ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、花岡悟役の岩田剛典さんから……。


――花岡が、法律を守ったがために栄養失調で亡くなるという、衝撃的な展開がありました。台本を読んだとき、岩田さんは率直にどのように感じましたか?

誰にも相談せずに寅子(伊藤沙莉)と別れて、別の人と結婚を決めたときもそうだったんですが、花岡はいつも多くを語らないんです。何も言わず、信念を貫いて、大切な人に思いを馳せながら身を引く。真面目で、武骨で、不器用で……“武士”みたいな男だなと思いました。

――花岡の最期については、出演のオファーがあった段階で聞いてらっしゃったのでしょうか?

はい、去年オファーをいただいた時から聞いていました。実際に食糧管理法に携わっていた裁判官の方が亡くなっているそうで、その事件がモチーフになっています。徹底して信念を貫いた結果、餓死してしまうなんて、何と言ったらいいのか……本当に衝撃的ですよね。

ですから、クランクインした時点から、そういう最期を迎えるんだということは、どこか頭の中に置いていました。そういう意味では、知っていたからこそ、演技プランとして逆算しやすかった部分はあります。

――死の直前、寅子と再会するシーンは、寅子は気まずく感じているけれど、花岡のほうは彼女と話したかったのかなと感じました。岩田さんは、花岡はどんな思いで寅子と向き合ったのだと思われましたか?

あのとき花岡は、自分の死期を悟っていたんじゃないでしょうか。イモしか食べてないという描写もありましたが、正規のルートで手に入る、自分が納得のいくものしか口にしない生活をしていたので。そんな生き方しかできない花岡だから、最後に大事な人の顔を見て話したかった、そういうことだと思います。“さよならを告げに来た”ということかなと。

それでも最後に寅子からチョコレートを分けてもらって、彼女らしい優しさに触れて、少し、名残惜しくなった。……そんなシーンだと思って演じました。