主人公・とも(伊藤沙莉)の明律大学の同窓生で、戦後は、やはり同窓生のとどろき(戸塚純貴)とともに弁護士事務所を開いた山田よね。今週、司法試験に合格し、弁護士になったことが明かされました。

自身のつらい過去の経験から、弱い立場の人々の助けになるために闘い続けてきたよね。学生時代から現在にいたるまでのよねの変化や、寅子や轟との関係についてなど、演じる土居志央梨さんに聞きました。


20年越しの夢をかなえて弁護士に——胸のバッジで喜びを実感

――ついに弁護士の資格を取得しました。おめでとうございます!

ありがとうございます!

台本を読んだ時も、もちろんうれしかったのですが、実はいちばんうれしかったのは、衣装合わせで弁護士バッジを胸につけてもらった時でした。ああ、こういう気持ちになるものなんだなって、妙に実感があって。大学に入ってから、およそ20年。ついによねの夢が叶ったんだと胸がいっぱいになりました。

よねは、第15週で新潟に行く前のトラコ(寅子)に、「私確信してるのよ、弁護士になったよねさんにしか救えない人たちがたくさんいるって」と言われたのがきっかけで、半ば諦めかけていた弁護士をもう一度目指し始めたんだと思うんです。

トラコはよねにとって、うっとうしくてうるさい存在ではありますが、同時にきっかけをくれる存在でもある。態度はいつもと変わらずツンツンしていますが、トラコがお祝いに来てくれたのは、本当にうれしかったはずです。

――轟との法律事務所の名称も、「山田轟法律事務所」に変更されました。

トラコには、あまりかっこ悪いところを見せないようにしているよねですが、轟に対してはそうではないんですよね。心の底から安心できる、相棒のような存在というか……。そんな2人ですから、事務所名にきちんと自分の名前が入ったというのは、感慨深かったですね。

ちなみにこの事務所名、「山田」が先か「轟」が先かでめて、じゃんけんで決めたという設定だったんです。そのシーンの撮影は、私が勝つまで本気で勝負をしたんですが、全然勝てなくて! 7回戦くらいしてようやく勝てたんです。(戸塚)純貴くん、じゃんけんが強かった……(笑)。

――映像からも、白熱している様子が伝わってきました。楽しそうな現場ですね。

純貴くんとは初めての共演でしたが、本当に刺激になりました。純貴くんは、リハーサルの時から様子見を一切せずに、100%のパワーでお芝居をするんです。その思い切りの良さがかっこよくて。

でも肝心なところで、ちょっと抜けていることもあって、お芝居中に食べていた米粒を飛ばしてきたりするんですよ(笑)。そういうところに、いつもほっこりしています。

ほかの共演者の皆さんとも、お芝居のことは真剣に話し合えるし、どうでもいいくだらない話もできるし、本当に心を許せる学校の仲間みたいな感覚です。この年齢になって、こういう仲間たちに出会えたのは、すごくラッキーなことだと思います。

――今週(第21週)、トラコの結婚を祝うシーンでは、明律大学の同級生が久しぶりに集合しました。このシーンには、どんな気持ちで向き合いましたか?

実際に、先輩方も含めて女子部のメンバーにお会いするのはすごく久しぶりでした。何か月も顔を見ていない方もいましたし……だから本当に懐かしくて、うれしくて、とにかく楽しみながら演じました。

学生時代から始まったみんなの物語が、いったん一段落する節目のシーンでもあるので、いろいろなことを思い出しましたし、それぞれの人生をお互いに労って、祝福し合っていたように感じます。

ただ、あのシーンには同窓生の男性が轟しかいないんです。小橋(名村辰)と稲垣(松川尚瑠輝)は仕事が忙しかったんですかね?(笑) そして花岡(岩田剛典)がいないのは、やっぱりさみしかったですね。

でも、轟はそれも乗り越えて、花岡の気持ちも背負って頑張っている人なので……ここにいない花岡に思いをせながらも、「みんな一生懸命生きてきたんだな、私も頑張ろう」と再スタートを切るような心持ちでした。

ひとつだけ悔しかったのが、乾杯シーンです。台本のト書きに「(乾杯を)よねはしない」と書かれていたんですよ! なので、私だけ乾杯できず。心でははしゃぎつつ、うれしい気持ちを抑えるのに必死でしたね(苦笑)。


いつも心の中によねを住まわせておきたい

――「虎に翼」は、土居さんにとってどんな作品になりそうですか?

間違いなく、私の人生においてすごく大切な作品です。これからも、いつも心の中によねを住まわせておきたいし、弱気になった時には彼女の力を借りて、「虎に翼」を思い出せば頑張っていけるんじゃないかなと思います。また、このタイミングで──30代に入って、20代の頃より視野が広がってきた今、この作品に出会うことができたのもありがたかったですね。

実はこの前、チーフ演出の梛川なぎかわ(善郎)さんに、なぜ私を起用してくださったのか聞いてみたんです。そうしたら、「ちょっとみんなの外側に立って、冷静に見ている感じがよねだと思った」と言ってくださって。

もっと若い頃の自分だったら、よねのこともかんして演じられなかったかもしれない。そう考えると、不思議な縁を感じます。

──作品全体を通して、よねはどんな役割を担ったキャラクターだと思いますか?

よねがトラコや女子部のみんなと違うところは、恵まれない生い立ちであるというところ。家族のもとで暮らしていくことができないし、勉強することへのハードルの高さが、みんなとは全然違う。“持たざる者”であるということは、よねの大きな特徴です。

だからこそ、恵まれない人を救うため、弁護士になる前から法律相談をしたり、轟と一緒に戦災孤児を保護したり……。よねはとにかく最初から最後まで一貫して、弱い人の絶対的な味方なんです。

痛みを知っているからこその優しさというか、懸命にい上がっていく姿には、私自身、勇気をもらっています。

──それにしても、よねはいつまでたってもトラコに対して塩対応ですが……。そろそろ、素直に打ち解けてもいいんじゃないかと、思ったりしませんか?

そうなんですよね。私と(伊藤)沙莉ちゃんの間でも、そんな話になったことがあります(笑)。

でも、よねがトラコに対してきついことを言うのは、愛情表現だと思っていて。実は「うるさい」「うっとうしい」「アホか」といったセリフは、結局、よねがれていたり図星を突かれたりしたときに出てくる言葉なんですよ。

考えてみると、よねのトラコに対する態度は学生時代から一貫しています。トラコもトラコでうっとうしがられるのも構わず、よねに関わり続けているし……。

だからきっと、この関係が、2人の仲よしの形だと思うんです。トラコが弁護士を辞めた時に一度はすれ違ってしまいましたが、根本的なところはあまり変わっていないんですよね。

だから今では、「この2人は、一生これなんだろうな」とほほえましく思っていますね。

――ドラマも終盤に入ります。最後に、今後の見どころを教えてください。

今後、リーガルドラマとしての「虎に翼」に注目していただきたいです。法廷のシーンも出てきますので、楽しみにしていてください! よろしくお願いいたします。

【プロフィール】
どい・しおり
1992年7月23日生まれ、福岡県出身。NHKでは、連続テレビ小説「おちょやん」、大河ドラマ「青天をけ」、「太陽の子」など。近作に、映画『二人ノ世界』『世の中にたえて桜のなかりせば』、ドラマ「初恋の悪魔」「姪のメイ」、舞台『広島ジャンゴ2022』『アンナ・カレーニナ』ほか。