桃の節句にはひな人形を、端午の節句には五月人形を飾り子どもの成長を願うなど、日本には古くから多様な人形文化が息づいています。日本人形に魅せられ全国の人形を収集し研究するはやし直輝なおてるさん(45歳)が、日本人形の奥深さを語ります。

聞き手 佐治真規子この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2025年6月号(5/16発売)より抜粋して紹介しています。


日本の“カワイイ”の原点は御所人形にあり

――最初は厄よけから始まったのですね。

 江戸時代になると節句に人形を飾る風習が生まれ、それが全国に広まるにつれて人形作りの技術も向上しました。  

ちなみに、このころ上流階級で愛されたのが、這子から発展したと考えられる御所人形*1です。健康でよく肥えている赤ちゃんを表現しており、大きな頭と小さな体のアンバランスさがなんともかわいらしくて。最近はかわいいゆるキャラやアニメキャラが人気ですが、御所人形は絶妙な“カワイイ”バランスの原点のように思えるのです。江戸時代に人々の間でカワイイものが流行していたというのが興味深いですよね。

*1 宮中や京都の公家の間で好まれたのが由来。江戸時代に大名が京都御所や公家への贈り物の返礼品として持ち帰り、広まったともいわれている。


日本人形を生み出す熟練の技

――日本人形は衣装やお飾りなど、一つ一つが精密に作られていますよね。

 伝統的な日本人形の多くは、彫刻・絵画・染織・漆芸・陶芸などさまざまな美術工芸の粋を集めて作られています。技術面だけでなく美意識も含め、まさに日本の伝統工芸の集大成といえるのではないでしょうか。

【プロフィール】
はやし・なおてる

1979(昭和54)年、静岡県富士市生まれ。目白大学人文学部地域文化学科卒業後、吉德資料室の室長を務め、2018(平成30)年に日本人形文化研究所を設立。経済産業大臣指定伝統的工芸品産地委員などを務めるほか、「開運!なんでも鑑定団」(テレビ東京系)の日本人形鑑定士としても活躍。

※この記事は2025年2月25日放送「思いこもる日本人形に魅了され続けて」を再構成したものです。


節句人形を飾る日本文化の意義をはじめ、幼い頃から日本人形が好きだったという林さんの日本人形への思いなど、お話の続きは月刊誌『ラジオ深夜便』6月号をご覧ください。

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