月刊誌『ラジオ深夜便』の秋の風物詩、「恒例(?)とっておきの京都」。京都の秋を訪ねてはや14年、中村宏アンカーの今年のおすすめは……? 中村アンカーが去年現地で撮影した写真とともにご紹介します。
京都・西山で交通の便がよくないため混雑しない名所。まず、平安の昔から紅葉の名所として歌にも詠まれている大原野神社へ。紫式部も氏神として崇め、『源氏物語』の中では大原野へ向かう帝の行列の様子を描いています。
長い参道は見事な紅葉のトンネル。赤や黄の紅葉に包まれ夢の世界のよう。途中に蕎麦店があり、何人かが待っていたので入り口で名前を書き、待ち時間50分と見当をつけ、先に紅葉見物をすることにしました。
すぐ右側に、奈良の猿沢池をまねて造ったという鯉沢の池が見えてきました。睡蓮の隙間に映る紅葉と赤い橋がすてき。モネの池のよう(トップ画像参照)。
本殿の前では「狛鹿」がお出迎え。雄と雌の一対。奈良・春日大社の分霊を祀るということで、大社と同じく鹿は神の使いです。
お参りを済ませると丸い小屋のようなものを発見。6年前の台風で折れた神木の樅の木の根元部分で、中が空洞になっていて忍びないと入り口と丸い屋根をつけて中に入れるようにしたとのこと。私も中に入って、参拝の方にシャッターを押してもらいました。
さて、蕎麦店に戻ってみると、なんと! 私の名前の4人ぐらい前の所に赤い線が引いてあり、「売り切れた」とのこと。仕方なく隣の茶店の庭でみたらし団子によもぎ餅。前を見るとモネの池の紅葉が広がっています。この方がよかったかも。なんとラッキー!
曇ってきて寒いので燗酒も追加して景色を楽しんでいると、突然、小雨が降り出し店の中へ避難。すると、窓越しの紅葉の美しいこと。またラッキー! さらに、雨が上がると日が差して紅葉がキラキラ輝き出しました。
今度は時代劇に使えそうな森を抜けて約15分で勝持寺へ。境内は極楽かと思われるほどいっぱいの紅葉に包まれ、参拝者は少なく、苔の上のモミジも踏まれずにきれいです。
勝持寺は「花の寺」と呼ばれ桜も有名です。平安時代の歌人・西行はこの地で出家し庵を結んだと言われ、春には西行が植えたと伝わる「西行桜」が目を楽しませるそうです。いつまでも穴場であってほしい本当の名所です。
観光客が押し寄せる京都で、ここは“最後の穴場”かもしれません。本当は内緒にしておきたい名所です。
*JR京都線の向日町駅、または阪急電車の東向日駅からバスで約20~30分、徒歩7分。バスは1時間に1本程度。見頃の時期など調べてお出かけください。
(なかむら・ひろし 第2金曜担当)
※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2024年10月号に掲載されたものです。
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