5月23日(金)、島根県松江市にあるじょうざん稲荷いなり神社の境内で、今秋から放送が始まる連続テレビ小説「ばけばけ」のロケ報告会が開かれた。参加したのは、俳優の髙石あかりとトミー・バストウ。2人は松江市民に愛された“小泉セツ&八雲”をモデルとした夫婦役を演じる。クランクインから約2か月。初々しく撮影の感想を語る2人の様子をリポートする!


天気が変わりやすいと言われる島根県だが、この日は気持ちのいい五月晴れ 。青空の下、集まった取材陣の前に現れたのは、和服に身を包んだ髙石あかりと、背広姿のトミー・バストウの2人だ。

「ばけばけ」の主人公は、髙石が演じる松野トキ。松江に生まれた没落士族の娘で、小泉セツがモデルである。一方、バストウが演じるのは、松江にやってきた外国人英語教師のレフカダ・ヘブン。『怪談』の作者として知られるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルにした役で、のちにトキの夫となる。
「ばけばけ」は、外国人が非常に珍しかった明治時代の松江を舞台に、怪談話が好きなトキとヘブンが心を通わせ、互いにかけがえのない存在へ「化けて」いく物語なのだ。

さて、そんな「ばけばけ」の取材会。始まるなり、にわかに強い風が吹いてきた。すかさず髙石が「セツさんたちが来ているんじゃない?」と機転をきかせ、会場の記者たちを笑いに包む。

事前の勉強のため、これまでにも松江を訪れたことはあったという2人だが、撮影で来るのは今回が初めて。縁結びスポットとしても知られる八重やえがき神社の境内で、2日間にわたってロケを行ったという。まずは、その感想から──。

髙石「トキとして、またヘブンとして松江に帰って来ることができて、すごくすごくうれしく思います。今回のロケ地、八重垣神社には、プライベートでも来ているのですが、こうして衣装を着てトキとして訪れてみると、全く空気が違って……すごく新鮮でした。

八重垣神社は神秘的な場所なのに、撮っている内容は、あまりにもコメディで……(笑)。本番中でも、ついこらえきれなくなるくらい、笑いが絶えない現場です。この空気を、早くみなさんに届けたい気持ちでいっぱいです!

また今回は、地元の方々がエキストラとして参加してくださって、その皆さんとお話をしながらの撮影は、とても贅沢ぜいたくな時間になりました。差し入れにいただいたしじみ汁もとってもおいしかったです。やっぱり、松江のしじみは大きくて食べ応えがありますよね! 出演者、スタッフ皆でいただきました。ありがとうございました」

続くバストウは、若くして失明した八雲と同じ左目に、特殊メイク用のコンタクトレンズをつけた姿でマイクを握り、「イギリスから来た、日本語勉強中、トミーです。カタコトですが、許してください」と自己紹介。その後も、ときどき髙石や通訳のサポートを受けながら、終始、日本語で応じた。

バストウ「ここはすごくナチュラルな環境がありますので、ゆっくり、安心して、演じることができました。今のところ、あかりさんとはワンシーンしか共演はないのですが、でも、そのシーンでは、驚くほど、安心して演じることができました。それはやっぱり、あかりさんの素晴すばらしい演技、そして優しさ、思いやりのおかげです」

同席していた制作統括の橋爪國臣チーフ・プロデューサーによると、前回、バストウが松江を訪れたときには、まるで嵐のような天気だったとか。訪れるたびに表情を変える松江の町に、徐々になじんでいるようだ。「物語の7割は松江が舞台」とのことで、こうしてロケを通じて松江の空気を感じてもらうことも、役作りの一環なのだろう。

ところでバストウは好きな郷土料理を聞かれて、「しじみラーメン、食べました。めちゃおいしかった」とコメント。地元の人たちのハートをばっちりつかんだ。

今回のロケでは、どんなシーンが撮影されたのかという質問には、「めちゃくちゃ言いたいけど、まだ言えないのです〜!」と、顔を見合わせる2人。そして、

髙石「ただ、神社ということは、アレはするであろうと。ね?」
バストウ「うん、そうね」
髙石「それに、セツさんといえば、という有名なシーンもあるよね」
バストウ「うんうん」

のやりとり。実年齢ではバストウのほうが11歳上だが、年齢の垣根を感じさせない様子がなんとも微笑ほほえましい。そして、最後に問いかけられた、「どんな夫婦を演じて、どんなメッセージを伝えたいと思っているか?」には、

髙石「実際の小泉八雲とセツさんの夫婦関係が、あまりにもキュートで愛らしいんですよね。私自身、愛にあふれた2人の関係にすごくあこがれます。なので、私たちもそんな夫婦になれるようにと思っています」

バストウ「100年前、国際的なカップルはあまりないので、すごくチャレンジ。偏見もあるけど、それを超える、超えられる、超えることができる……?
(ここで髙石から「全部あってるよ!」の合いの手を受け、にっこり微笑んで)
そんな夫婦になれたら、うれしいと思います。そのメッセージを、見せたいと思います」

とコメント。2人のモデルであるセツ&八雲も18歳の年の差カップル。ぴったり呼吸の合った髙石とバストウが演じる、愛にあふれたトキとヘブン。その物語の始まりが待ち遠しい。


【物語のあらすじ】
この世はうらめしい。けど、すばらしい。

明治時代の松江。まつトキは、怪談話が好きな、ちょっと変わった女の子です。
松野家は上級士族の家系ですが、武士の時代が終わり、父が事業に乗り出すものの失敗。とても貧しい暮らしをすることになってしまいます。
世の中が目まぐるしく変わっていく中で、トキは時代に取り残されてしまった人々に囲まれて育ち、この生きにくい世の中をうらめしく思って過ごします。
極貧の生活が続き、どうしようもなくなったトキのもとに、ある仕事の話が舞い込んできます。
松江に新しくやってきた外国人英語教師の家の住み込み女中の仕事です。外国人が珍しい時代、世間からの偏見を受けることも覚悟の上で、トキは女中になることを決意します。その外国人教師はギリシャ出身のアイルランド人。
小さい頃に両親から見放されて育ち、親戚をたらい回しにされたあげく、アメリカに追いやられ、居場所を探し続けて日本に流れ着いたのでした。
トキは、初めは言葉が通じない苦労や文化の違いにも悩まされます。ところが、お互いの境遇が似ている事に気が付き、だんだんと心が通じるようになっていきます。しかも、2人とも怪談話が好きだったのです!
へんてこな人々に囲まれ、へんてこな2人が、夜な夜な怪談話を語り合うへんてこな暮らしが始まります――。

2025年度後期 連続テレビ小説「ばけばけ」

2025年秋 放送予定

作:ふじきみつ彦
出演:髙石あかり、トミー・バストウ/吉沢亮
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史