。
主演・石橋静河「朝ドラヒロインのオファーは青天の霹靂でした」

晴れやかな表情で登場した石橋。オファーを受けた際のことを聞かれ、
「初めて聞いたときは驚いて……。青天の霹靂というのは、こういうことなのだと思いました。(会場に集まった多くの記者を見て)これだけたくさんの方に集まっていただいて、現実だったんだと。まさかヒロインになることは想像していない未来だったので、人生は不思議だなと思っています」
と、ようやく実感が湧いてきたという様子。
また、意気込みを聞かれた石橋は、
「いま宇野千代さんが書かれた本を読み漁っている段階なのですが、宇野さんのことを知れば知るほど素敵な人だなと思います。そんな宇野さんをモデルにした珠を、これから1年以上、長い時間をかけて、キャスト・スタッフの方と掘り下げていけるのかと思うと、本当にうれしいです。全国の皆さんが『朝から良いものを観たな~。よしっ!』と思ってもらえる作品にしたいですね」
と気合十分!
宇野の作品を読んで役作りに生かしたいことを聞かれると、
「宇野さんはたくさんのエッセイや小説を残されているので、まだ全ての作品を読みきれていませんが、秘書の方が毎朝宇野さんに『きょうの調子はどうですか?』と聞くと、宇野さんはいつも『最高です!』と答えていたそうです。病院で入院していたときも変わらずだったみたいで。まずそこから見習っていきたいです。すごくポジティブでいいですよね。私も毎朝起きたら『最高です!』と言って準備していこうと思います」
司会から、いまの気分は? と聞かれた石橋は、
「最高です!」とすぐさま返答し、会場を沸かせた。
今回、「ブラッサム」で主演に抜擢された石橋。「半分、青い。」以来の朝ドラ出演については次のように語った。
「『半分、青い。』のときは、まだドラマに慣れていなくて、現場の空気に飲まれて緊張しっぱなしでした。主演を務めることにすごくプレッシャーを感じていますが、プレッシャーをエネルギーに変えて臨みたいと思っています」
両親の石橋凌と原田美枝子には伝えた? という質問には、
「両親にはこっそり伝えました。『よかったね、頑張って』と喜んでくれました」
と明かした。
モデルの宇野は4回結婚を経験。恋多き人物を演じることについて聞かれた石橋は、
「宇野さんのエッセイを読んでいくうちに、自分の好きなものに対して、まっすぐに全力で向き合っていった人なんだなという印象を受けました。その結果、たくさんの出会いや恋愛があったんだと想像します。好きという気持ちは、明日生きていくパワーであり、大事な感情だと思います」
と役への思いを寄せていた。
脚本・櫻井剛「主人公・珠を応援しながら観てほしい」

脚本は、連続テレビ小説「ブギウギ」や夜ドラ「あなたのブツが、ここに」などを手がけた櫻井剛。今の心境を次のように語った。
「もちろん人生は花咲く瞬間ばかりではないです。そこに至るまでにたくさんの出会いや別れ、困難などがありますが、力強く乗り越えていく主人公・珠の姿を応援しながら観ていただけたらと思っています。幸せというのは一筋縄ではいかないですし、僕自身、朝ドラの脚本を担当することに浮かれていますが、油断をすると締め切りが迫って地獄の底に突き落とされることも多くあります。この作品を書くことで、そして視聴者の皆さんに観ていただくことで、生きていくうえでの幸せのヒントを見つけられる、そんなドラマにできたらと思っています。良いドラマにします。がんばります!」
ヒロインが石橋に決定したことについては、
「石橋さんのファンだったので、ヒロインに決まって、めちゃくちゃうれしかったです。どんな作品を拝見しても、石橋さんは安定感・安心感が抜群だなと思っています。今回の主人公・珠は波乱万丈の人生で、たくさんの恋をして、苦労をして、という人物。演じる方を振り回してしまうという不安もあるキャラクターでしたので、石橋さんに決まって安心しました。珠はキャラクターとして理屈ではすべてを語り切れない部分が多い人物なので、その部分を石橋さんにお任せをして、しっかりと一つのヒロイン像にしてもらえたらと思っています」
制作統括・村山峻平「珠として生きる石橋さんをとにかく見たい一心で、オファーした」
制作統括の村山峻平は、石橋にオファーした理由について、
「石橋さんは自然体でありながら、独特な雰囲気をお持ちのうえに強いまなざしがあって目が離せなくなる。そういう力強さがある方なので、主人公の珠として生きる石橋さんをとにかく見たいと思い、その一心でオファーをしました」
と言葉に力を込める。
「ドラマ10『燕は戻ってこない』で、石橋さんは役と対話しながら、役の人物が何を大事にしているのかを深く掘って演じられる方だとお見受けしました。役に共感しにくい部分が出てきたとしても、石橋さんには最後までその役を見捨てない強さがある。今回の主人公は、演じるうえで、そういった強さが必要な役です。珠は大切な出会いと別れを経験しながら、さまざまな感情の揺れを積み重ねていきます。石橋さんは指先にいたるまでお芝居の表現をされる方なので、濃密な朝ドラにできたらと思っています」
石橋のヒロイン姿が今から待ち遠しい。放送は来秋放送スタート。
乞うご期待!
主人公・葉野珠役 石橋静河

いしばし・しずか
1994年生まれ。東京都出身。2015年に俳優デビュー。2017年に初主演作『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』でブルーリボン賞ほか多数の新人賞受賞。以降、「東京ラブストーリー」(フジテレビ)、「大豆田とわ子と三人の元夫」(フジテレビ)、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK)などの話題作に抜擢される。近年では、『前科者』、『DEATH DAYS』、KAAT『近松心中物語』など、舞台や映画でも幅広く活躍。昨年のドラマ10「燕は戻ってこない」(NHK)では、生活苦から代理出産を引き受ける主人公を演じ、東京ドラマアウォード2024で主演女優賞を受賞。連続テレビ小説への出演は、2018年の「半分、青い。」以来2回目。
脚本:櫻井剛

さくらい・つよし
1977年生まれ。茨城県出身。2001年にデビュー。主な執筆作に「マルモのおきて」(フジテレビ)、「ビギナーズ!」(TBS)、「ミス・パイロット」(フジテレビ)、「表参道高校合唱部!」(TBS)など多数。NHKでは近年、夜ドラ「あなたのブツが、ここに」、連続テレビ小説「ブギウギ」、特集ドラマ「昔はおれと同い年だった田中さんとの友情」を担当。
タイトル「ブラッサム」とは……
開花を意味するブラッサム。「咲き誇れ」という思いを込めました。主人公の葉野珠が、自分を肯定し、奮い立たせる言葉です。もうひとつは、チェリー・ブラッサムの「桜」。宇野千代さんのトレードマークです。着物はもちろん、赤いちゃんちゃんこに至るまで、たくさんの桜のデザインを遺しました。小説やファッションによって、人々に幸せを運んだ「花咲かおばあちゃん」のような宇野さんの天真らんまんな生き方にも重なります。
明治30年(1897年)、主人公・葉野珠は山口県の岩国に生まれました。実母は珠が2歳の時に亡くなり、父と後妻である継母によって育てられました。女学校を卒業後、代用教員として働き始めますが解雇され、故郷の岩国を追われることになります。親戚を頼って上京したことで、珠は幼き日の夢を強く意識し、小説の懸賞応募から、作家の道を切り開きます。しかし、世の中は価値観が大きく揺れ動く時代。大正から昭和にかけて、関東大震災と戦争、結婚と離婚、倒産そして借金……と、珠は、さまざまな困難にのみ込まれながらも、作家として生きることに向き合います。そうした中で、小説家として花を咲かせるのです。時には敵を作り誤解され、傷つけ傷つきながらも、自由を求めて生きることに正直であり続けた珠は、小説に思いを忍ばせることで、読む人に「幸せ」を運んでいくのです。
2026年度後期 連続テレビ小説「ブラッサム」
2026年秋放送スタート
毎週月曜~土曜 総合 午前8:00~8:15ほか
作:櫻井剛
出演:石橋静河
制作統括:村山峻平、櫻井壮一
演出:盆子原誠