2月1日(土)からスタートした土曜ドラマ 「リラの花咲くけものみち」。北海道の大学で獣医師を目指す学生たちの奮闘や成長を描いた物語で、原作は藤岡陽子さんの同名小説だ。

主人公の岸本さと(山田杏奈)と大学の寮で同室となり、聡里に強く当たる同級生・梶田綾華を當真あみさんが演じた。役を演じる上での気持ちや、共演者への印象などについて話を聞いた。


綾華の不安や焦りは、なんとなくわかる

――原作を読んでみて、この物語の印象はいかがでしたか?

當真 何の前情報もなしに読んだ時、綾華はすごく冷たい女の子なのかなと思っていたのですが、彼女の家庭環境などを知っていくうちに、私が「支えてあげたいな」って思えるような女の子だと思いました。

はじめは聡里に結構きつい言葉を使っていますが、彼女の奥にある優しさみたいなものを感じることができました。

――綾華と共通する部分や、共感できるところはありましたか?

當真 特に共通するところはそんなにないんですけど、綾華が抱えている不安や焦りはなんとなくわかるな、というところはありました。

綾華は最初、聡里に割と強く当たるんですけど、ぐなところがあり、徐々に聡里と打ち解けていきます。

綾華は明るくてハキハキしているのですが、私は人見知りなんです。人と話すこと自体は好きですけど、 緊張しちゃって何を話したらいいだろう、と思って詰まっちゃうんです。綾華のものじせずに話せるところは私にない部分で、羨ましいという気持ちが少しあり、自分もそうできたらいいなと思いながら演じていました。

――綾華を演じる上で、大切にしたことなどはありますか?

當真 綾華は医者一家の生まれなのに、自分は医学部に落ちてしまい、家族へのコンプレックスを持っている役です。しかし、私自身には特にそのようなものはありません。第1回で綾華が聡里に強く当たってしまうところは、綾華の気持ちを自分でくだいていかないとわからなかったところがあり、監督とお話をしながら綾華というキャラクターを作っていきました。

聡里ちゃんに最初に出会った時、彼女が少し自信なさげに見えてしまった綾華は、自分にコンプレックスや焦りがあったからこそ、彼女を受け入れきれなかった。綾華の未熟な部分が出ているのかなと感じました。

――沖縄のご出身ですが、北海道ロケの感想を教えてください。

當真 撮影で1か月弱くらい滞在しました。北海道に行ったのは今回が初めて。北海道は10月で、雪はまだ降っていませんでした。沖縄だと10月なんて夏みたいなものなので、すごく寒いと感じました。

今回ロケをした大学が、酪農の動物を放牧する場所や、作物を育てる畑などがあって、ものすごく広かったのですが、沖縄にはないスケール感だと思いました。

撮影がオフの時はあまり外に出なかったので、北海道らしいことを満喫できませんでした。北海道といえばラベンダーというイメージなので、今度はぜひラベンダーが咲いている時期に行ってみたいです。


俳優という仕事に真剣に向き合っていきたい

――大学での撮影では、学生や先生、動物と接する機会もあったと思いますが、いかがでしたか?

當真 動物を扱う大学なので、私が想像していた大学とは違いましたが、大学には本当にいろんな人がいました。それぞれ目的が違っていて、さまざまな価値観の人がいるんだろうな、といったことを想像すると、大学って楽しそうだなと思えました。

獣医師は命を扱うお仕事だからこそ、責任感が求められ、時にはすごく苦しい決断を迫られることもありますが、それだけに、すごくやりがいのある仕事だと思いました。

――聡里役の山田杏奈さんの印象をお聞かせください。

當真 山田さんは年齢も経歴も、もちろん先輩なんですけど、先輩の壁を全然感じさせない、すごく優しい方でした。でも、第1回で綾華が聡里から強く思いをぶつけられるシーンはぐっと来ましたね。撮影の合間の待ち時間は一緒にお話したりして、とても楽しかったです。

――綾華は将来のことを模索しているところですが、當真さんご自身も2022年から演技の世界に飛び込み、同じように模索されている時期ではないかと思います。今は俳優というお仕事とどんな気持ちで向き合っていますか?

當真 今、すごく楽しいなって思っています。役を通してでしか経験できないことがありますし、共演する俳優さんたちを見ながら、いろいろと自分の芝居を考えていったりするのがすごく楽しいです。これからもお芝居に真剣に向き合っていきたいと思っています。

――ドラマを観ているみなさんにメッセージをお願いします。

當真 この作品は、動物が出てくるシーンがたくさんあり、それらのシーンがすごく魅力的なんです。きっと動物の命の尊さを感じることができます。私はこの撮影で初めて、動物に携わるお仕事に苦しい時もあることを知りました。そういったことに向き合う人の心や、思いの強さをすごく感じました。

今回、聡里や綾華をはじめとしたみんなが、動物と関わっていくことを決め、自分ができることは何かを模索しながら、ひたむきに頑張っていく姿がたくさん描かれています。そんな様子をぜひ観ていただけるとうれしいです。

【プロフィール】
とうま・あみ

2006年、沖縄県出身。2021年7月、リクルートのCMで芸能界デビュー。ドラマ「妻、小学生になる。」(22年)、NHK大河ドラマ「どうする家康」(23年)、NHK特集ドラマ「ケの日のケケケ」などに出演。

【あらすじ】
春、北海道。見渡す限り原始林が広がり、初夏にはリラの花も咲き誇る白樺しらかばの並木道を、18才のさと(山田杏奈)は歩いていた。今日から大学で寮生活をしながら獣医学を学ぶのだ。
3年前まで引きこもっていた聡里は、今は亡き犬のパールだけが友だちだった。見かねて聡里を引き取った祖母・チドリ(風吹ジュン)との生活で少しずつ立ち直り、大好きな動物たちを救うため獣医師になろうと考えた。
祖母と離れ、見知らぬ土地で一歩を踏み出した聡里にとっては、見るものすべてが新しい。初めて学ぶ獣医学、初めての共同生活、初めてのアルバイト。初めての友情、初めての恋……。
馬・牛などの「産業動物」や、犬・猫などの「伴侶動物」、飼い主や獣医師たちとの出会い、そして喜びも悲しみも分かち合える仲間たちとの出会い。
だが、救いたくとも救える命ばかりではない。命が生まれる瞬間に心震えたかと思えば、無情な死が訪れ、心が折れそうになる。時には命の選択を迫られることも……。
逃げ出したくなったり、無力感にさいなまれたり、答えの出ない問いに悩んだり。次々に試練が訪れる「いのち」の現場で、頼りなかった聡里はゆっくり、少しずつ成長し、ひたむきに“生きる意味”を見つけていく。

土曜ドラマ「リラの花咲くけものみち」(全3話)

2月1日(土)スタート
毎週土曜 総合 午後10:00〜10:49ほか

原作:藤岡陽子
脚本:水橋文美江
音楽:平井真美子
出演:山田杏奈、當真あみ、萩原利久/佐藤寛太、山崎静代、甲本雅裕、石橋静河、風吹ジュン ほか
制作統括:黒沢淳(テレパック)、尾﨑裕和、勝田夏子(NHK)
プロデューサー:室谷拡、三本千晶(テレパック)
演出:谷口正晃

土曜ドラマ「リラの花咲くけものみち」NHK公式サイトはこちら※ステラnetを離れます

兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体にanan、BRUTUS、エクラ、婦人公論、週刊朝日(休刊)、アサヒカメラ(休刊、「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、mi-mollet、朝日新聞デジタル「好書好日」「じんぶん堂」など。