2月1日(土)からスタートした土曜ドラマ「リラの花咲くけものみち」。藤岡陽子さんの同名小説が原作で、北海道の大学で、獣医師を目指す学生たちの青春や成長を描いた物語だ。

主人公は、元引きこもりで、新たな一歩を踏み出すべく、北海道の大学に進学して獣医師を目指す岸本さと(山田杏奈)。聡里の同級生で、鳥類オタクの久保残雪ざんせつを萩原利久さんが演じている。暇さえあれば鳥の観察ばかりしている残雪だが、いつも聡里のことを気にかけている。そんな役に対する思いや、北海道での撮影の様子などについて話を聞いた。


特定のコンテンツに生活が持っていかれる感覚はわかる!

――原作や台本を読んだ時、どんなことを感じましたか?

萩原 テレビドラマで獣医師を目指す学生さんにスポットライトが当たることはそんなに多くはないのかな、と思いました。専門的な部分を扱っているところはありつつも、そこにいる人と動物のお話ではあるので、この表現が的確かどうかはわかりませんが、すごく面白いなと思いながら読みました。

あと、キャラクターがすごく素敵すてきでした。僕が演じた残雪もそうですけど、動物への愛情や、動物と向き合っているという共通点があるからこそ、みんながそれぞれの方向を向いていても、どこかでつながっている感じがあると思いました。また、全然スポ根(スポーツ根性)ものじゃないけど、チーム感や人間らしさみたいなものもすごく詰まっていて、演じるのが楽しみになりました。

――鳥類オタクの残雪ですが、人と積極的に触れ合うというよりは受け身のところがあります。萩原さんとの共通点はありますか?

萩原 ある意味、現代人っぽいところはしっかり持っているのかなっていう印象が僕の中にありました。僕と似ているところでいうと、いわゆる鳥類オタクの部分について、ある特定のコンテンツに生活を持っていかれるあの感覚は僕もすごくわかると言いますか……。

僕は鳥類ではなくて、サッカーとバスケですが、残雪が会話の途中でいきなり鳥の名前をたくさん出す感じはすごくわかります! 僕もスポーツ選手の難しい横文字の名前だったらいくらでも覚えていますし。そういった部分に関しては、今までにないぐらい共感がありました。

人間性で言うと、残雪はいい意味ですごくフラットだなと思いました。周りのうわさで人を見ることはなく、先入観が全然ない。興味がないということかもしれないけど、あくまでも彼が見た、彼が触れたもので物事をジャッジできるというのはすごく素敵なことだと思います。

人や周りに流されないってなかなか難しいと思うんです。自分の芯みたいなのがあって、それで生きていく部分は残雪のいいところだなと思います。鳥類好きの要素もその中でうまく表現できたらなと思っていました。

――常に望遠鏡を持ち歩き、鳥のうんちくを語る場面が多かったのですが、鳥の生態などに興味が湧いたりしましたか?

萩原 実は僕、ダチョウが好きなんですよ。動物全般は好きなのですが、中でもでっかい動物が好きなんです。それに、生存競争の中で他にはない特殊な生態を持った動物を見るのが好きで、鳥なのに、地球上で一番早い二足歩行の動物という、ちょっとよくわからないところも魅力的。きっと残雪も好きなはずです(笑)。

――北海道ロケでは動物に触れ合う機会もありましたか?

萩原 僕は本編中で動物との場面は少なかったのですが、大学で撮影をしていたので、毎日、牛などを見ていました。東京にいると、そう対面することもないので、うれしかったですね。大きい動物だし。

それにしても、動物ってみんな演技派なんですよね。動物は自然にふるまっているだけで、上手っていうのも変ですけど。今回、人も動物も演技が達者だから、たくさん刺激を受けました。動物は演技といいつつも、究極のリアル。芝居芝居していない究極の演者なので、緊張感がありました。動物がOKテイクなのに、こちらがNGを出すわけにはいかないですから。


山田さんは埼玉出身だけど、北海道のスペシャリスト!

――共演者のみなさんの印象はいかがでしたか?

萩原 山田さんとは今まで映画やドラマで何度も共演しています。昔からすごくお芝居も上手で、すごく地に足がついていて大人っぽい人。だから僕は、今回何の心配もしていなかったです。台本の読み合わせの時点から安心してお芝居ができる状態でした。

あと、山田さんは北海道を舞台にした映画『ゴールデンカムイ』に出ていることもあって、めっちゃ雪が似合います。あんなに雪が似合う女優さんいないんじゃないかっていうくらい。

夏ごろに、ある衣装さんと話をしていて、「今度、山田さんと共演で、北海道でロケするんです」って言ったら、その衣装さんに「北海道なら杏奈ちゃんは何でも知ってるから、なんでも任せられるよ!」と言われました。北海道のスペシャリストということを聞いていたので、安心して撮影に臨めました。でも、山田さんは僕と同じ埼玉出身なんですけどね(笑)

綾華役の當真あみさんは大人っぽすぎてびっくりしました! まだ高校生なのに! 残雪と同級生なんだけど、同級生に見えるかな、と心配したほど。彼女は本当に落ち着いていて、僕が同じ年齢の時とは全然違いました。

――残雪はいつも聡里を見守っている役で、自分の気持ちをはっきり出すわけでもありませんよね。そのあたりについて意識したことはありますか?

萩原 ドラマの中では、聡里との関係で明確なゴールがあるわけではなく、緩やかな関係性が成立していますので、緩やかな力加減で自然に演じることができました。

動物と向き合い、獣医を目指す過程での人としての成長がメインなので、恋愛などの別の要素が出すぎるとメインテーマが二の次になってしまうかもしれませんし。なので、言葉よりも行動で示した部分が多かったのかなと思います。気持ちの上でも、聡里だけでなく、誰に対しても終始フラットな立ち位置で、少しだけ寄り添う。そんなことを意識していました。

第1回で、大学の寮に入る時に聡里と残雪が出会いますが、この時点での関係性はゼロ。第2回、最終回でいろいろなやり取りを経て豊かになっていきますし、キャラクターの個性も出てきます。話が進むにつれて残雪がどうなっていくかはぜひ注目してほしいです。

――視聴者の方へメッセージをお願いします。

萩原 しっかり動物と向き合い、未来に向かって頑張っている学生にフォーカスしているドラマなので、幅広い世代の方に楽しんでもらえる作品になっています。動物シーンもいろんなアプローチをして映像に収めていますし、北海道で雄大な自然も撮影できました。ここはフィクションではないので、本物の迫力が感じられるはずです。

それに、残雪をはじめ、みんないいキャラクターばかりなんですよ! 人間ドラマであり、動物ドラマでありというところを純粋に楽しんでもらえたらと思っています。

【プロフィール】
はぎわら・りく

1999年生まれ、埼玉県出身。2008年にデビュー。バラエティ番組「めちゃ×2イケてるッ!」でオカレモンJr.として出演し、以降、ドラマや映画などで活躍。映画『ちはやふる』(16年)、『十二人の死にたい子どもたち』(19年)、『キングダム』(23、24年)、『ミステリと言う勿れ』(23年)、『世界征服やめた』(25年)、ドラマ『3年A組-今から皆さんは人質です-』(19年)、NHK連続テレビ小説『エール』(20年)、『美しい彼』シリーズ(21年)、ドラマ「降り積もれ孤独な死よ」(24年)など多数出演。

【あらすじ】
春、北海道。見渡す限り原始林が広がり、初夏にはリラの花も咲き誇る白樺しらかばの並木道を、18才のさと(山田杏奈)は歩いていた。今日から大学で寮生活をしながら獣医学を学ぶのだ。
3年前まで引きこもっていた聡里は、今は亡き犬のパールだけが友だちだった。見かねて聡里を引き取った祖母・チドリ(風吹ジュン)との生活で少しずつ立ち直り、大好きな動物たちを救うため獣医師になろうと考えた。
祖母と離れ、見知らぬ土地で一歩を踏み出した聡里にとっては、見るものすべてが新しい。初めて学ぶ獣医学、初めての共同生活、初めてのアルバイト。初めての友情、初めての恋……。
馬・牛などの「産業動物」や、犬・猫などの「伴侶動物」、飼い主や獣医師たちとの出会い、そして喜びも悲しみも分かち合える仲間たちとの出会い。
だが、救いたくとも救える命ばかりではない。命が生まれる瞬間に心震えたかと思えば、無情な死が訪れ、心が折れそうになる。時には命の選択を迫られることも……。
逃げ出したくなったり、無力感にさいなまれたり、答えの出ない問いに悩んだり。次々に試練が訪れる「いのち」の現場で、頼りなかった聡里はゆっくり、少しずつ成長し、ひたむきに“生きる意味”を見つけていく。

土曜ドラマ「リラの花咲くけものみち」(全3話)

毎週土曜 総合 午後10:00〜10:49ほか

原作:藤岡陽子
脚本:水橋文美江
音楽:平井真美子
出演:山田杏奈、當真あみ、萩原利久/佐藤寛太、山崎静代、甲本雅裕、石橋静河、風吹ジュン ほか
制作統括:黒沢淳(テレパック)、尾崎裕和、勝田夏子(NHK)
プロデューサー:室谷拡、三本千晶(テレパック)
演出:谷口正晃

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兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体にanan、BRUTUS、エクラ、婦人公論、週刊朝日(休刊)、アサヒカメラ(休刊、「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、mi-mollet、朝日新聞デジタル「好書好日」「じんぶん堂」など。