6月、福島県いわき市にあるコミュニティ放送局「SEA WAVE FMいわき」のパーソナリティーの勉強会に参加してきました。地域情報の発信拠点としての頑張りに刺激を受けました。
コミュニティ放送局の放送エリアは市町村単位に限定され、地域密着の情報発信を目指しています。全国に341局あり、そのうちの一つ「FMいわき」は第三セクターの放送局。スタッフは総勢40人ほどです。
いわき駅前のメインストリートに面した局舎にお邪魔して驚いたのは、ずらりと並んだ感謝状の数々。中でも目を引いたのは東日本大震災の際、復旧・復興に向けた放送に対する自治体からの感謝状でした。
地震や津波に加え、福島第一原発から“30キロから70キロ圏内”にあり、放送の継続も困難な状況でしたが、スタジオや事務スペースに雑魚寝をしながら、休まず情報を発信し続けました。あるパーソナリティーは「この先どうなるか分かりませんでしたが、夫は自治体の職員でしたのでそちらの仕事、私はそのときできることに集中してマイクに向かいました」と当時を振り返ります。
1週間ほどすると、放送局を訪れる人が現れました。「いつも聴いている。食べ物がないようだからバナナ持ってきた。1本だけど」という人、「放送局から近い我が家はやっと水が出た。皆はお風呂に入ってないでしょ! 入りにおいで!」などのエピソードは胸を打ちました。地域に溶け込み、地域の大きな力になっている放送局だと痛感しました。
今回は皆さんのプロフィールも伺いました。子育てで大忙しの人。病気を乗り越え夏から復帰の人。故郷に戻って地域貢献をしたい人。今年の春東京の大学を卒業し、放送の仕事をするためいわきを選んだ人……。それぞれがさまざま悩みながら工夫を重ね、地域放送に向き合う真摯な姿勢に心を打たれました。
「FMいわき」での勉強会は、コミュニティ放送局の在り方を再認識し、放送に向かう心構えを見つめ直すよい機会になりました。
(やました・まこと 第2・4日曜担当)
※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2024年10月号に掲載されたものです。
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