明律大学卒業前に、みごと高等試験に合格した花岡悟。どんなときもとも(伊藤沙莉)に寄り添い、互いに励ましあい、卒業後も順調に関係をはぐくんできました。結婚も視野に入っていると思われた2人でしたが、プロポーズがないまま花岡は故郷・佐賀へ赴任。やがて別の女性と婚約したことが判明しました。

花岡役の岩田剛典さんに、花岡をどんな人間と捉えているのか、また、寅子との別離という決断を下す胸中などを伺いました。


寅子は、花岡の“自分がこうありたい”という理想像

――はっきりと言葉に出さずとも、花岡と寅子はお互い心が通じ合っていたかと思います。花岡は、寅子のどんなところにひかれたと思いますか?

恋心があるのはもちろんですが、実は寅子って、花岡の“自分がこうありたい”という理想像を体現していたんじゃないかと思うんです。夢をまっすぐに追いかけるところ、物おじせずに面と向かって自分の意見を言うところ……尊敬というか、寅子に憧れていたんだろうなと。

そんな寅子を心から応援していたからこそ、人生の岐路に立ったとき、花岡は彼女と別の道を選ばざるをえなかったのだと思います。現代なら、もう少し自由な選択もあったかもしれないけれど、当時はやっぱり、そうはいかなかったんでしょうね。

――裁判官に合格したとき、花岡は寅子と2人で食事に行きました。あのときの花岡の胸中をどんなふうに捉えていましたか? まだ迷っていたのか、それとも……。

あの日、花岡は寅子に「結婚しよう、佐賀についてきてくれないか」と言おうとしていた、そう捉えて演じていました。でも彼女から、まだまだ自分はこれからだし、早く立派な弁護士になりたいという熱意を直接聞いたことで、その言葉を飲み込んだ。

それは、いわゆる“男らしさ”かもしれませんが、やや自己完結型だなと、僕自身は感じます。悪く言えば、相談もせず大事なことを勝手に決めるタイプなので。そう振る舞ってしまうのは、それこそ時代のせいも大きいんでしょうけど……。

それに、この段階では花岡が何を考えているのかがいっさい描かれないので、どうやったら短いシーンで花岡の心境を視聴者に伝えられるだろうかと悩みました。実際、伝わったかどうか……すごく難しかったですね。

――相手の夢を尊重するからこそ別れる、という決断は、誠実であるがゆえに切ないです。

誠実だし、冷静でもありますよね。自分の思いだけで突き進むのではなくて、ちゃんと相手の気持ちを受け入れる度量がある人間だということは、演じていて強く感じました。それが花岡悟なんだと思います。


伊藤沙莉さんの性格が「虎に翼」という作品に血として通っている

――まさに第7週では不器用さが前面に出ていましたが、初登場時の花岡はむしろスマートで、そつなく振る舞おうとしていた印象です。寅子たちと関わる中での変化は、お芝居のうえで意識されましたか?

そうですね。そもそも、この時代は男尊女卑の傾向が強いですから、学生時代の花岡もたがわず、その価値観の中で生きていました。それに、学校内でのヒエラルキーで花岡は上位だったでしょうから、周りに見栄を張って、自分のプライドを守りながら女性陣と付き合おうとしていたのだと思います。

それは女性陣からしてみたら、何が本心かわからないはずなので、最初は、花岡がちょっとミステリアスに見えるよう意識していました。そして梅子さん(平岩紙)と向き合って、寅子とも本音で話せるようになる中で、花岡が自分を守るために固めてきたメッキみたいなものが、少しずつはがれていったのかなと。

梅子さんに自分の至らなさを吐露するシーンは、「花岡はこういう人なんだ」というのを自分の中に落とし込んでくれたシーンでした。やりがいがありましたし、そのあとから本来の花岡らしさが見えるようになったらいいなと思いながら、役と向き合っていましたね。

あと意識したのは、学生時代は声のトーンや表情、姿勢でしょうか。男子学生っぽさ、若さは出しつつも、後々重要になってくる信念の強さ、貫く気持ちみたいものは、心の真ん中にずっと置きながらお芝居をしたいと思いました。

――いちばん印象深いのは今おっしゃったシーンだと思いますが、ほかに記憶に残る場面や、共演者とのやりとりはありますか?

梅子さんと話したあと、寅子と教室で横並びで語り合うシーンは印象に残っています。冒頭、ずっと沈黙するっていうのが面白かったです。実は、脚本のト書きにそんなことは書いていないので。

監督が演出をつけてくださったのですが、あの沈黙だけで、お互いの関係性や距離感、言葉にできない思い、いろいろ伝わるものがあるなと思えました。

――寅子役の伊藤沙莉さんの印象はいかがでしょうか?

いやもう、心身ともに強い。堂々とされてます。演技もどっしりとしているし、現場のムードメーカーでもあり、めちゃくちゃ安心感のある座長だと思います。ご自身がいちばん大変なスケジュールでお仕事されているにも関わらず、周りの共演者やスタッフの皆さんに自分から声をかけて……そういう姿を見ていると、本当に「この人のために自分も頑張りたい」という気持ちになりました。

お芝居の魅力はもちろん、彼女自身のフランクな性格が「虎に翼」という作品に血として通っていると感じます。今回共演できてすごく嬉しかったですし。また機会があれば別の作品でもご一緒できたら嬉しいですね。

――最後に視聴者の方にメッセージをいただけますでしょうか。

おそらく視聴者の皆さんは、婚約者を連れて寅子と再会するシーンで「なんてやつだ」と思われたんじゃないでしょうか。離れてからそれほど時間もたっていないのに、切り替え早いな! と(笑)。

実はその裏で何を思っていたのかは、今日(第34回/5月16日放送)の放送で明らかになりましたが、一度決めたことは人に何を言われようとも覆さない、「男に二言はない」みたいな武骨さも含めて、花岡らしい決断だったと、僕は思います。

寅子と別れてしまった花岡はもちろん、轟(戸塚純貴)、女子部のみんな、男女問わず同じ学びで学んだ学生たちが、このあとどんな人生を送るのか。それぞれの物語を楽しんでいただけたらうれしいです。

【プロフィール】
いわた・たかのり
1989年3月6日生まれ、愛知県出身。EXILE/三代目 J SOUL BROTHERSのメンバー。2016年度、映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』で第40回日本アカデミー賞新人賞・話題賞を受賞。NHKでは、ドラマ「炎上弁護人」「一橋桐子の犯罪日記」などに出演。近作に、ドラマ「あなたがしてくれなくても」「誰も知らない明石家さんま 笑いに魂を売った男たち」「アンチヒーロー」、映画『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』ほか。