高知で楽しい列車に乗りました。土佐くろしお鉄道のごめん・なはり線。
高知県東部南国市と奈半利町を土佐湾沿いに42.7キロ。1両編成の電車が21の駅を1時間余りで結んでいます。おもしろいのが各駅に存在するキャラクターです。
アンパンマンの生みの親で高知県出身のやなせたかしさんが考案した21のキャラクターはどれも可愛らしくてユニーク。例えば、立田駅は「たてだ そらこちゃん」。高知空港に近く離着陸する飛行機を見ることができるので、客室乗務員をイメージした制服を着ています。
また、駅周辺に特産のなすびのビニールハウスがたくさんある穴内駅は紫色のなすびがモデルの「あなない ナスビさん」。映画『男はつらいよ』のロケ予定地だった伊尾木洞が近くにあるので、伊尾木駅は寅さんがモデルの「いおき トラオ君」などなど。思わずくすっと笑ってしまうキャラクターです。
ホームの駅名看板にはイラストが、駅周辺には立体の人形があるので、子どもも大人もワクワクドキドキ、写真撮影に夢中です。
最近は豪華な観光列車が人気ですが、故郷を愛する人たちの手作りの魅力満載のローカル列車。すっかりファンになりました。
この旅では、旅の達人に出会いました。私より少し年上と思われる仲よし女性3人組。
「モネの庭」に向かうバスの中で、一人が「このあたりの建物、小さい瓦のひさしがあるけど何かな」と言うと、別の一人が「それはね、水切り瓦と言って風雨が激しいこの地域で壁面に雨水がかかるのを防いで漆喰の白壁を保護するんだって」。ほー、なるほど。
モネの庭に到着し、まずはランチと歩き始めると、件の3人組が「ここの蓮の花、午後には閉じゃうから、急ごう」。え、そうなの? と、私たちも方向転換。園内で不思議な形の花を見ていると、またもや3人組が「ブラシノキ。きれいねー」。へー、ブラシノキって言うのね。
豊富な知識と旺盛な好奇心。達人たちのお喋りをガイドに旅を何倍も楽しませていただきました。
(もりた・みゆき 第2土曜担当)
※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2024年8月号に掲載されたものです。
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