1月24日、東京・渋谷のNHK放送センターで記者会見が行われ、2026年度前期連続テレビ小説の制作発表会見が行われた。114作目となる連続テレビ小説のタイトルは「風、薫る」に決定。文明開化が急速に進み、西洋式の看護学が日本に伝わった明治。それぞれが生きづらさを抱えるいちノ瀬のせりんとおおなおの2人が、当時まだあまり知られていなかった“看護”の世界に飛び込み、“最強のバディ”になって傷ついた人々を守ろうと奔走する冒険物語だ。


看護師のパイオニア的存在の女性2人が主人公 

この時代に看護学を学び「トレインドナース(正規に訓練された看護師)」と呼ばれた、看護師のパイオニア的存在・大関和おおぜきちかさんとすずまささんをモチーフにしたストーリー。

脚本家の吉澤智子が脚本を手がけ、主人公・一ノ瀬りんを見上愛が演じることも発表された。今回は番組側からのオファーで決まったという。

見上は、2000年生まれの東京出身。よるドラ「きれいのくに」(2021年放送)で好演し注目を集めたほか、大河ドラマ「光る君へ」(2024年放送)で藤原道長の娘・彰子を演じたことでも記憶に新しい。


主演・見上「朝ドラにはずっと出たいと思って挑戦してきた」

名前を呼ばれ登壇した見上の目には涙が。1週間前に今回の出演決定を知ったばかりだという見上は、「この場に立った瞬間にやっと実感が湧いてきて、思わず涙が出てしまいました。主人公に決定したと聞いたときは『信じられない!』と思って、言葉だけが頭をすり抜けていくような、初めての感覚を味わいました」と喜びを語った。

「この仕事をするうえで、自分でいろいろな出会いに制限をかけたくなかったので、あえて夢や目標は決めていなかったんです。でも、朝ドラにはずっと出たいと思って、毎回オーディションに挑戦してきたんです。すてきな俳優さんがたくさん生まれてきた番組に出演させていただけるのは光栄なこと。朝、どう始まるかによってその日一日が変わってくると思うので、ドラマを見てくださる皆さんがすてきな1日を過ごせるようなお手伝いができれば」と意気込みを明かした。

見上が演じるりんは、栃木県那須地域の山すその町で、良家の長女として生まれた女性。やがて、不運が重なり若くしてシングルマザーとなる。役の印象について聞かれると、
「すごく素直な女性だと思います。でも、 必ずしも素直なことが正解ということはなくて、素直だから間違えたり人を傷つけてしまうこともあると思います。それすらも理解して飲み込んで、自分の信念に従う。そうした強さを持った女性だと感じました」(見上

舞台地の栃木県について聞かれると、こんな思い出を明かした。
「私がまだ3歳くらいの頃、家族で那須に行ったことがあるんです。公園のベンチに座ってソフトクリームを食べようとしたら、背もたれがなくて後ろにひっくり返ってしまって。それでも、ソフトクリームだけは守っていたという思い出があります(笑)」(見上


作・吉澤智子「優しいたくましさを持った2人のバディドラマに」

左:作者・吉澤智子 右:主演・見上愛

作者の吉澤智子は、物語の着想のきっかけについて次のように語る。
「脚本家になった時から、いつか女性2人がバディを組む物語を描きたいと考えていたのですが、なかなか実現しなかったんです。男の友情は美しいと言いますが、女性の友情も悪くないんだけどな……とずっと思っていたので、今回実現してとても嬉しいです。私自身が入院したり夫が倒れたりしたこともあって、たくさんの看護師の方と接してきましたが、皆さん、優しくてたくましいんです。特にここ数年、コロナで厳しい状況の中、看護師さんたちが一生懸命働いてる姿を見て、より一層感じました。今回のお話はそういう優しいたくましさを持った2人のバディドラマになればと思っています」(吉澤


制作統括・松園武大「『光る君へ』での彰子を見事に演じた姿にかれて、オファーした」

制作統括の松園武大は、「風、薫る」というタイトルについて、
「風、薫るという言葉は、花や草木の香りをまとった風が新緑の中を爽やかに駆け抜けるような様を表し、和歌や俳句などで古くから親しまれてきた言葉です。ドラマの主人公たちが、そういった風をたっぷりと受けて、やがて風のような存在となって人々に温もりを届けていく。そして視聴者の皆様にも、新鮮で心地の良い風をお届けしたいという思いを込めました」(松園

また、見上をりん役に起用した決め手についても明かした。
「見上さんとは『光る君へ』でもご一緒させていただきました。感情を全く見せなかった彰子がゴッドマザー的な存在になっていく様を見事に演じてくださって。そうした役への向き合い方、豊かな表現力、人の目を引く存在感、フランクでチャーミングなお人柄に触れて、ぜひ一ノ瀬りんを演じていただきたいと思い、オファーしました」(松園

りんの相棒となるもう一人の主人公・大家直美は、これからオーディションを行い決定する予定だという。どんな女性が直美を演じ、見上とバディを組むことになるのか。その発表も待ち遠しい。型破りなナースたちのたくましく温かい物語に乞うご期待。


主人公・いちノ瀬のせりん役/見上愛 連続テレビ小説初出演

栃木県那須地域の山すその町で、元家老の家に長女として生まれる。物心ついた頃には一家は帰農していて、細やかではあるが不自由のない暮らしに幸せを感じていた。しかしある日、コレラが町でまん延し、りんの人生の歯車が狂い始める――。
「己の良心に恥じないか」が判断基準。育ちは良いが天真らんまんで視野が狭くなりがち。いざという時に潔く思い切った行動力がある。生活のためにナースになるが、やがてナースの地位向上、病人が病を抱えながら、ありのまま生きられる世の中を見るのが夢らしきものになっていく。

【プロフィール】
みかみ・あい

2000年生まれ。東京都出身。2019年俳優デビュー。2021年、よるドラ「きれいのくに」(NHK)で容姿にコンプレックスを持つ高校生役を演じ、注目を浴びる。同年、映画『衝動』で初主演を果たし、2022年ドラマイズム「liar」(MBS)でテレビドラマ初主演。2024年は、大河ドラマ「光る君へ」(NHK)で藤原道長の娘・藤原彰子を演じ、大きな反響を得たほか、主演を務めた映画『不死身ラヴァーズ』も公開された。近年の主な出演作に、Netflixシリーズ「恋愛バトルロワイヤル」、ドラマ「マイダイアリー」(ABCテレビ)、「119エマージェンシーコール」(フジテレビ)、ほか多数。

作者/吉澤智子

【プロフィール】
よしざわ・ともこ

神奈川県生まれ。明治学院大学社会学部卒業後、CATVアナウンサー兼記者や新聞社などで勤務。2008年に脚本家デビュー。コメディーからホームドラマ、医療ドラマ、時代劇など幅広いジャンルを手掛ける。コミカルかつ繊細な人物描写には定評があり、特に女性のリアルな本音を感じさせる台詞せりふが共感を得ている。
これまでの主な執筆作
ドラマ「広重ぶるう」「幸運なひと」「まんぞくまんぞく」「ダルマさんが笑った。」「Dr.DMAT」「あなたのことはそれほど」「初めて恋をした日に読む話」「病室で念仏を唱えないでください」ほか多数
 

2026年度前期 連続テレビ小説「風、薫る」

2026年春 放送スタート
毎週月曜~土曜 総合 午前8:00~8:15ほか

【物語のあらすじ】
明治18(1885)年、日本で初めて看護婦の養成所が誕生したのを皮切りに、次々と養成所が生まれた。そのうちの1つに、物語の主人公・いちノ瀬のせりんとおおなおは運命に誘われるように入所する。不運が重なり若くしてシングルマザーになった、りん。生まれてすぐ親に捨てられ、教会で保護されて育った直美。養成所に集った同級生たちは、それぞれに複雑な事情を抱えていた。手探りではじまった看護教育を受けながら、彼女たちは「看護とは何か?」「患者と向き合うとはどういうことか?」ということに向き合っていく。
りんと直美は、鹿鳴館の華といわれた大山捨おおやますてまつや明六社にも所属した商人・みず三郎さぶろうらと出会い、明治の新しい風を感じながら、強き者と弱き者が混在する“社会”を知り、刻々と変わり続けていく社会の中で“自分らしく幸せに生きること”を模索していく。
養成所卒業後、二人は同じ大学病院でトレインドナースとしてデビュー。まだ理解を得られていない看護の仕事を確立するために奮闘の日々を送っていたが、りんは程なくして職場を追われることに。一方、アメリカ留学を夢見る直美は渡航直前に思わぬできごとに巻き込まれ……。
やがて、コレラや赤痢などさまざまな疫病が全国的に猛威をふるい始める。一度は離れ離れになった二人だったが、再び手を取り、疫病という大敵に立ち向かっていく。

作:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか