とうとう太平洋戦争が始まり、嵩(北村匠海)も徴兵されました。金曜日の母・登美子(松嶋菜々子)の叫びに泣かされました。自分勝手で周囲を振り回し、嵩が「息子を傷つける天才」とまで言う登美子。でも“空気が読めない(読まない)”ということは、どんなときにも“思ったこと”(ときに真実)が言える、ということでもあるんですね。
またまた激動の一週間、セリフとともに振り返っていきましょう!
もちろん、ネタバレですのでご承知おきください。
「一番つらいのは、腹が減ることさ」
屋村草吉(阿部サダヲ)が出て行ってしまった朝。
釜次(吉田鋼太郎)はのぶ(今田美桜)と羽多子(江口のりこ)に、なぜ、彼が乾パンを焼きたくなかったのかを話し始める。
「あいつはずーっと胸の奥に押し込んで、思い出さんようにして生きてきたがじゃ。辛い話をさせてしもうた」
ここで場面は、ヤムさんが釜次に話をしたあの、夜になる。
屋村は、日本人義勇兵として、イギリス軍で欧州大戦に参加したという。つまり第一次世界大戦のヨーロッパ戦線にいた、ということだ。
銀座のパン屋で修行しているうちに、もっとうまいパンを焼きたくなって、密航してカナダに渡った屋村は、そこで戦争に巻き込まれたという。
塹壕の中での場面が映し出される。じっと銃をかかえて縮こまっている屋村。
周囲の仲間は“どんどん死んでった”。
屋村「でも、一番つらいのは腹が減ることさ」
「十分な手当てを受けずに死んでくやつもいるし、ろくなものも食えずに死んでくやつもいる、その横で、俺の腹も鳴るんだ。塹壕で、涙流しながら、それでも腹は鳴る。食うものはビスケット、乾パンしかなかった」
銃声が響く塹壕で、死んだ仲間が持っていた乾パンを泣きながらむさぼる屋村。
羽多子「乾パンはヤムさんに辛いことを思い出させるもんやったがですね」
粉の袋が積まれた作業場を見まわすのぶ。
「うち、何をみよったがやろう」
「ヤムおんちゃんのこと、なんちゃあ分かってなかったろうか……」
ショックのあまり、学校に出勤しても教室を通り過ぎてしまうのぶだった。

のぶがぼんやりと帰宅すると、羽多子と蘭子(河合優実)メイコ(原菜乃華)が粉をこねていた。
羽多子がパン焼き窯の中から屋村の手紙を発見、それには「乾パン製法」が書かれていた。
「ヤムさんが残していってくれたがよ」
乾パン作りに反対だったはずの蘭子も参加していた。
「うちは殺し合いの応援ら、しとうない。けんどそんなこといいよれんやろ。うちの家族生きていかな、いかんがやき」

落ち込むのぶに釜次が言う。
「ヤムはおまんのせいで出て行ったわけやない。そもそも風来坊のあいつが、ここに10年以上もおったがは、おまんのせいみたいだぞ」
屋村が町を出ていこうとしたとき、駅でのぶに引き止められた(2週目)のがうれしくて、ここに居続けた、というのだ。
あの晩、それを聞いた釜次は、屋村に言った。
「おまん、ずっとここにおらんか? 石頭の頑固ジジイと喧嘩しながら、おまんもここでジジイになったらええやろ」
屋村がいなくなった喪失感に、朝田家の面々が耐えていた。
(※阿部サダヲ インタビュー)

翌日学校で、のぶの家が陸軍御用達のお店になったことを子どもたちが称賛する。
のぶは、乾パン作りに専念するため、しばらく朝田パンのあんぱんは食べられなくなる、という。
「いま、私らにできることは、国民が一つとなって、一日も早う日本が勝つように努めることです。やき、一日一日、みんなぁも自分にできることをしっかり頑張りましょう」
子どもたちが元気よく「はい!」
「健ちゃん、ゆうべのカレー、辛かったけど美味しかった。また作ってくれよ」
そして1941年12月8日、太平洋戦争が始まった。
「臨時ニュースを申し上げます。……アメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり」
あの、開戦を告げるラジオ放送だ。
食料は配給制になり、朝田パンではひたすら乾パンを焼いている。
釜次は姿を消したヤムさんを心配していた。

嵩は製薬会社の宣伝部に、健ちゃん(辛島健太郎・高橋文哉)は広告事業社に勤めてから1年がたっていた。引き続き一緒に暮らしているらしい。
この日、健ちゃんはカレーライスを作っていた。
嵩「よくカレーの材料なんか揃ったね」
健ちゃんは、取引先の食堂から材料を分けてもらった、という。

会社の愚痴を言いながらカレーを食べる二人。
「おれ、なんで製薬会社に入ったのかわかんなくなっちゃってさ、働いて伯父さんに恩返しできると思ったんだけど、もう、伯父さんは……おれは何やってんだろ」
健太郎「柳井君、ぼやいとらんと、ちゃんとカレー味わってくれん?」
嵩「今日、なんか変じゃない? 健ちゃん。カレーも辛いし」
健太郎「文句言わんで食い。今日で最後っちゃけん」
嵩「え?」
健太郎「赤紙が来たとよ。じゃけん、明日福岡帰るったい」
二日目のカレーは独り占めしていい、と言う健太郎なのだった。

翌朝、駅まで送ろうとする嵩を健太郎は断って……。
「泣きそうになるけん、ここでよかよ。また、会えたらよかね」
二人は街角でハグ。
嵩「会えるに決まってるだろう。生きて、また会おう」
別れ際、嵩が「健ちゃん、ゆうべのカレー、辛かったけど美味しかった。また作ってくれよ」
健太郎の後ろ姿が悲しかった。
(※高橋文哉 振り返りインタビュー)
「もし、ぼくの身に何かあったら、代わりに君が夢をかなえてほしいがよ」
尋常小学校は国民学校と変わり、子どもたちにも軍国教育が行われている。
蘭子(河合優実)は赤い自転車に乗り、郵便の集配もやるようになっていた。男性は次々に兵隊にとられてしまい、人手不足になっていたのだ。

突然、船の機関士をしているのぶの夫、次郎(中島歩)が、海外から戻ってきた。渡航が中止になったという。
アメリカやイギリスと戦争が始まり渡航先がどんどん狭まっているうえ、船員は徴用されて、船も人手が足りない。
夕食時、次郎の様子はちょっとおかしい……?
その夜、次郎はのぶと一緒に、航海中に撮った写真を現像する。
それを二人で眺めながら「のぶといろんなところに行ける時代になるといいな」と言うのだった。

のぶが次郎を伴って朝田家にやってきた。
二人は家族の面々にカメラを向ける。まだ写真は珍しい時代、みんなはしゃいでいる。
そこに国防婦人会の餅田民江(池津祥子)たちが乗り込んでくる。「外国製の写真機で写真を撮った」ことがけしからん、というのだ。
次郎が「このカメラはドイツ製です」
ドイツは同盟国だ。一瞬くじけた民江たちだが、気を取り直して、写真で遊んでる場合ではない! とさらなる攻撃。
「贅沢は敵ですよ!」
そこで次郎は婦人会のみなさんの写真をパチッ。民江たちの攻撃をいなすのだった。
帰りの電車の中でのぶが言う。戦争が終わったら、したいこととは……
「こんなこと、次郎さんにしか言えんけど。生徒らに楽しい授業をしたい。立派な兵隊さんになれというがやのうて。それから、次郎さんと一緒に船に乗っていろんな国に行ってみたい」

いよいよ次郎が航海に出る日がやってきた。愛用のカメラをのぶに置いていくという。
話していないことがあるでしょう、とのぶが問うと、ようやく、
「予定より早う船を降りて帰って来られたがは、船を軍用の輸送船に改修しゆうきながよ。これからの航海は予定通り帰って来られるかどうかわからん。もし、ぼくの身に何かあったら、代わりに君が、夢をかなえてほしいがよ」
「ぼくは……この戦争に勝てるとは思わん。あの、大国であるアメリカやイギリスと戦争して、日本が勝てるとは思えんがや」

のぶの表情が変わる。ムキになったように、
「なに言うがですか。そんなこと言わんとってください。そんなこと、思うてはいけません!……この戦争が終わるがは、日本が勝つときです。そう、強う思わんといけません」
次郎はたじたじとなり、わかったき、と応じたあと
「君の生徒らぁの気持ちが少しわかった」と悲しそうに笑って、のぶをそっと抱く。
「教室では、いつもそんな風に勇ましく教えゆうがやろうな」
そう言って体を離してカメラをのぶの首にかけるのだった。「うん、君によう似合う」
玄関の外で、のぶに自分を撮るように言う。
しかしシャッターを押せないのぶ。
「無事に戻られたときに撮ります。いってらっしゃい次郎さん。お国のために立派なご奉公を」

「いってきます」と敬礼して歩き去る次郎。
一方、東京では嵩の元に知らせが……。
「なに言ってるの? 戦争なんて、無理に決まってるでしょう」

放課後の教室で、子どもたちが残って何やら話している。
のぶの教え子・紀子の兄が兵隊に行くことになったというのだ。
紀子「先生?日本は、勝ちますよね? 負けませんよね?」
次郎の言葉を思い出し、しばらく絶句するのぶ……。
「お兄ちゃんと、もう会えんらぁて、そんなことないですよね?」
大丈夫、日本は勝ちます、とのぶは言うのだったが……。

帰り、自転車を押す蘭子と一緒になり、自分のギモンを口にする。
「生徒のお兄さんにも赤紙がきたがやと。子どもらぁの前では早う戦争に勝って終わらせましょうって勇ましいこと言いゆうけんど、心の中は震えゆうが。蘭子の言う通りや。うち、かわってしもうた。次郎さんにも、心に思いゆうこと言えんかった」
蘭子「ほんまは何ていうたかったが?」
のぶ「どうか、生きて戻んてきて。……言う勇気がなかったがよ」
蘭子「次郎さん、寂しかったやろね」

御免与の通りでは、出征する男子を見送る風景が。
この日、送られるのは、のぶの教え子 紀子の兄だ。
「お国のために戦こうてまいります。行ってきます!」と挨拶すると、
国防婦人会の民江が言う。
「『行って、きます』とはよろしゅうないがです。行って、戻んてくるがではのうて、『行きます』というがです」
なんと、ここまで……。
武運長久を祈って万歳する人々の中に、のぶもいた。

嵩は学校に座間先生(山寺宏一)を訪ねていた。
電報を見せる。
「アカガミキタ スグカヘレ」
座間「そうか、おまえもか。他の奴らもみんな兵隊さんになっちまったよ」
嵩「健ちゃんも、こないだ……なんだか現実だと思えなくて」
座間「ついこないだまでみんなで、“シャッポふってブラボー”って歌って騒いでたのにな」
先生は、軍隊には行ったが、訓練中に終戦になった、という。
「軍隊の訓練は地獄、ってことだ。戦場はもっと……比べ物にならない地獄なんだろうな」
嵩「ぼくは戦争が大っきらいです。こんなこと言っちゃダメなのは、わかってるんですけど」
座間「聞き捨てならんな。非国民め。……バツとして今日俺に付き合え」
ところが嵩は、明日高知に帰るので、母親と会う約束をしていた。

というわけで、母・登美子と座間先生、3人で会うことになった。
登美子は3度目の結婚をして、今は軍人の妻になっている。
「軍隊でやっていけるかな」という嵩に、登美子は想定外の答えを返した。
「なに言ってるの? そんなの無理に決まってるでしょう」
「子どものころから気が弱くて、虫も殺せない嵩が、戦争なんて無理に決まってるでしょう。体力も根性もないし、忍耐力だってないし。戦場に行ったら、足が震えて一歩も前に進めないでしょ?」

嵩が、他に言うことはないのかと聞くと
登美子「武運長久をお祈り申し上げますとでも、言ってほしかった?……母親だからわかるのよ。あなたみたいなのが一番兵隊に向いてないって」
嵩には母の言葉が理解できない。
「もういい、もういい。母さんはいつもそうだ。自分のことばっかり。言いたいこと言ってそれで終わりだ」
席を立つ登美子。
「ごきげんよう」
戸口に向かいながら何か思いつめたように嵩を振り返る、美しい横顔。
一方、座間先生に謝る嵩。
「すいません。母はいつもああなんです。自分勝手っていうか、息子を傷つける天才っていうか」
「嵩、いいこと? 絶対に帰って来なさい。……何をしてもいいから。生きて、生きて帰って来なさい!」

嵩が高知に帰り朝田家を訪れると、パン屋は“休業”になっており、屋村はいないことを知る。
羽多子「ヤムさん、もうおらんがよ。旅に出てしもうて、あてらも寂しいが」
そこへのぶが戻ってくる。
さりげなさを装って「ひさしぶり」と言う嵩に向かって「嵩も、いくがかえ」

「おめでとうございます」と頭を下げる、のぶと羽多子。
「おめでとう、か。困ったな。軍隊には向いてないって学校の先生にも言われたよ。のぶちゃんもそう思っているんだろ。たっすいがぁの僕には無理だって」
型通りの挨拶を返すのぶ。
「ご武運をお祈りします。お国のために立派なご奉公を」
同じ言葉を、柳井家でも言われた嵩は「みんな、同じこと言うんだね」
そして亡き寛(竹野内豊)の写真に向かって、
「伯父さん、今までありがとう。お国のために、頑張ってきます」

出征の日。万歳に送られて嵩は敬礼している。
のぶは学校で、居ても立っても居られない。見送りのために駆け出すのだった。
「いのちを惜しまず戦ってこい」と励ます釜次たち。寛の写真を手に、千代子(戸田菜穂)は泣き出してしまう。

そこに登美子の声が響く。
「嵩、死んだらダメよ」
人垣の後ろの方からつかつかと嵩に近づく登美子。
「嵩、いいこと? 絶対に帰って来なさい。逃げ回ってもいいから。卑怯だと思われてもいい。何をしてもいいから。生きて、生きて帰って来なさい!」
最後は涙声で叫ぶように。
呆然とする嵩。「かあさん……」

国防婦人会の民江たちからは猛烈な抗議。
「あなた、それでも帝国軍人の母親ですか? 母親なら母親らしゅう、息子さんを立派に送り出すがが勤めではございませんか」
登美子「立派に送り出す? 戦争に行く子に死んできなさいと言うのが?」
民江「そうです」
登美子「死んだらダメよ。生きるのよ!」
泣きながら嵩の顔を両手で包み込む登美子。
“空気を読まない”ことが、こんな勇気ある、素敵な一言につながるとは!

憲兵が来て登美子を引き離す。「非国民め! 連行する!」
学校から駆け付けたのぶが割って入る。
「お国を思う気持ちはみなおんなじです。生きて戻んて来て欲しいと願うのは、母親なら当然やと思います。あなたのお母様も、ここにおるお母さんらもみんなおんなじ気持ちやと思います」
嵩に向かって「嵩、必ず戻んてき。お母さんのために、生きて戻んてき。死んだら承知せんき」

いよいよ非国民と言われて連行されそうになる登美子とのぶ。のぶは毅然と嵩を見ている。
嵩が言った。
「憲兵殿!」敬礼。
「柳井嵩。母が取り乱して失礼いたしました。立派にご奉公して参ります。行ってまいります」
なみだで見つめるのぶ、千代子、登美子、と映し出される。
少し笑みを浮かべる嵩。
(※北村匠海 振り返りインタビュー)

今週の最後は、始まった嵩の軍隊生活の場面。“柳井二等兵”になっている。
配置換えで福岡の小倉連隊所属になる。
かがみこんでゲートルの紐を確認する嵩に、一人の上官(妻夫木聡)が近づいてきた。
「戦場では気の緩んでいるやつが一番に死ぬ。気を引き締めろ!」
いよいよ嵩が軍隊に入りました。軍隊の厳しい決まりごととか、上官からのビンタとか(早速、今朝もあった)……辛い予感しかありません。
来週のタイトルは「軍隊は大きらい、だけど」……何が待っているのか。先に入隊した健ちゃんは? 朝田家は?白い軍服姿で予告にちらっと登場した千尋(中沢元紀)は……。
見届けましょう!ほいたらね。